ミニキャブトラックは三菱のトラック型軽自動車。本稿では7代目のDS16T型について扱う。
出典:三菱認定中古車
7代目 三菱・ミニキャブトラックとは?
2014年2月に登場した7代目ミニキャブトラック。この代からミニキャブトラックは自社生産を辞めスズキ・キャリィトの完全OEMモデルとなった。
外観上の変更点は特になくエンブレムと車名デカール等のみの変更でほぼ見た目はキャリィと同じとなっている。
メカニズムではホイールベースが短くなりタイヤハウスをシート下に配置したことで足元スペースが増加。
最小回転半径も3.6mとなりそれまでのロングホイールベースのシティユースをメインとした形から農道にも対応できるキャブオーバー型となった。
荷台フロア長も拡大され、先代の1,940mmから90mm延長した2,030mmを確保。長ものや沢山の荷物を詰めるようになった。
またエンジンもスズキの次世代省燃費エンジン(R06A型DOHCエンジン)により燃費が向上。一方でスズキには採用されるセミオートマのAGSは他社OEM同様に設定がない。
ボディも表面のほとんどに防錆鋼板を採用し強い防錆対策が行われている。
7代目ミニキャブトラック(DA17T)の特徴とスズキ・11代目キャリィ(DA16T)との違い
7代目ミニキャブトラック(DA17T)はスズキ11代目キャリィ(DA16T)のOEMモデルで兄弟モデルにあたる。
両者の違いはエンブレムや車名デカール程度で、専用デザインなどで差別化はなされない。そのため見た目はほとんどキャリィといっしょ。
その他グレード構成が若干異なり、ベーシックな「M」グレードはキャリィの「KCエアコン・パワステ」。
上級の「G」グレードがキャリィの「KC」グレード。
デフロックを備えた「みのり」は「KCエアコン・パワステ農繁仕様」に相当する3グレード構成。
ただしキャリィにある「KC」、「KCパワステ」、「KCパワステ農繁仕様」、キャビンを拡大し居住性を高めた「スーパーキャリイ」に相当するグレードは未設定。
さらに11代目キャリィの特徴でもある5AGSモデルやディスチャージヘッドランプは未設定となる。
また、デビュー当初のボディカラーはスペリアホワイト1色のみだった(後にシルキーシルバーメタリックが追加)。
その他のボディカラーも(キャリィに設定のある黒系のブルーイッシュブラックパール、濃緑系のクールカーキパールメタリック、濃青系のノクターンブルーパールなど)白とシルバー以外は未設定となる。
なお、スズキのキャリィには軽トラックでも特別仕様車の設定があるのに対し、OEMのミニキャブトラックDS16Tには一切未設定となっている。
7代目ミニキャブトラック(DS16T)2型の改良点
2015年9月一部改良ではエンジン制御変更で燃費を向上。
運転席&助手席シートの座面を大型化。エアコンフィルターを全グレードで追加。荷台の左右ステップ下に荷台平シート用フックを新たに採用し、リアゲート中央部にゲートフックを追加した。
さらに防錆鋼板をルーフパネルにも追加採用したことでボディ表面積が100%防錆鋼板化となった。
7代目ミニキャブトラック(DS16T)3型の改良点
2017年11月一部改良では最上級のGグレードのみに設定のABS、助手席エアバッグ、助手席シートベルトプリテンショナーの3点セットを「みのり」、「M」グレードへ拡大標準装備化。
グローブボックスも拡大化。アクセサリーソケットが新規に標準装備となった。また、Gグレードではそれまでのオーディオ格納スペースが1DINから2DINへ変更となる。
2018年6月・一部改良
2018年6月の一部改良では予防安全技術「e-Assist」を導入(スズキのデュアルセンサーブレーキサポート)。ソナーを用いた誤発進抑制機能(前進・後退時)を全車に標準装備とした。
7代目ミニキャブトラック(DS16T)4型の改良点
2019年9月の一部改良では予防安全技術「e-Assist」がグレードアップ。
夜間の歩行者検知にも対応した衝突被害軽減ブレーキシステム「FCM(ステレオカメラタイプ、キャリイ「デュアルカメラブレーキサポート」に相当)」に加え、以下の機能が加わる。
- 車線逸脱警報機能
- ふらつき警報機能
- 先行車発進お知らせ機能
- ハイビームアシストが追加
誤発進抑制機能は「FCM(ステレオカメラタイプ)」の搭載に伴い検知方式が超音波センサーからステレオカメラに変更された。
その一方でMグレードとみのりグレードは誤発進抑制機能(前進・後退時)が非装備化。e-Assistも未設定となる。
