ハスラーはスズキのクロスオーバーSUV型軽自動車。本稿ではデビュー当初の2014年1月~2015年4月までを前期型とし、これを扱う
出典:スズキ認定中古車
初代 スズキ・ハスラーとは?
2013年の東京モーターショーで初公開。翌年2014年1月にデビューとなったスズキ・ハスラー。
軽自動車でありながらクロスオーバーSUVという、(※デビュー当初は)他社モデルにはあまりない異色の軽自動車であった。
あまりというのは、実はスズキには2009年まで、「Kei」というハスラーと同じコンセプトの車があった。生産終了となった後でも雪国では「Kei」が生活の足として現役だった。
それはほどよい車高と大きめのタイヤを持つ軽自動車がワゴンRよりも雪道では強く、ジムニーよりも車内が広くて使いやすいためである。
今回登場となったハスラーはその「Kei」の後継モデルとしつつ、新たに個性的でポップなキャラクターを与え、積雪地域でのKeiの乗り換え需要と新たな客層を狙ったモデルである。
ハスラーはKeiを作った時と同じ手法で、売れ筋であるワゴンR(※Keiのときはアルト)のプラットフォームを流用し、ボディと内装を新設計。Keiのときと同じくベースモデルよりも車高を上げて最低地上高をアップ(FFで180mm、4WDでは後輪のデフ下は175mmを確保)。
さらにワゴンRよりもひと回りかふたまわり大きな大径タイヤ(15インチ)を履かせることで悪路、特に積雪地域の雪道などでの走破性を高めた車である。
エンジンはベースとなった5代目ワゴンRと同じR06A型を採用。自然吸気エンジンとターボエンジンの2種類を設定し、「スズキグリーンテクノロジー」を適用。
新軽量衝撃吸収ボディー「TECT」に加えてアイドリングストップ時でも冷たい風を送り出せる「エコクール」を最廉価のAグレード以外で標準装備。
また、エネチャージの搭載でCVT・自然吸気エンジンのFFモデルでは29.2km/l(JC08モード)、CVT・自然吸気エンジンの4WD仕様でも25.2km/l(JC08モード)とワゴンRゆずりの高い燃費性能を実現している。
先進安全技術として、レーダーブレーキサポート「衝突被害軽減ブレーキ」、誤発進抑制機能、エマージェンシーストップシグナル、ESPをセットでAグレード以外のCVT車に標準装備とした。
さらにハスラーはKei時代には無かった悪路走破性を高める「グリップコントロール」を4WD仕様車で標準装備。
これ以外では坂道でゆっくりと下る「ヒルディセントコントロール」も標準装備とし、Kei時代よりもSUVの性能をアップさせている。
初代・前期型ハスラーのエクステリア(外装)
出典:スズキ認定中古車
フロントデザイン。ホンダのN-ONEを彷彿とさせる丸目で愛嬌のあるデザイン。それでいて車高があるのでちょっとワイルド感もある。
出典:スズキ認定中古車
スズキの代表的な軽RVであるジムニーの面影も垣間見える。SUVらしくバンパー下部にはバンパーガーニッシュを備え、バンパーの一部とバンパーガーニッシュはシルバー塗装される。
オプションのフロントエンブレム(HUSTLER)を付けるとより個性的にかつレトロ感もプラスされる。
出典:スズキ認定中古車
ディスチャージ仕様では(G、Gターボにセットオプション、X、Xターボは標準装備)、ポジションライトがLED化されイカリングのようなヘッドライトとなる。
出典:スズキ認定中古車
リアからサイドにかけては車高が高いことと、最低地上高も少し高めであることがわかる。ベースは同社のワゴンRだが、最低地上高は180mm(4WDではリアのデフ部分が175mm)に高められており、ちょっとした雪道やぬかるみに最適だ。
デザインもボンネット部分を比較的長めに確保し、Aピラーを立たせるさせることでSUV風のスタイリングと適度に広い室内空間を両立した。
前身モデルのKei時代では室内長が1685mmだったが、ハスラーではこの設計により2035mmを確保。実に35cmも長くなった。
さらに室内高さはKeiの1265mmに対しハスラーでは1250mmと若干低くなっているものの、室内幅はKeiの1220mmから1295mmにアップ。特に長くなった室内長によりかなり広く感じることだろう。
出典:スズキ認定中古車
