NT100クリッパーは日産のトラック型軽自動車。三菱・ミニキャブトラックのOEMモデルである。本稿ではU71TおよびU72T型の2012年1月マイナーチェンジ以降を後期型と定義し、これを扱う。
出典:日産認定中古車
概要
2003年9月に登場した日産のクリッパートラック。商用ワンボックスタイプのクリッパーバンとの当時デビューで、両方とも三菱のミニキャブトラック、ミニキャブバンのOEM供給を受けての登場だった。
ベースのミニキャブトラックは、デビュー当初は奇抜なフロントデザインをしていたが2000年12月マイナーチェンジでフロントデザインを大幅変更。前期型の初代クリッパートラックはその6代目・中期型ミニキャブトラックのOEMモデルとなっている。
パッケージングはセンターミッドシップレイアウトにセミキャブスタイル&ロングホイールベースの組み合わせ。これにより当時トップレベルの安全性と乗員スペース、積載スペースを確保しつつ機能的で力強いデザインとした。
安全装備としては運転席/助手席SRSエアバッグとABS及び3点式チャイルドシート固定機構付きリヤシートベルトを全グレードにオプション設定。
エンジンは新開発の3G63型を採用。新リーンバーンMVVを全グレードに搭載し優れた低燃費と排ガス中のCO2を削減した。
使い勝手も前輪を前方に配置したことで前席ドアが大型化。これによりスムーズな乗降とし、ゆとりある足元空間を実現した。さらにラジエーターの配置も見直して積載スペースを拡大。使いやすさも向上させている。
センターミッドシップレイアウトと50:50の重量配分、ロングホイールベースや高剛性ボディ構造、後輪トルクアーム式3リンクリジット&コイルスプリングなどの組み合わせで快適な乗り心地を実現。
4WDシステムにはイージーセレクト4WDを採用。80km/h以下で走行中においても道路状況に応じて2WD/4WD-Hiの切り替えが容易に行なえるようにした。これに加えて5MT車ではハイローの切替可能な副変速機も採用した。
後期型クリッパートラックの改良点とミニキャブトラックU61T/U62Tとの違いなど
OEM元のミニキャブトラックが2011年11月にフロントデザインの変更を伴うマイナーチェンジで後期型へ移行した際、名称をクリッパートラックからNT100クリッパーへ変更。
そこからおよそ3ヶ月後の2012年1月マイナーチェンジで三菱同様にフロントフェイスの大幅変更を伴いU71TおよびU72T型は後期型となった。
後期型では三菱同様に新デザインのヘッドライトを採用したほか、日産専用のグリルの採用により、質感やスタイリッシュ感が大幅向上。より日産らしさが表現されたデザインとなった。
このほかフロントシートの生地が刷新され、ヘッドレストは強度を高めて高さを変更。また、カップホルダー付フロアコンソールボックスの容積も大型化。
運転席側フロントドアポケットを追加装備するとともに、廉価グレードのSDにパワーステアリング、助手席アシストグリップ、前席両側昇降グリップを標準装備化し、利便性を向上。
2012年12月の一部改良では一部グレードを除き後方反射板を追加。パネルバンを廃止した。
後期型NT100クリッパーU71T/U72Tのグレード SD、DX、DX農繁仕様、パネルバンの違いなど
後期型クリッパートラック(初代NT100クリッパー)のグレード構成は下から順にエントリー「SD」、ミドルグレード「DX」、農家向け「DX農繁仕様」、箱車の「パネルバン」などが設定されていた。
SDグレード
SDは廉価グレードで、ミニキャブトラックのVグレードに相当するグレード。
ステアリングが重ステ仕様でエアコンレス。また、AM/FMラジオはオプション設定となっていた(※2010年1月以降はそれぞれ単独だったオプションのエアコンとパワステをセットにしたセットオプションに変更されている)。
※2012年1月マイナーチェンジではSDグレードでもパワステと助手席アシストグリップ、前席両側昇降グリップが標準装備となった
DXグレード
DXグレードはミニキャブトラックのVX-SEグレードに相当するグレードで、ミドルグレード。
SDグレードに比べてパワステとエアコンを標準装備し、AM/FMラジオも標準装備。
このほかに外装で鳥居&ゲートプロテクター、荷台横にはキー付きロッカーボックス、荷台作業灯(ワーキングランプ)、テールゲートチェーンも標準装備となる。
ただし、パワーウィンドウやキーレスエントリーは非設定。
DX農繁仕様
DX農繁仕様はDXエアコン付きの5MTモデルをベースに農家向けに特化させたグレード(※三菱は「みのり」グレード)。
「強化リヤサスペンション」と「リブラグタイヤ(現在ではマッドテレーンM/Tタイヤに相当)」を採用し、農道や畑などのぬかるみやあぜ道でもしっかりと地面をとらえ、悪路走破性を高めたモデル。
農繁期の多量な農作物の運搬に適している。
パネルバン