加えてアクティブスタビリティコントロール(キャリイではESPに相当)も標準装備。3AT車にはヒルスタートアシストも標準装備された。
また、ボディカラーにはそれまでのスペリアホワイトに加え、シルキーシルバーメタリックが追加設定となる。
7代目ミニキャブトラック(DS16T)5型の改良点
2021年8月26日の一部改良ではそれまで「G」グレードのみだった安全装備がMとみのりグレードにも拡大。
「みのり」グレードでは自動ブレーキの「e-Assist」が標準装備化。
ASCとオートライトコントロールは「M」と「みのり」へ標準装備化。3AT車のみだったヒルスタートアシストは「M」の3AT車、「G」の5MT車、「みのり」にそれぞれ拡大して標準装備となった。
さらに「みのり」グレードには積載時の安定性を高める強化リアサスペンション(4枚リーフスプリング)を標準装備。
デフロックを装備する「みのり」と「G」の4WD・5MT車を除くグレードには、悪路や雪道などで脱出性を高める「ぬかるみ脱出アシスト(ブレーキLSDトラクションコントロール、※スズキではグリップコントロール)」を標準装備とした。
エクステリアではそれまで上級のGグレードに標準装備だったメッキフロントガーニッシュをMとみのりにも標準装備化。全グレードでメッキグリル付きとなった。
7代目ミニキャブトラック(DS16T)6型の改良点
2022年4月の一部改良では吸気側にもVVTを採用したエンジンに改良。
AT車はそれまでの3速から4速ATに多段化。アイドリングストップ機能「オートストップ&ゴー」を採用したことで燃料消費率が改善された。
このほか鳥居のロープフックを2か所から4か所に増強している。
7代目 ミニキャブトラックのグレード M、みのり、Gの違い
7代目ミニキャブトラックのグレード展開はベーシックな「M」、農家向け「みのり」、上級グレード「G」の3種類。
先代とはグレード名が「みのり」以外は大きく変更され、eKワゴンなどの乗用モデルの名称に近くなった。
特別仕様車は非設定で、5AGSやディスチャージヘッドライトなど、スズキ版よりも簡略化されている。
M
7代目ミニキャブトラックのエントリーグレード。キャリイの「KCエアコン・パワステ」グレードに相当する。
装備がベーシックで、上級Gよりも価格設定が抑えられる。
エクステリアはスチールホイールや、樹脂タイプのドアミラー&ドアハンドルで簡素。2021年8月の一部改良でメッキフロントガーニッシュが標準装備化され少しスタイリッシュとなった。
なお、みのりに標準装備の「荷台作業灯」や「リヤゲートチェーン」、「トリイ&ゲートプロテクター」は非装備。
機能装備はパワステ、エアコン、AM/FMラジオを標準装備する。
Mグレードでは自動ブレーキ(デュアルカメラブレーキサポートなど)をセットにしたe-Assist(スズキセーフティサポートに相当)選択不可。
ボディカラーはホワイトとシルキーシルバーメタリックの2色のみだが、メッキガーニッシュ装着後はGに近い上級な外観や装備内容となる。
自動ブレーキのe-Assistは2018年6月の一部改良時に一旦標準装備となったが、次の2019年9月の一部改良で非装備化された。
G
7代目ミニキャブトラックの上級グレード。キャリイのKXグレードに相当。ただし、ディスチャージヘッドライトは非設定。
Gグレードでは自動ブレーキのe-Assist(スズキのデュアルカメラブレーキサポート)のほか
- パワーウィンドウ
- パワステ
- キーレスエントリー
- CDプレイヤー&2スピーカー
など快適装備を標準装備する最上級グレード。
エクステリアでは
- カラードドアミラー
- カラードドアハンドル
- フォグランプ
- メッキフロントガーニッシュ
など装備する。ただし、キャリイのKXに設定の「ブルーイッシュブラックパール」や「ノクターンブルーパール」など、シルバーやホワイト以外のボディカラーは非設定。
内装ではGのみの「ファブリックシート(他グレードはビニールレザーシート)」や「シートライザーカーペット」を標準装備し、質感が若干良くなる。
みのり
7代目ミニキャブトラックの農家向けグレード。キャリイのKC農繁仕様に相当。
みのりはMをベースに
- 強化リヤサスペンション
- 荷台作業灯
- バックブザー
- リヤゲートチェーン
- トリイ&ゲートプロテクター
- 5MTの4WDモデルではデフロックと副変速機(ハイロー切り替えトランスファー)
- 4ATの4WDモデルにはぬかるみ脱出アシスト(ブレーキLSD)※5型以降
