ミニキャブトラックは三菱の軽トラック型軽自動車。本稿では6代目の中期型(2000年11月~2011年10月まで)について扱う。
出典:三菱認定中古車
6代目 三菱・ミニキャブトラックとは?
1999年1月にフルモデルチェンジし6代目となった三菱のミニキャブトラック。
6代目の大きな特徴は先代よりも前輪の位置をかなり前に配置し、キャビンを大きくとったことにある。さらには軽トラでは珍しいハイマウントストップランプの標準装備など他社とは差別化されていた。
パッケージングはセンターミッドシップレイアウトにセミキャブスタイル&ロングホイールベースの組み合わせ。これにより当時トップレベルの安全性と乗員スペース、積載スペースを確保しつつ機能的で力強いデザインとした。
ボディそのものも1998年の軽自動車新規格に伴い先代よりも全長が100mm、全幅が80mm拡大。
これによりクラッシャブルゾーンが増大し、当時の乗用小型車と同等レベルの全方位衝突安全性とした。また、センターミッドシップレイアウトによる50:50の重量配分なども実現している。
安全装備としては運転席/助手席SRSエアバッグとABS及び3点式チャイルドシート固定機構付きリヤシートベルトを全グレードにオプション設定。
エンジンは新開発の3G83型を採用。新リーンバーンMVVを全グレードに搭載し優れた低燃費と排ガス中のCO2を削減した。
使い勝手も前輪を前方に配置したことで前席ドアが大型化。これによりスムーズな乗降とし、ゆとりある足元空間を実現した。さらにラジエーターの配置も見直して積載スペースを拡大。使いやすさも向上させている。
センターミッドシップレイアウトと50:50の重量配分、ロングホイールベースや高剛性ボディ構造、後輪トルクアーム式3リンクリジット&コイルスプリングなどの組み合わせで快適な乗り心地を実現。
4WDシステムにはパジェロミニでもお馴染みのイージーセレクト4WDを採用。80km/h以下で走行中においても道路状況に応じて2WD/4WD-Hiの切り替えが容易に行なえるようにした。
これに加えて5MT車ではハイローの切替可能な副変速機も採用した。
6代目・中期型ミニキャブトラックとは?改良点と前期との違い
2000年12月・マイナーチェンジ
6代目ミニキャブトラックはデビュー後約2年後の2000年12月にビッグマイナーチェンジを行った。外観上からもフルモデルチェンジに近い内容で大幅改良だった。
エクステリアではヘッドライトとフロントバンパーのデザインを変更。さらにフェンダーパネルやフロントグリルを追加することでスタイリッシュなイメージとした。
内装はほぼ同じだがオーディオパネルの位置を変更し、2DINサイズのオーディオを装着可能とした。
装備や機能面ではパーキングブレーキを運転席右側から前席中央部に移動、MT車にはクラッチスタートシステムを採用。
リアサスペンションはバンプラバーの拡大を含めたチューニングにより積載状態での尻上がり感の是正と操作性を向上。
さらに荷台有効長をそれまでの+70mmアップの1925mmとし、積載能力をアップ。
加えて亜鉛メッキ鋼板の採用部位の拡大、床下、 ドア・サイドシル内部への防錆剤塗布等の防錆処理をメーカーオプションで設定し、錆に対する耐久性を向上。
外装と機能面や装備面でより魅力を高めたマイナーチェンジとなった。
2005年12月・一部改良
これ以外に2005年12月の一部改良では全グレードにトリップメーターとヘッドライトレベライザーを標準装備化。
2006年12月・一部改良
2006年12月の一部改良ではドアミラーをピボットタイプ(縦長)に統一し、左ドアミラー下側にはアンダーミラーを2個追加。左ミラーの幅を15mm拡大し視認性を向上させた。
また、「VX-SE(エアコン付)」グレードにベースに農家向け(農業仕様)に特化させた新グレード「みのり」を追加。
みのりではリブラグタイヤとリヤ強化サスペンションを標準装備し、悪路・非舗装路双方での走破性を高めた。
2007年12月・一部改良
2006年12月一部改良ではフロントグリルのデザインを小変更(横溝タイプから、中央に太いラインをを入れたデザインに変更)。
インテリアではインパネカラーを2トーンカラーに変更。後席には3点式ELRシートベルトを追加し、液晶トリップメーターをA・B2区間対応タイプに変更。