参考までのKeiのサイドスタイル。Keiではフロントガラスの傾斜がボンネットに似た角度でかなり傾斜しているのがわかる。スタイリング的には美しいのだが、その分室内長は狭い。
出典:スズキ認定中古車
上級グレード(GとGターボ)ではターンランプ付きドアミラーを標準装備。ヒーテッドドアミラーは全グレード標準装備。
足元はAグレードとG系グレードで15インチカラードスチールホイール(鉄チンホイール)。スチールホイールでありながらハスラーに良くマッチするデザインとなっており、特にカラー化されているため雰囲気は良い。
上述のXとXターボでは15インチアルミホイールとなる。
ボディカラーには2トーンルーフカラーを含む全11色用意。Keiの後継として地味なカラーから既存のKeiユーザー以外(特に若者向け)の鮮やかなカラーまで多彩なラインナップとなっている。なお、2014年12月マイナーチェンジでは「スチールシルバーメタリック」の「ブラック2トーンルーフ」が廃止となった。
出典:スズキ認定中古車
リア。コンビランプはベースのワゴンRと似たような位置(左右端真ん中)に配置。ただしデザインは洗練されインナーメッキを用いたデザイン性あふれるものが採用されている。
なお、ブレーキランプは全グレードでLEDを採用。バックドア右下にHUSTLERエンブレムとエネチャージエンブレムが付く。バンパーは無着色&一部シルバ塗装のものが組みあせられる。
ルーフレールを付けるとウィンタースポーツ(スキー場等)がぴったりな外観となる。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンはR06A型3気筒DOHC自然吸気エンジンと同3気筒DOHCインタークーラー付きターボエンジンの2種類。
自然吸気エンジンでは最高出力52ps(38kW)/6000rpm、 最大トルク6.4kg・m(63N・m)/4000rpmを発生。
ターボエンジンでは最高出力64ps(47kW)/6000rpm、最大トルク9.7kg・m(95N・m)/3000rpmを発生する。
トランスミッションはCVTまたは5MTで駆動方式はFFまたは4WDとなる。ただし、5MTに関しては廉価グレードのAとミドルグレードのGのみで、上級グレードのXに設定はなく、またターボとの組みあせも無い。
燃費面では最廉価のAグレード以外でアイドリングストップを標準装備。さらにAを除くCVT仕様車ではエネチャージ、Aグレード以外でエコクールを標準装備。
さらに、先進安全技術として、レーダーブレーキサポート「衝突被害軽減ブレーキ」、誤発進抑制機能、エマージェンシーストップシグナル、ESPをセットでCVT車に標準装備
4WD仕様車では上述の通り悪路走破性を高めるため「グリップコントロール」を標準装備。軽乗用車では初となるこの機能は一般的なSUVが持つデフロック機能に近いシステム。
デフロックそのものは持たないものの、悪路でスタックしそうになったとき自動でスリップしているタイヤを感知。
そのタイヤに対して機械が自動的にブレーキを与えることでグリップする側の駆動力を確保し、スムーズな発進をアシスト。これにより日常走行(特に市街地等での雪道)での走破性が高くなっている。
これ以外では坂道でゆっくりと下る「ヒルディセントコントロール」も標準装備。
FFモデルと4WDモデルの両方(Aグレードを除くCVT仕様)でヒルスタートアシストを標準装備。
Kei時代ではいずれの装備(※Kei FISフリースタイルカップリミテッドを除く)もなく、ちょっと車高の高い生活四駆程度だったが、ハスラーではよりSUVとしての性能をアップさせている。
初代・前期型ハスラーのインテリア(内装)
インパネ。ハスラーではボディカラーに合わせてインパネカラーが異なる。オレンジ系のみインパネもオレンジカラーとなり、それ以外ではホワイトカラーとなる。
上級グレードでは本革巻ステアリングホイールを標準装備。
デザインはヘッドライトをモチーフに丸型のエアコンルーバーリング、メーターリング、スピーカーリングを採用。
スピードメーター。
エコ運転を上部のグリーン(エコ)やブルー(通常)、ホワイト(エネルギー回生)状態を光りで表示(ステータスインフォメーションランプ)。
さらにアイドリングストップインフォメーションを液晶パネルに表示する。タコメーターは液晶パネル部分の表示を切り替えて表示させる(写真は燃料計を表示中)。
