ヴィヴィオはスバルのハッチバック型軽自動車。ビストロはそのレトロ(クラシック)モデルである。本稿では1996年10月のマイナーチェンジ時に追加されたグレード「ビストロ・シフォン」を扱う。
出典:カーセンサー
スバル ヴィヴィオ(VIVIO)とは
1992年3月に登場したスバルのヴィヴィオ。それまで「レックス」の後継としてホイールベースを長くし、室内空間を広くとったり安全性を向上させていた。
それまでのレックスとは異なり、全体的に丸みを帯びたボディフォルムが特徴で、当時の軽自動車としてはボディ剛性も高かった。アルトやミラ同様に乗用モデルと商用モデル(バンタイプ)を設定し、モデルと途中ではレトロ軽自動車ブームの火付け役となったヴィヴィオ・ビストロを設定するなど、軽バン、女性向け、スポーツ仕様、ラリー競技ベースなど幅広いラインナップを揃えていた。
エンジンは先代のレックスと同じCLOVER4の直列4気筒エンジンを採用。バンタイプや乗用モデル、スポーツモデル用の過給器付きなど車種ごとに全4種類のバリエーションを用意し、特にモデル終盤のスポーツモデルではDOHCにスーパーチャージャー+ハイオク仕様という軽自動車にしてはとんでもなくハイスペックなエンジンとなっていた。
足回りもスバルお得意の独立四輪献花式サスペンションを採用。高コスト&高性能な構成となっていた。また、トランスミッションは5MTのほか、オートマににはECVTを採用するなど他社よりも先進的な技術を採用していた。
ボディも新設定のプラットフォームに低重心化。当時の衝突安全基準の30kmを越える、時速40kmでの衝突安全性を独自に確保。当時の軽自動車としては高い剛性と衝突安全性を誇っていた。
エクステリアでは先代レックスとは異なる曲線を多様化したグラマスなボディラインに、初代インプレッサを連想させるヘッドライト、コンビランプ。歴代のレガシィワゴンの連続ガラスのような「黒いピラーに続くクォーターガラス」など随所にこだわりを散りばめ軽自動車の枠を越えた上質感を演出した。
インテリアでも「ドライバーズ・ミニ」をコンセプトに運転席側の空間を広くする設計を採用。そのため助手席は運転席側よりも若干せまい室内空間となっている
スバル ヴィヴィオ・ビストロとは?
そのヴィヴィオをベースにレトロ調をあしらったモデルが1995年11月に追加された。それが「ヴィヴィオ ビストロ」である。
既に軽ワンボックスではサンバーディアスクラシックが登場していたが、当時の売れ筋であったハッチバック型ではこのヴィヴィオ ビストロが史上初でその後の軽レトロブームを加速させたモデルとされている。
デフォルメの手法はサンバーディアスクラシックと同じようにヘッドライトやバンパー部をごっそりと専用品へ換装。メッキパーツを数多く使うことでレトロ感を出している。
もともと小さい軽自動車だからよりキュートになったデザインはボディとの相性が良く、それまでの無難でオーソドックス一辺倒だったデザインの軽自動車界に革命をもたらしたのである。
ビストロのエクステリアでは
- 専用丸目ヘッドライト&グリル&メッキモール付きバンパー
- メッキアウタードアハンドル
- メッキドアミラーカバー
- 専用丸目テールランプ
- メッキテールゲートガーニッシュ
- メッキフェンダーウィンカーガーニッシュ
インテリアでは
- 木目調オーディオパネル
- 専用シート表皮
- 専用スピードメーター(レトロ調フォント)
- レトロ調アナログ時計
などで内外装をカスタムし、レトロ感や上級感を高めたモデルとなっていた。
ヴィヴィオ ビストロ シフォンとは?
ビストロは当時の軽セダンとしては異例の大ヒットとなり、各社ビストロの真似をしてスズキはセルボ・クラシック、ダイハツはミラ・クラシック(後のミラジーノ)、三菱はミニカタウンビーなどクラシックタイプの軽自動車が続々と登場した。
そのようなライバルの後追いを背景に、ビストロの派生としてそれまでなかった3ドアモデルを採用し、グリルまわりのデザイン変更やインテリアに手を加え、ノーマルのビストロよりも価格を抑えた廉価グレードを追加した。
それがこの「ビストロ・シフォン」というグレードである。
エクステリアでは
- シフォン専用グリル
- シフォン専用フルホイールキャップ
- メッキフードモール
インテリアでは
- シフォン専用スウェード調シート(ベージュ)
- シフォン専用ドアトリムクロス(ベージュ)
ノーマルのビストロよりもクラシカルな雰囲気を高めつつ、お買得としていた。
※ちなみにシフォンの名前はその後、ダイハツ・タントのOEMモデルとして復活している
ヴィヴィオ ビストロ シフォンのエクステリア(外装)
出典:カーセンサー
ビストロシフォンの大きな特徴はこのフロントグリル。ノーマルのビストロでは楕円状の大きな格子状グリルだったが、シフォンでは中央部で左右に別れるタイプのグリルに変更されている。
さらにボンネット上にアクセントとしてメッキパーツがつき、ノーマルとは若干見た目が変化している。
出典:カーセンサー
サイドから。メッキミラーカバーやメッキドアハンドルカバーなどを標準装備。アルミホイールではないが専用のホワイト塗装ハーフホイールキャップも備わる。3ドア仕様なのでビストロとは横からの見た目が少し違う。
出典:カーセンサー
リアに関しては共通で、ビストロ専用のコンビランプを装備。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンは4気筒のSOHC自然吸気エンジンのみの設定。
自然吸気エンジンの最高出力は52ps(38kW)/7200rpm、最大トルクが5.5kg・m(59.9N・m)/5600rpm。
トランスミッションは5MTまたはCVTの2種類で、駆動方式はFFと5MTではパートタイム4WD、CVTではフルタイム4WDとなっていた。
ヴィヴィオ ビストロ シフォンのインテリア(内装)
出典:カーセンサー
インパネ。ベースに対して木目調パネルを追加し、レトロ風に変更(※写真は社外ウッドハンドルに変更されている)。
出典:カーセンサー
スピードメーターはレトロ調フォントを採用したシンプルなメーター。
出典:カーセンサー
シートはシフォン専用のベージュ系スゥエード調シートを採用。ノーマルのビストロよりも質感を高めている。
出典:カーセンサー
リア。3ドア仕様であることと、旧規格なので足元はかなり狭い。3人以上で乗る場合は使い勝手が悪く、買い物用途でもリアドアが無いために荷物が乗せづらく、少し使い勝手が悪かった。
ヴィヴィオ ビストロ シフォンの総評
ヴィヴィオ ビストロ・シフォンはビストロの派生グレードとしてビストロはちょっと違う顔つきの軽自動車である。
ビストロの人気にあやかってシフォンもとてもヒットしたかと思うと…そうではなく、残念ながら次(1年後)の大きなマイナーチェンジ(1997年9月)で消滅し、生産期間はわずか1年という短命なグレードであった。大きな理由としては使い勝手の悪い3ドアモデルの設定しかなく、ノーマル・ビストロの5ドアに比べて販売台数が伸びなかった。
それゆえに中古市場ではビストロ自体も個体数が減ってきているが、シフォンとなるとさらに少なく、レア車の部類に入る。
ビストロのスーパーチャージャーモデルのような過給器モデルが存在せず、地味な1台ではあるが、デザインは気に入れば長く愛せるものなので、ビストロが欲しいという人はどこか頭の片隅に入れておきたい希少グレードである。
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