キーレスエントリーリモコンキーはLED付きタイプを採用した。
「ラグジュアリーパッケージ」の内容を変更して「エクシードパッケージ」に変更。
2009年12月・一部改良
2009年12月一部改良ではCDとCLグレードでフロントグリルをボディカラーと同色化。よりスタイリッシュ感をアップさせた。
また、インパネデザインとスピードメーターのデザインも刷新し、近代化。2代目後期型パジェロミニのようにインパネ両側にドリンクホルダーを増設し、ステアリングホイールのデザインも変更した。
2010年8月・一部改良
2010年8月の一部改良ではエンジンのフリクション低減等の改良で燃費性能をアップ。
バンの2WD車は「平成22年度燃費基準+10%」を達成。「最長10年10万km特別保証延長」の対象車種ともなる。
このときに特別仕様車、「銀トラ」を発売した。
6代目・中期型ミニキャブトラック(U61T/U62T)のグレード VX-SE、Vタイプ、Vタイプエアコン付き、TL、ラグジュアリーパッケージ、みのり、銀トラ、黒トラ、パネルバンの違いなど
6代目ミニキャブトラック・中期型のグレード展開は、廉価グレード「Vタイプ」と「Vタイプエアコン付き」、ミドルグレードが「VX-SE」と「VX-SEエアコン付き」。
上級は「VX-SE ラグジュアリーパッケージ」。農業仕様に「みのり」などが設定されていた。
5MTの4WD仕様では全グレードに副変速機が標準装備となる。
特別仕様車は専用ボディカラーや快適装備をプラスした「40周年記念スペシャル」、「黒トラ」、「銀トラ」が設定されていた。
Vタイプ
6代目中期ミニキャブトラックの廉価グレード。VX-SEよりも装備が簡略化される。
パワステ、パワーウィンドウ、電波式キーレスエントリー、エアコンすら付かない硬派なグレード。
安全装備も運転席エアバッグ、助手席エアバッグ、ABSがオプション設定。LSDがオプション選択可で、AMラジオのみ標準装備する。
3ATと5MTの2種類を設定し、駆動方式はFRまたはパートタイム4WDの2種類。
ボディカラーは「ホワイトソリッド」のみ。
Vタイプ エアコン付き
上記Vタイプにエアコン(マニュアル式エアコン)を標準装備したグレード。
VX-SE
6代目中期型ミニキャブトラックのミドルグレード。ハイゼットトラックはデラックス、キャリイはKC相当。
- パワーステアリング
- 鳥居&ゲートプロテクター
- 荷台横のキー付きロッカーボックス
- 荷台作業灯(ワーキングランプ)
- テールゲートチェーン
- AM/FMラジオ
などが標準装備となる。デビュー当初はエアコンがオプション設定だったが、その後標準装備化となった。パワーウィンドウやキーレスエントリーは非設定。
安全装備はVグレードと同じで運転席エアバッグや助手席エアバッグ、ABSがオプション設定。
3ATと5MTの2種類を設定し、駆動方式はFRまたはパートタイム4WDの2種類。
ボディカラーは「ホワイトソリッド」のみ。
TL
6代目中期型ミニキャブトラックの上級グレード。
- マニュアル式エアコン
- パワーステアリング
- ファブリックシート表皮
- AT車は4AT採用
など、上級装備が特徴。特に軽トラでは珍しい4ATを採用する上級グレードだったが、2004年10月に廃止されたため、現存するモデルは希少。
ただしこの世代の4ATには持病があるためミッショントラブルが発生する可能性も高い。
VX-SE エアコン付き
VX-SEグレードにオプション設定のエアコンを標準装備化したグレード。
後にエアコンが標準装備化となり、VX-SEへグレード統合された。
VX-SE ラグジュアリーパッケージ
VX-SEをベースに内外装を豪華にし、充実装備とした上級グレード。
出典:三菱認定中古車
特別仕様車の「40周年記念スペシャル」として登場し、その後は「ラグジュアリーパッケージ」に名称変更してカタロググレードに昇格した。
ラグジュアリーパッケージではVX-SEの装備に加えて
- メッキグリル
- 光輝タイプのヘッドランプ(非インナーブラックタイプ)
- ボディ同色ドアミラー
- 木目調パネル
- ファブリックシート表皮
