キャリイはスズキの軽トラック型軽自動車。「スーパーキャリイ」はその派生モデルである。本稿では11代目のDA16T型を扱う。
出典:Goo-net
11代目 スズキ・キャリイとは?
2013年8月にフルモデルチェンジし11代目となったスズキ・キャリイ。
スズキのキャリイトラックは硬派な軽SUVで有名なジムニーよりも歴史が長いロングセラーモデルで、初代は1961年に「スズライト キャリィ FB型」として登場。
360CC時代にはじまり黄色ナンバーへの移行、550CCへ排気量アップ、ボディサイズ拡大、660CCへ排気量アップ、さらなるボディサイズの拡大…etcなど登場以来11回もののフルモデルチェンジを経て軽トラック市場でダイハツのハイゼットトラックと並び確固たる地位を確立してきたモデルである。
11代目は前回のフルモデルチェンジから14年9ヶ月ぶりとなり、その間に他のモデルで培った技術を注ぎ込んだフルモデルチェンジとなった。
11代目の大きな特徴はそのボディスタイル。先代ではそれまでになかった前タイヤをシートよりも前に配置したロングホイールベースと旧来の前タイヤが運転席直下に来るショートホイールベースの2種類を設定していたが、11代目では後者のショートホイールベースに統一。
その一方で車体のレイアウトを全面的に見直すことで荷台フロア長はクラストップレベル(2030mm)を維持しつつも同時にキャビンを拡大している(ドアトリム間1,310mmの室内幅を確保)。
さらに運転席は体格にあわせて14段階に調節可能な140mmのシートスライド幅を設けた。
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エンジンはスズキの最新エンジンとなるR06A型エンジンを採用。これに超高張力鋼板の採用による50kgの軽量化と組み合わせ2WDの5MTモデルで18.6km/L(JC08モード)の軽トラックとしては優れた低燃費を実現した。
2014年8月にはMTのクラッチを自動化した5AGS(オートギアシャフト)をスズキ車で初採用(※セレリオを除く)。AT限定ユーザーでも扱いやすさとダイレクトな加速感、低燃費を実現している。
サビ対策としては車体に亜鉛メッキの防錆鋼板を多用。荷台を含めボディー外板の表面サビ3年、穴あきサビ5年の長期サビ保証を標準でも受けた。
また、塗装そのものも中塗り行程を加えた3層塗装とし、ホイールハウスやフレーム、クロスメンバーには防錆効果の高いアンダーコートを標準で実施。
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安全装備としてはそれまでレンズカットだったヘッドライトを全車標準でマルチリフレクター化。上級グレードには標準でフォグランプを装備するなど夜間の農道での安全性を高めた。
さらに2014年2月には軽トラック史上初となるディスチャージヘッドライトを設定するなどヘッドライト系でもテコ入れがなされている。
また、軽量衝撃吸収ボディーTECT(テクト)の採用で56km/hオフセット衝突法規に対応。軽量化を図りつつも軽くて丈夫な高張力鋼板の使用部位拡大で衝突安全性を高めた。
加えて運転席SRSエアバッグは全グレードで標準装備とし、助手席エアバッグや助手席シートベルトプリテンショナー機構、ABSは一部グレードでメーカーオプション設定した。
スーパーキャリイとは?キャリイ(DA16T)との違い
その11代目キャリィに2018年5月。キャリィをベースにそれまでのキャビンをロング化し、居住空間の快適性や利便性を向上させた派生モデルを追加した。
それがこの「スーパーキャリイ」である。スーパーキャリイのスーパーとは、超ロングなキャビンに由来する。
居住空間を拡大した軽トラックといえば、ダイハツ・ハイゼットジャンボがかなり前から先行していたが、スズキもこのジャンルに新規参入となった。
スーパーキャリイでは既存のキャリィに対し、キャビンを後方へ460mm拡大し広い室内空間を実現。さらに運転席シートにはエブリイバンなどと同じリクライニング機構付きのシートを採用。
リクライニング角度40°やシートスライド量を180mmとし、それまでの軽トラックの常識を打ち破る快適な室内空間とした。
さらに全高はキャリィよりも+120mmアップの1885mとし、上方向にも拡大。後部とあわせてより開放感ある室内空間とした。さらにファイル等の収納に便利なオーバーヘッドシェルフを標準装備する。
座席後方は小規模ながら独立したシートバックスペースを確保。従来の軽トラでは助手席や小さな収納スペースにしか置けなかった荷物を室内に置けるようにし、雨風にさらしたくない荷物(工具や食品、書類)などを気軽に置けるようにした。
そして助手席シートには軽トラックとしては初の前倒し機構を搭載。助手席背面にはシートバックテーブルを標準装備とし、デスク作業に活用できるなど、利便性を大きく向上させている。
その一方で荷台の方はフロア長1,975mmを確保。脚立や草刈り機など、薄型の長尺物であればキャリイ同様に積載可能とした。荷台長も1,480mmを確保し、自転車など積みやすい荷台としている。
安全装備としては軽トラックでは初となる前後の誤発進抑制機能を標準装備。このほか夜間の歩行者検知も可能なデュアルカメラブレーキサポート類も標準装備とし、機能性や快適性、安全性を高めた上級モデルとなっている。