パネルバンはトラックの荷台部分がパネルのような箱型の荷室になったグレードで、箱車とも呼ばれる。
中身はSDグレードがベースのため、中期モデル当初は重ステでエアコンレス仕様となる。2008年12月以降はパワステやエアコン、カラードバンパーなどが標準装備となる。
ただし、初代モデルが終了する前の2012年12月にパネルバンが廃止されている。
エクステリア(外装)
出典:日産認定中古車
フロントデザイン。初代クリッパートラックのアイデンティティーだったインナーブラックヘッドライトを廃止し、変わって一般的なメッキタイプのマルチリフレクターヘッドライトを採用(※ただし三菱版と共通)。デザインも内側に切り込みを入れスタイリッシュに仕上げたデザインとなった。
これに日産専用の新エンブレムを装着。中期型ではウィンググリルで差別化を行なったが後期ではよりスタイリッシュなVモーショングリルを装着し、見た目がベースの6代目・後期型ミニキャブトラックよりも良くなっている。
全体的にもより日産らしさが出ており軽トラックのOEMモデルとしてはかなり力の入った1台だ。
出典:日産認定中古車
サイドから。このあたりは中期型と同じ。
足元は12インチスチールホイール。
三方開き状態。
出典:日産認定中古車
リア。車名がNT100クリッパーに変更されたため、車名デカールが「NT100」に変更されている。
車名デカールも「NISSAN」となっており、旧来の日産車を連想させるようなリアビューとなっている。な
お、デザイン状の変更点は特に無い。2012年12月マイナーチェンジではベース車同様に後方反射板が追加された(追加位置はテールランプ上で、細い反射板が確認できる)。
エンジン・機能装備など
エンジンは3気筒の3G83型の3気筒のSOHC自然吸気エンジンのみ。
最高出力は48ps(35kW)/6000rpm、最大トルクは6.3kg・m(62N・m)/4000rpm。
トランスミッションは5MTまたは3ATで、駆動方式はFRまたはパートタイム4WD(スイッチ式)。5MTの4WD仕様にはハイロー切り替えレバーが付く。
一部5MTの4WD仕様ではデフロックが無い代わりにオプションで機械式LSDを装着可能だ。また4WDについてはAT、MTともにパートタイム仕様で、MTの場合は副変速機が付いてた。
NT100クリッパー U71T/U72T型との違い
NT100クリッパーのU71TとU72T型の違いは駆動方式。
U71Tは後輪を駆動するFRのNT100クリッパー。U72TはU71Tベースで前輪を駆動する4WDのNT100クリッパー。
クリッパートラックの4WDシステムはクリッパーバンと同じパートタイム4WDで、運転者が任意にFRか4WDを切り替えるタイプ。
普段は2駆で走行するため燃費が良いか、悪路に応じて自分で切り替える必要性があるのと、タイトコーナーブレーキング現象も発生するため取り扱いは少々難しい。
インテリア(内装)
インパネ。中期型の2010年1月マイナーチェンジでインパネとステアリングが変更されデザインがリフレッシュされた。後期クリッパーバンと同じく軽トラらしからぬそこそこ洗練されたデザインとなっている。
これによりドリンクホルダーがインパネ両サイドに増設され、オーディオスペースもインパネ上部に移動し使い勝手が向上した
ステアリングも中期型終盤でデザインが変更され、スタイリッシュになった。
スピードメーター。シンプルながら近代的なデザインとなり、特に燃料残量計がアナログ式からデジタル式に変更された。
4WD仕様車ではインパネ部のスイッチから切り替えを行う。ハイロー切り替えは従来通りシフトノブ左側にレバーが備わる。
エアコンはマニュアル式エアコン。
5MTのシフトノブ。4WDの5MTグレードではハイロー切り替えレバーが左側に付く。
出典:日産認定中古車
運転席。後期型ではシート表皮が変更された。さらにヘッドレスト部分も縦長に拡大し、快適性がわずかに向上した。
初代・後期NT100クリッパートラックのまとめ
出典:日産認定中古車
初代NT100クリッパー(後期型クリッパートラック)はデザインがより日産らしくなり、メッキタイプのマルチリフレクターヘッドライトとも相まってベーシックでありながら三菱版よりも洗練されたデザインが特徴の軽トラックである。
初代のU71およびU72系の中では一番デザインがベーシックで、インナーブラックヘッドライト特有のフロントデザインが苦手な人にとっては嬉しい仕様である。
なお、この後の2代目移行ではベースモデルであるミニキャブトラックの生産終了によりスズキのキャリィトラックにOEM元が切り替わる。
キャリィトラックベースでは初代のようなデフォルメが一切されず、エンブレムのみの変更となってしまうため個性的な軽トラックはこの初代後期が最後となっている。そういった点では意外とレアな軽トラックでもある。
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