出典:スズキ認定中古車
フロントシートはATモデルではベンチシートタイプ。
5MTのシフトノブ。
出典:スズキ認定中古車
MT仕様ではセパレートタイプとなる。AグレードのFFを除きシートヒーターを標準装備。
シートはボディカラーに合わせてシートパイピングが変更される(オレンジ、ブルー、ピンク、ホワイトの計4色)。
出典:スズキ認定中古車
リアシート。スライド機構付き。CVT仕様ではヒーターエアダクトにより温風が後部座席にも伝わるようになっている。
出典:スズキ認定中古車
ラゲッジルーム。ノーマル状態だと狭いのだがスライド機構を使うと調節可能だ。
出典:スズキ認定中古車
シートは分割可倒式。
出典:スズキ認定中古車
リアシートを倒した状態。
初代・前期型ハスラーのまとめ
初代・前期型ハスラーの総評
スズキのハスラーはKeiの後継モデルとして設計され、Kei時代にはなかったポップなキャラクターが与えれれた個性あふれる1台である。
積雪地帯では、ジムニーほどの強い走破性が必要なく、ワゴンRよりも雪道に強い軽自動車を探している人にぴったりな1台で、それ以外でも既存のモデルとは異なる個性的な外観や多彩なボディカラーにより若者向けともなりうるモデルとなっている。
この2点の特徴からスズキの予想を上回る大ヒットとなり、ベースとなったワゴンRを上回るものであった。さらにこれに触発されたダイハツも同社の軽SUVである「テリオスキッド」の後継となるモデル(キャストアクティバ)を投入するなど、市場に革新をもたらした1台であった。
ハスラーは雪国だけでなく、個性的な軽乗用車が欲しい人向けのモデルといえるだろう。
この後のマイナーチェンジ(後期型)ではエネチャージを進化させた「S-エネチャージ」を投入。さらにステレオカメラを用いた「デュアルカメラブレーキサポート」の適用などさらなる魅力アップを果たすこととなる。
なお、スズキと軽乗用車の結びつきが強いマツダへは「フレアクロスオーバー」として2014年1月にOEM供給された。
外観上のデフォルメは特になくエンブレムの変更程度だが、人によっては印象が違って見えるためマツダ版を検討してみるのも面白いかも。
マツダへはKei時代に「ラピュタ」としてOEM供給を行なっていたが、Keiの後継モデルであるハスラーの登場により再びクロスオーバーSUVがOEM供給されることとなった。
中古車はN-BOXに並ぶ人気モデル・初代前期はグレードにより比較的安価だが、程度の割に価格が高いタマには要注意
初代ハスラーは登場から10年ほど経過し、初期モデルは価格が落ちる…と思いきやそこまで安価とはなっていない。
これはN-BOXと同じく中古車としても人気モデルとなっており、過走行・10年落ちであっても買う人が(需要が)多いためである。
それゆえに中古価格が高くなりがちで、状態や程度が悪くとも他の10年落ち・過走行な軽自動車よりも高く付く場合がある。
値段が高い割に状態が悪い個体も存在するため、中古で買う場合はよく確認することを強くオススメする。タマ数はかなり多いため、ひとつの中古屋にこだわらず、他県を含め店をはしごするなど積極的に良い個体を探したい。
コメント
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ハスラー・・・・・はっきり言って4枚ドアのジムニーだと思う。
車高の高い軽で、最近みたいに窓幅を抑えて車体を高くし外観のバランスをとるデザインは定着させてほしい。
ジムニーはせっかく軽四でコストを抑えられるはずなのに、タイヤ径でも車高を稼ぐために、無駄にタイヤ価格が高くなってしまってる。
それを改善したのがハスラーだと思う。
アメリカのメーカーがギア10段の車を開発中という噂も聞く・・・・・・確かに日本の車、特に軽四はあと一速足りない場面が多い。
ハスラーは気に入ってるので購入候補だが、今年、人生で初めて軽四で雪道を走った・・・・・・・軽くて「まさか!?」っていう路面で滑った。
そうだよね、以前乗ってた2000ccの車(FF)でもタンクが半分になり軽くなるとグリップが軽くなりケツが緩いカーブでも出た。
それ以来、重し代わりにタンクが半分以下にならないように給油してた。
軽四で今年の冬を試走してみて軽四を買うか白ナンバーを買うか決めるつもり。
(スリップを知らせるアクセルシェイカー機構は邪魔!!!)