11代目スズキ・キャリイのグレード L、X、Xリミテッドの違いなど
11代目キャリイのグレード展開はベーシックな「L」と上級「X」、特別仕様車「Xリミテッド」の3種類。
ハイロー切り替え可能な副変速機付きキャリイは上級「X」と「Xリミテッド」の4WD・5MTモデルのみに設定する。
L
11代目スーパーキャリイのエントリーグレード。Xよりも装備が若干簡略化される。
エクステリアでは
- ハロゲンヘッドライト
- ガードバー付きアングルポスト
- アングルポストフック(4箇所)
- 荷台ステップ(運転席側)
- 荷台ロープフック(15箇所)
- みち板引っ掛式リヤゲート
- メッキフロントガーニッシュ
- カラードバンパー
- マッドフラップ(前後)
- バッテリカバー
を標準装備。快適装備は
- マニュアル式エアコン
- パワステ
- 運転席&助手席サンバイザー
- UVカット機能付きフロントガラス
などを標準装備。「電波式キーレスエントリー」や「パワーウィンドウ」、「運転席バニティミラー」、「集中ドアロック」がLでは非装備となる。
安全装備・メカニズムでは
- 夜間の歩行者検知も可能な「デュアルカメラブレーキサポート」
- 車線逸脱警報
- ふらつき警報
- 先行者発進おしらせ機能
- ハイビームアシスト
- ESP
- オートライトシステム
- ライト自動消灯システム
- 誤発進抑制機能
- 後方誤発進抑制機能
- ぬかるみ脱出アシスト(ブレーキLSD)
- EBD付きABS
などを標準装備する。デフロックや副変速機はXグレードの4ED&5MTのみに設定で、Lには非設定。
X
11代目スーパーキャリイの上級グレード。Lグレードよりも外装がスタイリッシュになり、装備も豪華になる。
エクステリアではLの装備に加えて
- 荷台ロープフックが19箇所に増設
- フォグランプ
- 荷台作業灯
- リアゲートチェーン
- カラードドアミラー
- メッキドアハンドル
- アングルポストプロテクター
が標準装備。「LEDヘッドライト」はXグレードのみにオプション設定。
快適装備は
- 電波式キーレスエントリー
- 集中ドアロック
- パワーウィンドウ
- 運転席バニティミラー
- UVカット機能付きフロントドアガラス
が標準装備となる。
メカニズムでは4WD・5MTモデルにのみ副変速機とデフロックを標準装備(※代わりにぬかるみ防止アシストは非装備)する。
特別装備車・Xリミテッド
2023年12月設定の特別仕様車。上級グレードの「X」グレードをベースにブラック塗装を施した専用装備や専用デカールなどで黒系アクセントを与えた特別モデル。
XリミテッドではXグレードをベースにエクステリアで
- Xリミテッド専用デカール
- インナーブラック塗装・LEDヘッドランプ
- ブラック塗装・フロントガーニッシュ
- ブラック塗装・フォグランプベゼル
- ブラック塗装・ドアミラー
- ブラック塗装・アウタードアハンドル
- ブラックメタリック塗装・スチールホイール
などを与え、ノーマルとは異なるカスタム感を演出。軽トラとしては珍しいメーカー公式のカスタムモデルに仕上がっている。
11代目キャリイ(DA16T)・モスグレーメタリック追加
2023年7月3日発表、2023年8月発売からのキャリイに新ボディカラー「モスグレーメタリック」が追加。
対象となるのは上級「KX」グレード、特別仕様車の「KCスペシャル」・「農繁スペシャル」とスーパーキャリイの「L」、「X」の全グレード。このボディカラーにスペーシアベース専用ボディカラーの「モスグレーメタリック」が追加設定となった。
スーパーキャリイのエクステリア(外装)
出典:スズキ認定中古車
フロントデザイン。ヘッドライトやグリルなど、スーパーキャリイのフロント周りはノーマルのキャリィとまったく同じ。
ただしロングルーフ化されているため、上方向にちょっとだけ伸びたような外観となる。
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このほかスーパーキャリイではメッキグリルを標準装備。上級グレードのXではフォグランプも標準装備とし、
ディスチャージライトはXのみオプション設定される。
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サイド。ここからがスーパーキャリイ最大の特徴で、従来よりもキャビンを後方へ拡大。
ノーマルに比べるとちょっと不格好な感じもするが、サイドビューからも居住性を重視した外観というのがよく分かる。
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その一方でキャビンが伸びた分、荷台がキャリに対し460mm短くなる。(ノーマルの荷台フロア長1940mmに対し、スーパーキャリイでは1,480mm)。
ただし荷台長が短くなった分、荷台の底辺はキャビン下まで伸ばした堀のような構造を採用し、脚立や芝刈り機など背の低い長物は従来どおり積載可能としている。
(※荷台底面の荷台フロア長は1,975mmでキャリィの2,030mmに対し55mmしか短くなってない)
自転車のような背の低い荷物程度であれば難なく載せられる。
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足元は12インチスチールホイール。これぞ軽トラともいうべき外観。タイヤサイズは145/80R12。
