クリッパートラックは日産のトラック型軽自動車。三菱・ミニキャブトラックのOEMモデルである。本稿ではデビュー当初の2003年9月~2005年11月までを前期型と定義し、これを扱う。
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初代 日産・クリッパートラックとは?
2003年9月に登場した日産のクリッパートラック。商用ワンボックスタイプのクリッパーバンとの当時デビューで、両方とも三菱のミニキャブトラック、ミニキャブトバンのOEM供給を受けての登場だった。
ベースのミニキャブトラックは、デビュー当初は奇抜なフロントデザインをしていたが2000年12月マイナーチェンジでフロントデザインを大幅変更。前期型の初代クリッパートラックはその6代目・中期型ミニキャブトラックのOEMモデルとなっている。
パッケージングはセンターミッドシップレイアウトにセミキャブスタイル&ロングホイールベースの組み合わせ。これにより当時トップレベルの安全性と乗員スペース、積載スペースを確保しつつ機能的で力強いデザインとした。
安全装備としては運転席/助手席SRSエアバッグとABS及び3点式チャイルドシート固定機構付きリヤシートベルトを全グレードにオプション設定。
エンジンは新開発の3G63型を採用。新リーンバーンMVVを全グレードに搭載し優れた低燃費と排ガス中のCO2を削減した。
使い勝手も前輪を前方に配置したことで前席ドアが大型化。これによりスムーズな乗降とし、ゆとりある足元空間を実現した。さらにラジエーターの配置も見直して積載スペースを拡大。使いやすさも向上させている。
センターミッドシップレイアウトと50:50の重量配分、ロングホイールベースや高剛性ボディ構造、後輪トルクアーム式3リンクリジット&コイルスプリングなどの組み合わせで快適な乗り心地を実現。
4WDシステムにはイージーセレクト4WDを採用。80km/h以下で走行中においても道路状況に応じて2WD/4WD-Hiの切り替えが容易に行なえるようにした。これに加えて5MT車ではハイローの切替可能な副変速機も採用した。
初代・前期クリッパートラックのグレード一覧 SD、DX、GL、パネルバンの違い
U71T/U72T型クリッパートラックのグレード構成は下から順に、SD、DX、GLに箱車の「パネルバン」を加えた4種類。ただし、SDとDXグレードにはエアコンを標準装備した「エアコン付き」が設定されていた。
前期型クリッパートラックでは快適装備での違いはなく、主にステアリングのギアに違いがあり、廉価グレードとエントリーグレード以上では装備が異なっていた。
SD
SDグレードはミニキャブトラックのVグレードに相当するグレードで、最廉価グレード。
ステアリングのギア方式が「ラック&ピニオン式」の重ステ仕様となる。また、AM/FMラジオはオプション設定となっていた。
DX
DXグレードはミニキャブトラックのVX-SEグレードに相当するグレードで、エントリーグレード。
SDグレードに比べてステアリングのギア方式が「パワーアシスト付ラック & ピニオン式」を採用し、パワステ仕様となる。AM/FMラジオも標準装備。
このほかに外装で鳥居&ゲートプロテクター、荷台横にはキー付きロッカーボックス、荷台作業灯(ワーキングランプ)、テールゲートチェーンも標準装備となる。
GL
GLグレードは上級グレードで、ミニキャブトラックのTLグレードに相当する。
上記のDXグレードに追加でエアコンが標準装備となるほか、ファブリックシート、オートマチックトランスミッションに4ATを採用する(SDとDXのオートマは3ATのみ)。
パネルバン
パネルバンはトラックの荷台部分がパネルのような箱型の荷室になったグレードで、箱車とも呼ばれる。中身はSDグレードがベースのため、重ステでエアコンレス仕様となる。
クリッパートラックU71T/U72TとミニキャブトラックU61T/U62Tとの違い
前期型クリッパートラックとミニキャブトラックとの違いはエンブレム程度で、外観はほぼミニキャブトラックと同じ。
グレード構成が上述のとおりエアコン付きグレードが設定されるなど細かな違いがあるが、基本的にはミニキャブトラックを踏襲するグレード設定となっていた。
初代・前期クリッパートラックのエクステリア(外装)
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フロントデザイン。日産版としてのデザイン変更は特に無く、エンブレムのみとなっている。
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ベースの中期型ミニキャブトラック同様にこの手の商用軽では珍しいインナーブラックのマルチリフレクターヘッドライトを装着。ブラックのフロントガーニッシュと合わせて目元が強調されたデザインとなっている。
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サイドから。このあたりも変更点はない。フロントタイヤが最前面に配置された特徴的な外観をしている。ただし、エンジンは運転席下に配置されるため構造上は「セミキャブオーバー」となる。
足元は12インチスチールホイール。
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リア。このあたりもベースとほぼ共通だ。リアのあおり左側にNISSANとCLIPPERのデカールが貼られている。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンは3G63型3気筒SOHC自然吸気のみ。最高出力は48ps(35kW)/6000rpm、最大トルクは6.3kg・m(62N・m)/4000rpm。トランスミッションは5MTまたは4AT、3ATの3種類。
当時としては珍しい軽トラックの4ATだったが、2004年10月マイナーチェンジで4AT搭載のGLグレードが消滅。以後は3ATのみとなる。駆動方式はFRまたは4WDとなる。
一部5MTの4WD仕様ではデフロックが無い代わりにオプションで機械式LSDを装着可能だ。また4WDについてはAT、MTともにパートタイム仕様で、MTの場合はパジェロミニのようなハイロー切り替えの副変速機が付いてた。
クリッパートラック U71T/U72T型との違い
クリッパートラックのU71TとU72T型の違いは駆動方式。U71Tは後輪を駆動するFRのクリッパートラック。U72TはU71Tベースで前輪を駆動する4WDのクリッパートラック。
クリッパートラックの4WDシステムはクリッパーバンと同じパートタイム4WDで、運転者が任意にFRか4WDを切り替えるタイプ。普段は2駆で走行するため燃費が良いか、悪路に応じて自分で切り替える必要性があるのと、タイトコーナーブレーキング現象も発生するため取り扱いは少々難しい。
初代・前期クリッパートラックのインテリア(内装)
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インパネ。タイヤが最前面にある関係で足元が狭くなっている。
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スピードメーター。タコメーター無しのシンプルな単眼式。
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エアコンはマニュアル式エアコン(※搭載モデルのみ)。
マニュアルシフトノブ
4WD仕様ではサイドブレーキ隣に設けられたスイッチで2WDと4WDを切り替える。
さらに5MTの4WDではシフトノブ左側のレバーで4WDのローまたはハイを切り替える、イージーセレクト4WDを採用。
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シート。
初代・前期クリッパートラックの評価
初代クリッパートラックの前期型は良くも悪くも6代目中期型ミニキャブトラックの普通なOEMモデルとなっている。
デザイン上の変更点はエンブレムのみとなり、これといった特徴も無いので特に特記すべき事項も無いモデルである。
後期型ともなればフロントデザインに専用のものが与えられ軽トラックのOEMとしては珍しく差別化されているので、軽トラでも日産らしさが欲しいのなら初代でも後期をおすすめしたい。
中古市場では年式相応という点もあるが、あまり人気が無いため安価な部類に入る。特に外観などこだわりが無いのなら安価に購入できる軽トラとしての需要があるだろう。
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