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ハスラーはワゴンRがベースなので、ジムニーほどの走破性は無いと思います。ジムニーのようにオフロード(雪道)を恐れずどんどん突き進むと簡単にスタックしてしまうかと。あくまで一般的な生活四駆よりも強いだけです。
社長が出張の外出先で食事をしていたら、Keiユーザーに復活を懇願された経緯があるあらしく、その点からもこの車はKeiの後継車です。ただ、それでけでは販路が薄いので、若者向けに鮮やかで個性的なカラーリングを用意しているのでしょう。
http://response.jp/article/2013/12/25/213772.html
さらに、開発者のコメントにもこうあります。
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「以前スズキにはKeiというモデルがあったんですけど、2009年に生産終了してしまいました。しかし雪国では今でも乗っていらっしゃる方が大勢いまして、そんな地方では車高が高い軽自動車の需要が多いんです」
http://jp.autoblog.com/2013/11/28/2013-12-24/
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車重はジムニーより100~200kgも軽いので、燃費はかなり良いですが、雪道における軽い分のメリット・デメリットはあるかと。普通車からの乗り換えならなお感じるでしょう。実際に試乗されてからですね。
あと、ハスラーのタイヤは標準で165/60 R15のようです。これは非常に稀なサイズで、自分の知っているとこではスズキ・Keiワークスと、最近だと、スズキ・ソリオぐらいです。一般的なサイズじゃないので割高です。インチダウンして165/70 R14にするとヴィツあたりが採用しているので、流通の関係から安く購入できそうです。
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インチダウンってキャリパー等干渉しませんか?
ホイールメーカーに問い合わせしても、データー不足で不明とのことなので
装着確認取れたらお願いします。
15インチスタッドレスは各メーカー欠品しており、
165/70R14へインチダウンできればタイヤの確保ができるかなぁと
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当方、keiワークスで純正の165/60 R15よりインチダウンしてスタッドレスタイヤは165/70 R14にしています。この165/70 R14はワークスではない普通のKeiの標準サイズで、なんら問題なく履けます。車検的にもスピードの誤差は大丈夫です。
たぶんハスラーも似たような感じかと思いますが、実際に所有しているわけではないので詳細はわかりません。ディーラーの人にお聞き下さい。
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私はハスラーといえば、オフロードバイクというイメージが有りますね。ソリオも「バンディット」というのもあるし、スズキの車はホンダみたいに2輪と4輪の名前を使い回しにするのでしょうかね…?
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こんばんは~。コメントありがとうございます。
昔のバイクをご存じの方は、ハスラー=オフロードバイクというイメージが強いようで、ネット上でもそういった書き込みが散見してます。responsの記事では以前の名前を使う理由に
参照元:https://response.jp/article/2013/12/25/213732.html
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まったく新しいモデルの訴求に、認知度の高い名称ほど役立つものはない。そういう意味で、「ハスラー」という名称は、非常に大きな新型モデルの拡販の力となるはずだ。スズキがこれまで築き上げてきた資産を上手に再利用するネーミングといえるだろう。
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としています。よって使いまわしというよりはその名前をあえて使うことで商品力を高めているような感じがします。