が標準装備となり、常用モデルのような装備となる。
みのり
2006年12月の一部改良で追加設定された農業向けグレード。キャリイの「農繁仕様」やハイゼットトラックの「農用スペシャル」に相当する。
「みのり」ではミドルグレードの「VX-SE」をベースに
- リブラグタイヤ (悪路と舗装路の両方に強いタイヤ)
- リヤ強化サスペンション
を標準装備。農道などの悪路と舗装路など双方での走破性を高めたモデル。
ただしLSDはオプション設定。トランスミッション5MTのみで、駆動方式も4WDのみの設定。
特別仕様車 40周年記念スペシャル
2006年5月設定の特別仕様車。ミニキャブトラック誕生40周年を記念するモデル。
40周年記念スペシャルでは充実装備のVX-SE(エアコン付き)グレードをベースに
- メッキフロントグリル
- インナーを光輝タイプとしたマルチリフレクターヘッドランプ
- ボディ同色(ホワイトソリッド)の大型ドアミラー
- ファブリックシート表皮
- インパネのセンターパネルに木目調パネルを採用
乗用車テイストを強めつつ、ベースモデルよりも差別化をはかり上級な内外装を与えた特別仕様車。
その後は「ラグジュアリーパッケージ」としてカタロググレードに昇格した。

特別仕様車 黒トラ
2009年10月設定の特別仕様車。
軽トラックでは珍しい「ブラックマイカ」を専用色とし、
- メッキグリル
- 非インナーブラックの光輝タイプヘッドライト(光輝タイプ)
の採用で軽トラックでありながらスタイリッシュな外観とした特別仕様車。
同時期にミニカをベースとした「黒ミニカ」、ミニキャブバンをベースとした「黒バン」の全3種類が投入され商用モデルでありながらパーソナルユースでも使えるような外観が特徴。



特別仕様車 銀トラ
2010年8月設定の特別仕様車。
上記「黒トラ」の銀色バージョン。ミニキャブトラックに本来非設定の銀色ボディカラー「クールシルバーメタリック」を専用色として採用。このほか特別装備として
- 光輝タイプのヘッドライト
- メッキフロントグリル
- ボディ同色ドアミラー
- 「最長10年10万km特別保証延長」を標準装備
とし、特別感をアップさせた限定モデル。



特装車 パネルバン
6代目中期ミニキャブトラックの床面をパネルで箱型に囲った特装車。箱車ともいう。
雨風をしのげるため引越し業者や、運送業者などで使われる。
エクステリア
出典:三菱認定中古車
前期と比べてひとめで違うのはフロント。縦方向に大きくファニーフェイス寄りのヘッドライトはほぼ長方形の角型ヘッドライトへ変更された。
さらにインナーブラック仕様とすることで商用車でありながらシャープでシャキッとしたデザインとなった。これに続くグリルも大型のブラックカラーで存在感のあるデザインに。
このマイナーチェンジ時に他社の軽トラックでインナーブラックを採用する例はなかったので、個性的なデザインでもあった。この他バンパーのデザインも変更され、フォグランプの位置が前期よりも下になった。
出典:三菱認定中古車
2007年12月の一部改良ではフロントグリルのデザインを変更。ボディカラーと同色タイプを採用したことで、スタイリッシュな雰囲気とした。
出典:三菱認定中古車
サイドから。前期よりも少し荷台が拡大されている。ヘッドライトの変更に伴いすぐ隣りあったサイドウィンカーが廃止されている。また外からではわからないがキャビン内部が形状変更されている。
最低地上高は軽トラックとしては低めの150mm。
足元は12インチスチールホイール。タイヤサイズは145R12-6PR。
出典:三菱認定中古車
リア。このあたりは特に変更はない。軽トラックで珍しいハイマウントランプは2008年12月一部改良時に一部グレード以外に標準装備化された。
エンジン・機能装備・安全装備など
出典:三菱認定中古車
エンジンは3G83型3気筒SOHC自然吸気のみ。
最高出力は48ps(35kW)/6000rpm、最大トルクは6.3kg・m(62N・m)/4000rpm。トランスミッションは5MTまたは4AT、3ATの3種類。
当時としては珍しい軽トラックの4ATだったが、2004年10月マイナーチェンジで搭載のTLグレードが消滅。以後は3ATのみとなる。駆動方式はFRまたは4WDとなる。
