キャリイはスズキの軽トラック型軽自動車。本稿では11代目の後期型(2002年5月~)について扱う。
出典:スズキ認定中古車
10代目 スズキ・キャリイとは?
10代目キャリイは軽自動車新規格後の1999年1月に登場した。
10代目キャリィのボディ形状は新たに搭乗位置よりもタイヤが前にあるセミキャブオーバータイプを採用。新開発の3分割フレーム構造により国内の新しい安全基準に対応させた。
また「軽量衝撃吸収ボディー」を採用して特に居住スペースの剛性アップ。軽自動車新規格に伴うサイズアップにより増えた重量増分は部品一つ一つの見直しで最低限に抑えた。
安全性にも配慮しボディ形状の角を少なくしたり、ステアリングホイールやコラムに衝撃吸収構造の採用、割れにくいインパネ部材の採用で衝突時の乗員に与える二次被害を軽減。
また、SRSエアバッグをメーカーオプションとして設定。ターボ仕様ではABSもメーカーセットオプションとして新設定した。また、荷台は1410mmまで広げ扱いやすさを向上。
ボディそのものにも耐久性や整備性を向上させるべく、防錆鋼板の使用範囲の拡大や、フレームアンダーコート塗布範囲の拡大により防錆性能を向上。
また、エンジン位置が運転席下に配置したことで荷台に荷物がある状態でもメンテンスを可能とした。
使いやすさも10代目は向上。タイヤ位置がより前方になったことでドア開閉部のタイヤハウスの出っ張りがなく、足元が広くなった。またフロアも底床となったことで乗降性や居住性がアップしている。
また、エンジンを車体中央、トレッドとホイールベースを広げたことで乗り心地がアップした。
10代目キャリィ後期型とは?改良点と前期との違い
デビュー当初は同年代の軽ワンボックスであるエブリイバンとほぼ同じ顔つきだったが2002年5月のマイナーチェンジ(後期型)で顔面をリフレッシュ。前期とはひと目で違うベーシックで親しみやすいデザインとなった。
出典:Goo-net
出典:スズキ認定中古車
その他に後期型では荷台を新設計し荷台の床面長を拡大。また、荷台の床面地上高を640mmに変更した。
さらにキャビンそのものをボディと分離したことで補修性を向上。みち板引き掛け式リアゲートも全グレードで標準装備とした。
室内はステアリング角度や運転席のシートスライド量、シート位置などを見直し前期よりも快適性がアップ。
またインパネも変更され運転席ピラーホルダー、カップホルダー、コンソールポケット、ドアポケットを採用し使い勝手がかなり向上した。
エンジンは2001年9月マイナーチェンジ時にK6A型の3気筒DOHC自然吸気エンジンを新採用。
従来のF6Aから新型K6A型に置き換わったことで「優-低排出ガス」認定となり、かつオールアルミボディとタイミングチェーンの採用による新エンジンにより日常使用での使いやすさと低燃費、耐久性や(タイミングベルト交換不要など)のメンテンス性をアップさせた。
2002年5月マイナーチェンジ時ではこれの出力特性に関する改良がプラスされ中低域のトルクがアップした。
10代目・後期型キャリイのグレード KU、KC、KCパワステ、KCエアコン、KCエアコン・パワステ、KC農繁仕様、KCパワステ 農繁仕様、FC、FCエアコン・パワステ、FC農繁仕様の違いなど
10代目後期キャリイのグレードは廉価グレード「KU」、エントリーグレード「KC」。
このほかKCにパワステを付けた「KCパワステ」、KCにエアコン+パワステを付けた「KC エアコン・パワステ」、KCにデフロックや副変速機を付けた「KC農繁仕様」、KC農繁仕様にパワステを付けた「KC農繁仕様 パワステ」などが設定されていた。
モデル後半にはショートホイールベースを採用した「FC」グレードが追加。
ショートホイールベースの廉価グレードは「FC」、エアコン・パワステを付けた「FC・エアコン・パワステ」、農家向け特化グレード「FC農繁仕様」、「FCエアコン・パワステ農繁仕様」などが設定されていた。
この時代の軽トラはとにかく安く作られ、快適装備もあまり充実していない。そのため中古で買う場は特にエアコンレスモデルには注意が必要。炎天下・湿度が高い酷暑の真夏には死活問題となる。
また、快適装備は全グレードで電動格納式ミラーやキーレスエントリーが非装備。
KU
10代目後期キャリイの廉価グレード。
パワステ、パワーウィンドウ、エアコン、キーレス、AM/FMラジオなど快適装備がまったく付いておらず、素の状態。
その分車重はキャリイの中でも最軽量で、改造ベースなら面白いモデル。
駆動方式も2WDのFRのみで、4WDが非設定。トランスミッションは3ATまたは5TMの2種類。
KUエアコン
KUグレードにエアコンを標準装備したグレード。モデル中盤から追加。