を備えるなど、農作業での使用を想定したグレードとなる。2WDは非設定で、装備内容により2種類グレードがある。
ただしボディカラーはGグレードと同じでシルバーとホワイトの2色のみ。
自動ブレーキのe-Assistは2018年6月の一部改良時に一旦標準装備となったが、次の2019年9月の一部改良で非装備化されたが、2021年8月の一部改良で再び標準装備となった。
エクステリア(外装)
出典:三菱認定中古車
フロントデザイン。12代目キャリィトラック同様に上部は切り込みの入ったヘッドライトにオーソドックスなグリルとバンパーが組み合わさせる。
先代の6代目ミニキャブトラックではスクエアをメインとしたヘッドライトだっためイメージはかなり変化した。三菱版の専用パーツは無くエンブレムが変更されている程度である。
なお、上級グレードのGではフォグランプとメッキグリルが標準装備となる。スズキにある「ディスチャージヘッドライト」のオプション設定は三菱版では無い。
2021年8月26日の一部改良(5型)ではこのメッキグリルが全グレードに標準装備となった。
サイド。このあたりもキャリィから特に変更はない。6代目までの特徴であったロングホイールベースは変更され、タイヤ位置が後退している。
一時的各社で採用されいていたロングホイールベースだが、2016年現在新車の軽トラックではどのメーカーも不採用で7代目ミニキャブトラックのようにかつてのキャブオーバー型となっている。
なお、ボディカラーはデビュー当初キャリィトラックにあるシルバーの設定がなく、ホワイト系の「スペリアホワイト」のみだった。
2019年9月の一部改良(4型)でシルキーシルバーメタリックが追加され全2色となった。
足元は12インチスチールホイール。DS16Tのタイヤサイズは145R12-6PR。
出典:三菱認定中古車
リア。あおり左側に三菱マークと「MINICAB」デカールがついている。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンは3気筒のNAで乗用モデルで実績のある新世代のR06A型直列3気筒DOHC自然吸気エンジンを採用。
最高出力は50ps(37kW)/5700rpm、最大トルクは6.4kg・m(63N・m)/3500rpm。
2022年4月の一部改良(6型)では吸気側にもVVTを採用したエンジンに改良され、スペックが若干変化。
最高出力は50ps(37kW)/6200rpm、最大トルクは5.9kg・m(60N・m)/3500rpmとなる。
スズキ版では新開発の5AGS(クラッチを自動化させたMT)の設定があるが三菱版には設定されない。駆動方式はFRまたはパートタイム4WDとなる。
農業などに特化したみのりグレードではデフロックを備える。
インテリア(内装)
インパネ。スズキOEMモデルとなったことで先代よりも収納スペースなど使い勝手が良くなっている。ステアリングはウレタンステアリング。
スピードメーター。タコメーター無しのシンプルな1眼式。
エアコンはマニュアル式エアコン。デビュー当初は操作パネルが左右調節式だったが、
3型改良でダイヤル式に変更された。
5MT。
Gグレードの5MTとみのりグレードの5MTの4WD仕様ではレバー式による4WDのハイロー切り替えトランスファーが備わる。さらにデフロック機構(スイッチはインパネ)も備わりスタックなどぬかるみ時に重宝する。
スピードメーター。
シート。上級グレードのGグレードはファブリックシート。それ以外はビニールシートとなる。
まとめ
7代目ミニキャブトラックはスズキの完全OEMモデルとなりショートホイールベース化によって特に農業などで使い勝手が向上したモデルである。
一方で他社OEM同様(※日産のNT100クリッパートラックは除く)外観上の変更点がほとんどないため個性が薄いモデルでもある。
仕事で使う車なのでそこまで求める人は少数派だと思うが6代目までの三菱製ミニキャブトラックと比較すると残念な部分は拭えない。
それでも従来のミニキャブトラックユーザーは買い替え時に引き続き三菱で新車のミニキャブトラックを買えるし、ミニキャブトラックの名前が残っているだけでもまだマシな部分だろうか。
なお、11代目キャリィは7代目ミニキャブトラック以外に、マツダへもスクラムトラック(DG16T)として、日産へはNT100クリッパー(DR16T)としてOEM供給されている。
そのためスズキ・マツダ・三菱・日産で異例の4兄弟モデルとなっている。
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