一部5MTの4WD仕様ではデフロックが無い代わりにオプションで機械式LSDを装着可能だ。
また4WDについてはAT、MTともにパートタイム仕様で、MTの場合は副変速機が付いてた。
運転席エアバッグ、助手席エアバッグはオプション設定で、ABSもオプション設定。安全装備はかなり簡素でほぼオプション設定化されていた。
ミニキャブトラック(U61T/U62T)の持病・弱点 サーモスタットの劣化
ミニキャブトラックに搭載される3G83型エンジンは、設計が古いものの壊れにくいエンジンで、メンテナンスがしってりしていれば20万キロも持つエンジンとして知られているが、サーモスタットは別。
この世代の三菱車はeKワゴンやパジェロミニでも同様でサーモスタットが弱く劣化すると弁が開きっぱなしになって「オーバークール」状態に陥る。
オーバークールになるといつまで経っても水温計が上昇せず、ヒーターを使用しても生ぬるい風しが出ず車内が暖まらない。また、アイドリング回転数も常時高くなるため燃費も悪化する。
夏ならまだ良いが冬は寒さで死活問題となるため劣化している場合は交換をオススメする。自分で交換する場合は部品代2000円~3000円程度で可能。
インテリア
出典:三菱認定中古車
インパネ。同年代のセミキャブ軽トラの中では足元空間が最も広い。
出典:三菱認定中古車
2007年12月の一部改良ではインパネカラーが2トーンカラー化され、ドリンクホルダーを両サイドに設けるなど、小変更を実施。
加えて2007年12月の改良ではオーディオパネルのデザイン変更が実施され、2DINタイプのオーディオ取り付け位置がインパネ下部から上部へ移動となり、特にナビ取り付け時などで使い勝手が向上した。
エアコンは全グレードでマニュアル式エアコン。
スピードメーターは2007年11月までは前期型と同じ。
出典:三菱認定中古車
2007年12月の一部改良ではスピードメーターも近代化され、スピードメーターよりシンプルかつ見やすいデザインに変更。燃料残量計はデジタル化された。
出典:三菱認定中古車
ステアリングはウレタンステアリング。デビュー当初からしばらくは2本スポークの簡素なデザインだがったが、2009年12月の一部改良でSRSエアバッグ搭載モデルのみ、三菱アイや2代目eKワゴンと同じ3本スポークに変更された。
出典:三菱認定中古車
5MT。4WDモデルではイージーセレクト4WDが備わり、切り替えスイッチが付く。さらに5MTでは副変速機の切り替えレバーがシフトノブ左側に備わる。
ATのシフトノブ。3ATのみの設定。
ミニキャブトラックのシート。上級グレードではファブリックシート表皮が採用される。
まとめ
6代目中期ミニキャブトラックの総評
6代目・中期型のミニキャブトラックはデザインが万人受けしやすいシンプルなデザインに変更され、モデル終盤ではグリルがボディ同色となりスタイリッシュに変化。また、インパネデザインも終盤でより近代化され、使い勝手や質感もアップする。
前期ではとっつきずらい顔つきだったがこれなら万人受けするデザインでクセがなくなった。軽トラックの中では珍しいインナーブラックのライトも個性的で他社とは違うポイントでもある。
また、5MTの4WDは全グレードで副変速機を備えるため悪路走破時などは嬉しいポイント。
中古市場では年数経過もあるが概ね手頃な価格となっておりタマ数も豊富だ。ロングホールベースゆえに最小回転半径は大きいが、直進安定性が高いなどミニキャブトラックらしい一面もある。
エアコンが付かない廉価グレードには注意が必要だが、安い軽トラとして仕事メインで使う場合は検討すべき1台だろうか。
この後の後期型マイナーチェンジではヘッドライトやグリルが新デザインとなり、よりスタイリッシュな顔つきに変化する。見た目もさらに良くなるため、中古で買う場合は後期型もオススメ。



兄弟モデル 日産・クリッパートラック(U71T/U72T)
ミニキャブトラックは日産自動車へ「クリッパートラック」としてOEM供給されている。



グリルが日産仕様のデザインに変更され、運転席エアバッグが全グレード標準装備となるなど、装備が若干豪華となる。
ミニキャブトラックを探している場合は、あわせてクリッパートラックも確認いただきたい。
コメント