パワステ、パワーウィンドウ、キーレスなどはKUと同じく非装備。
駆動方式は2WDのFRのみで、4WDが非設定。トランスミッションは3ATまたは5TMの2種類。
KUエアコン・パワステ
KUグレードにエアコンとパワステを標準装備したグレード。モデル中盤から追加。
駆動方式もパートタイム4WDが追加され、2WDと4WDの2種類。トランスミッションも3ATまたは5TMの2種類。
KC
10代目キャリイのミドルグレード。
KUでは非装備のAM/FMラジオをKCで標準装備する。
ただしパワステ、パワーウィンドウ、エアコン、キーレスなど依然として快適装備がまったく付いないモデル。
駆動方式はKUよりも増えて2WDとパートタイム4WDを設定。トランスミッションは3ATまたは5TMの2種類。
KCパワステ
KCグレードにパワステを標準装備したグレード。
駆動方式は2WDとパートタイム4WDを設定。トランスミッションは3ATまたは5TMの2種類。
KCエアコン
KCグレードにエアコンをしたグレード。
駆動方式は2WDとパートタイム4WDを設定。トランスミッションは3ATまたは5TMの2種類。
KCパワステ・エアコン
KCグレードにパワステとエアコンを標準装備したグレード。
駆動方式は2WDとパートタイム4WDを設定。トランスミッションは3ATまたは5TMの2種類。
KC農繁仕様
KCをベースに農道などでの悪路走破性を高め、農家向けに特化したグレード。
「副変速機」と「デフロック」を標準装備し、悪路での走破性を高めたモデル。
このほか農作業がしやすいよう
- 荷台作業灯
- テールゲートチェーン
- テールゲートと鳥居のアッパーガード
- 大容量バッテリー
なども標準装備する。
4WD&5MTの組み合わせのみ設定。エアコン非装備でオーディオレス仕様。
ただしディーラーでエアコンを追加できたため、中古車の中にはエアコン装着モデルもある。
KCパワステ 農繁仕様
KC農繁仕様にパワステを標準装備したグレード。
4WD&5MTの組み合わせのみ設定だが、エアコンは非装備でオーディオレス仕様。
ただしディーラーでエアコンを追加できたため、中古車の中にはエアコン装着モデルもある。
特別仕様車 50周年記念 KCリミテッド
キャリイ誕生50周年を記念し、設定された特別仕様車。
KCエアコン・パワステをベースにサビ塗装を強化(車体全体の塗装に中塗りを追加してサビの発生を抑えるとともに、ヒンジなどの細部まで防錆処理。荷台の裏側にアンダーコートを追加するなど、沿岸部等での需要に応える重防錆仕様)。
このほか
- 4WD・5MT車には、ぬかるみからの脱出を容易にするデフロック機構を装備
- 夜間の作業を助ける荷台作業灯を採用した。
- シート表皮に専用ファブリックシート表皮を採用
- 荷台後部に誕生50周年記念デカールを貼り付け
- ボディカラーに白以外の銀色(シルキーシルバーメタリック)を選択可
を特別装備とした。
FC
10代目後期キャリイ・ショートホイールベースの廉価グレード。農家向けにモデル中盤で追加。
KCと同じくAM/FMラジオを標準装備する以外は快適装備が非装備で、パワステやエアコンなどが一切付かない。
トランスミッションは5MTのみで、2WDとパートタイム4WDの2種類を設定。
FCエアコン・パワステ
FCグレードにエアコンとパワステを標準装備したグレード。
トランスミッションは5MTのみで、2WDとパートタイム4WDの2種類を設定。
FC農繁仕様
FCグレードをベースに農道などでの悪路走破性を高め、農家向けに特化したグレード。
「副変速機」と「デフロック」を標準装備し、悪路での走破性を高めたモデル。
このほか農作業がしやすいよう
- 荷台作業灯
- テールゲートチェーン
- テールゲートと鳥居のアッパーガード
- 大容量バッテリー
なども標準装備する。
4WD&5MTの組み合わせのみ設定。エアコンが非装備でオーディオレス仕様。
ただしディーラーでエアコンを追加できたため、中古車の中にはエアコン装着モデルもある。
FCパワステ 農繁仕様
FC農繁仕様にパワステを標準装備したグレード。
副変速機とデフロックを標準装備し、悪路での走破性を高めたモデル。
4WD&5MTの組み合わせのみ設定だが、エアコンは非装備でオーディオレス仕様。
ただしディーラーでエアコンを追加できたため、中古車の中にはエアコン装着モデルもある。
FCパワステ・エアコン 農繁仕様
FC農繁仕様にエアコンとパワステを標準装備したグレード。
「副変速機」と「デフロック」を標準装備し、悪路での走破性を高めたモデル。
このほか農作業がしやすいよう
- 荷台作業灯
- テールゲートチェーン