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リア。このあたりはノーマルのキャリィと同じ。ベースのキャリィは2015年8月の一部改良(2型)で、ボディ表面積の100%が防錆鋼校板となった。
さらに加えて荷台ステップの左右下に平シート用フックを追加。リアゲート中央部にも荷台フックを追加されている。
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なお、車名はスーパーキャリイだが、車名デカールは「SUZUKI CARRY」となっていて、スーパーの文字は一つも入らない。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンは3気筒のNAで乗用モデルで実績のある新世代のR06A型直列3気筒DOHC自然吸気エンジンを採用。
最高出力は50ps(37kW)/5700rpm、最大トルクは6.4kg・m(63N・m)/3500rpm。
2022年4月の一部改良(6型)では吸気側にもVVTを採用したエンジンに改良され、スペックが若干変化。
これ以降のモデルでは最高出力は50ps(37kW)/6200rpm、最大トルクは5.9kg・m(60N・m)/3500rpmとなる。
トランスミッションは5MT、3AT、5AGSの3種類。ただし、5AGSは上級グレードのXのみに設定。この5AGSのギアはマニュアルのものを使い、クラッチ操作と変速を機械で自動制御する仕組み。
場合によってはマニュアルモードで任意の変速も可能で、オートマ免許でものれるマニュアルトランスミッションといえる。
駆動方式はFRまたは4WDで、4WDはスイッチで切り替える他(ドライブセレクト4×4)、上級グレードのXのみ4WDのハイ・ロー切り替えレバーにデフロック(スイッチ)を装備した5MTを設定する。
2021年8月の一部改良(5型)ではデフロック装着モデルと5AGSを除く全グレードに「ぬかるみ脱出アシスト(ブレーキLSD)」を標準装備。悪路での脱出をサポートする機能が追加された。
自動ブレーキはデビュー当初設定がなかったが、2019年9月の4型改良で標準装備化。
夜間の歩行者検知も可能な「デュアルカメラブレーキサポート」をはじめ、
- 車線逸脱警報
- ふらつき警報
- 先行者発進おしらせ機能
- ハイビームアシスト
- ESP
- オートライトシステム
- 誤発進抑制機能
- 後方誤発進抑制機能
がスーパーキャリイの全グレードに搭載された。
スーパーキャリイのインテリア(内装)
出典:スズキ認定中古車
インパネ。このあたりはノーマルのキャリィと同じ。11代目では大型インパネアンダーポケット、インパネペンホルダー、ショッピングフックなど先代にはなかった実用的な装備が追加されている。
3型改良時でグローブボックスを大型化し、底も深めて使い勝手を向上させた。ステアリングはウレタンステアリングホイール。
出典:スズキ認定中古車
スピードメーター。タコメーターなしのシンプルな1眼式。エアコンはスーパーキャリイの全グレードで乗用車と同じくエアコンフィルター付きのマニュアル式エアコンとなる。
出典:スズキ認定中古車
フロントシート。スーパーキャリイの室内での特徴ともいうべき部分がこのシート。
従来の軽トラでは背もたれがキャビン後方に固定されたリクライニング不可能なシートとなっていたが、スーパーキャリイではエブリイバンなどと同じリクライニング機構付きのシートを採用。
リクライニング角度40°やシートスライド量を180mmとし、出先での休憩時に快適な仕様としている。
出典:スズキ認定中古車
また、シート背面には小さいがラゲッジスペース(シートバックスペース)も確保。荷台では雨風など不安だが、ここにおけば室内保管となり、その心配も皆無。濡れては困る書類や食品、工具類を置く時に重宝する。
出典:スズキ認定中古車
そしてスーパーキャリイの助手席は前側へ倒れる機能を搭載。シート背面にはテーブルも備え、室内でのデスク作業にも快適な仕様とした。
出典:スズキ認定中古車
5MTのシフトノブ。
Xグレードの5MT・4WD仕様ではここに4WDの副変速機(ハイロー)切り替えレバーが付く。
スーパーキャリイの評価
出典:スズキ認定中古車
11代目のキャリィに設定された派生モデル、スーパーキャリイは、キャリィに対してログキャビンを採用し、軽トラでありながら室内空間の快適性をアップさせたモデルである。
それまでの軽トラというと荷物を載せることがメインで、居住性はかなり我慢を強いられれる部分があったが、このスーパーキャリイでは居住性を飛躍的にアップ。積載能力もそこまで失うこと無くより快適な軽トラックとなっている。
その分装備が豪華になって価格もあがっているが、乗用車感覚で使える軽トラとして、欲しい人には嬉しいモデルといえよう。昨今流行りのフードデリバリー需要にも4ナンバー登録の貨物車なので用意に対応可能だ。
なお、ダイハツはかなり前からハイゼットの派生モデル、ハイゼット・ジャンボを販売しているが、このスーパーキャリイはその真っ向勝負なライバル車種となる。
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