- テールゲートと鳥居のアッパーガード
- 大容量バッテリー
なども標準装備する。
4WD&5MTの組み合わせのみ設定。オーディオレス仕様。
10代目後期型キャリイのエクステリア(外装)
出典:スズキ認定中古車
フロントデザイン。前期では細目のヘッドライトが特徴だったが後期型ではこれを縦方向に拡大。オーソドックス感を強くして万人受けするデザインとなっている。
商用モデルは仕事がメインで幅広い年代層が購入することから尖ったデザインよりも飽きのこないオーソドックスで普通なデザインが求められるが後期型でようやくそれが実現された形だ。
出典:スズキ認定中古車
サイドから。タイヤを前方の隅に配置し、ボンネットを短くエンジンは座席の下に格納するセミキャブオーバータイプだ。
足元は12インチスチールホイールで、タイヤサイズは145R12-6PR。
この形式は同年代でいうと三菱の6代目ミニキャブトラック、ホンダの3代目アクティトラック(ただしエンジン位置が違う)と同じタイプでダイハツの5代目ハイゼット、スバルの6代目サンバーとは違う構造だった。
出典:スズキ認定中古車
リア。スペアタイヤが後部荷台の下、バックランプは独立型で1灯タイプだ。車名とスズキデカールは後ろあおり右側に2段で配置される。
出典:スズキ認定中古車
荷台の様子。
エンジン・機能装備・快適装備など
エンジンはK6A型3気筒DOHC自然吸気エンジンを運転席下に搭載。前期ではインタークーラーを装備しない控えめなターボモデルもあったが後期では完全に廃止。自然吸気エンジンのみとなる。
最高出力は35kw(48ps)/5500rpm、最大トルクは62n・m(6.3kg)/4000rpm。トランスミッションは3ATまたは5MTで駆動方式はFRまたは4WD。一部4WDのグレード(※5MTのみ)ではデフロックが備わる。
前タイヤが運転席直下に来るこのタイプは先代のキャリイと同じタイプで、デビュー当初は設定がなかったが2005年11月マイナーチェンジで農家向けに追加された(ただし、OEMモデルの3代目スクラムトラックには未設定)。
同年代のライバルとは異なり同じキャリィトラックでもスズキのみロングホイールベースとショートホイールベースの2タイプを用意していた。
さらに農道の悪路に対応すべく「農繁仕様」も追加され、このタイプではデフロック機構が備わっている。
DA63TとDA65Tとの違い
DA63TとDA65Tとの違いは駆動方式がFRまたは4WDの違いとなる。DA63Tは二輪駆動のFRモデル。DA65TはFRベースの4WDモデルと覚えるといいだろう。
4WDのシステムはジムニーやパジェロミニと同じパートタイム4WD方式。運転席に設けられた切り替えレバーを操作することでFRの2Hモード、4WDの4Hとより駆動力が高くなる4WDの4Lの3種類を切り替えることができる。また、ぬかるみに対応させるため一部のグレード(農繁仕様など)ではデフロックが備わりより悪路に強くなる。
一般的な乗車のスタンバイ式4WDとは異なり、農道や畑、あぜ道など悪路を走る軽トラックでは伝統的により強力なパートタイム4WDを採用する傾向が強い。
10代目後期型キャリイのインテリア(内装)
インパネ。後期型ではデザインを刷新。収納スペースとして運転席ピラーホルダー、カップホルダー、コンソールポケット、ドアポケットが備わり利便性が向上した。
スピードメーター。後期型ではスピードメータのデザインが変更され、シンプルかつ見やすいデザインとなった。
シフトノブ。MT、ATどちらもフロアシフトタイプ。
4WD仕様では副変速機のハイロー切り替えレバーがシフトノブ下にくる。
さらに農繁仕様の4WDタイプでは画像のようにデフロック機構の切り替えスイッチが付く。
出典:スズキ認定中古車
運転席。各社同じなのだが、商用モデルということでシート自体のつくりは乗用モデルに比べるとそこそこ。後期型ではシートのスライド幅に90mmに拡大した。
10代目後期型キャリイの評価
出典:スズキ認定中古車
11代目キャリイの後期モデルは前期型のとっつきずらいデザインが改良され、万人受けするデザインとなった軽トラックである。
現行の11代目はマルチリフレクターランプに最終型サンバーのようなヘッドライトでさらに質感が上昇&燃費が大幅に改善しているが、手頃な価格の軽トラということで言えば10代目の魅力は依然健在で予算に限りがある人はまず検討してほしい車種の一つである。
ショートホイールベース(FCグレード)かロングホイールベース(KUグレード)かを選べる点も他社には無い11代目キャリイの魅力である。

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