カプチーノは2シーターオープン型の軽自動車。本稿では1995年5月~1998年10月までの後期型であるEA21R型について扱う。
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スズキ・カプチーノとは?
スズキのカプチーノはバブル全盛期の1991年に、軽自動車枠でのスポーツカーとしてデビューした。
長いボンネットにはターボエンジンが縦置きされており、サスペンションも軽自動車としては初となるダブルウィッシュボーン式(独立懸架)を採用。駆動方式はFRで前後重量バランスは51:49を実現していた。
ボディそのものも軽自動車でありながらアルミを用いて軽量化を徹底。コストを優先するスズキにしては異例のアルミボディの採用でスポーツ志向を強めていた。
エンジンはアルトワークスでお馴染みのF6A型直列3気筒DOHCインタークーラー付きターボエンジンを採用。
これをエンジン内に縦置きに配置。車内空間が優先される近年の軽自動車とは真逆のエンジン配置で、これもスポーツカーとしての性能を追求した設計となっていた。
そしてフロントに縦置きしたエンジンを後輪で駆動することにより優れた重量配分とハンドリングを実現。
その軽量ボディにターボエンジンを相まって普通車のスポーツカーに引けを取らない走行性能を実現していた。
実用性がメインとなる軽自動車で室内空間を犠牲にし、極限までスポーツ走行に特化したパッケージングはまさにバブル時代ならではの軽自動車であった。
前期型カプチーノ(EA11R)と後期型カプチーノ(EA21R)の違い
そのカプチーノは1995年5月にビッグマイナーチェンジを行い、型式を変更し後期型となった。
大きな変更点はそれまでのF6A型に変る新エンジン、K6A型の採用だ。
K6A型はF6Aとは異なり全てをアルミで作られたオールアルミエンジンとなり、重量もF6Aより10kg軽量化。
加えて16ビットECUの搭載により最高出力は変わらないものの、最大トルクが8.7kg・m(85.3N・m)から10.5kg・m(103.0N・m)まで高められた。
さらにデビュー当初はなかったオートマ仕様の3ATモデルを追加設定。5MTとあわせてトランスミッションが2種類となった。
内装ではシート表皮とステアリングデザインを刷新。インテリアデザインもわずかながら変更。
見た目は変わらないものの新エンジンと3ATの採用により前期とはフィーリングや仕様が異なる点が後期の特徴である。
アメリカ25年ルール解禁で価格が高騰・後期モデルも上昇傾向
2016年からカプチーノもアメリカへの輸入解禁となり、さらに近年はアメリカ国内でのカプチーノの人気上昇も手伝って価格が高騰傾向にある。
2016年当時は100万ドル程度だったカプチーノが、2021年では500万ドル~600万ドルまで上昇しており、今後はさらに値段があがってもおかしくはない。
その影響を受けて日本国内の中古車価格も上昇している。修復なし、10万キロを越える個体でも100万円以上。10万キロ以下なら150万円ほどの値段が付くこともあり、そのアメリカでの人気ぶりの影響をもろに受けているモデルだ。
近年の円安傾向からも以前よりアメリカ人バイヤーが買いやすく、海外輸出しやすくなっている。アメリカ人気がさらに高まれば日本国内の中古車価格も今後はさらに上昇する可能性も。
特に今後はそれまでの前期モデルに加えて、新車販売から25年経過した後期モデルも輸出可能となりカプチーノ後期が上昇傾向にある。
なお、高いのは5MTモデルで、後期型で搭載されたATであればそこまで高くはない。ただしこの時代のATは3速しかない3ATで、高速道路などでスピードを出すと回転数が高くなりがち。
そのためできるだけ5MTモデルをオススメする。
軽自動車ABCトリオの由来とカプチーノ
バブル期に発売された軽自動車のうち、それぞれの頭文字を取って「軽自動車ABCトリオ」と呼ばれる場合がある。
AはマツダのAZ-1、BはホンダのBeat(ビート)、CはスズキのCappuccino(カプチーノ)である。
いずれもバブル期ならではの本格スポーツカー思考のモデルで、ボディスタイルも室内空間もエンジン性能、走行性能の現行の軽自動車とは一線を画する性能で今なお根強い人気がある。
特に近年はいずれのモデルも25年ルール適用でアメリカ輸出可能となり、現地で人気が出たりアメリカ以外の外国でもマニア層からの需要があって高値傾向だ。
特にAZ-1に関しては状態が良いものだと300万~400万円にもなる場合があり、国内中古市場へ大きな影響を与えている。
頭文字Dやグランツーリスモの影響で海外でも有名に?
カプチーノは海外でも人気の漫画・アニメ「頭文字D」の作中に登場したり、レースゲームの「グランツーリスモ」のも登場するなど、日本以外に海外の漫画・アニメ、ゲーム好きにも知名度がある車種。
また、軽自動車は基本日本でしか売られてないローカルな車のため独特の外観と小さいボディサイズに本格的な走行性能からマニア心をくすぐり、カプチーノは海外からの需要も増えてきている。
後期型カプチーノの特別仕様車とグレードの違いなど
後期カプチーノのグレードはベースグレード1つのみ。廉価グレードや上級グレードの区別はなく、3ATか5MTの違いのみ。
前期カプチーノでは「リミテッド」が3回にわたって設定されたが、後期モデルでは特別仕様車の設定が一度もなく1998年に生産を終了した。そのため後期カプチーノの特別仕様車は存在しない。
後期型カプチーノのエクステリア(外装)
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フロントデザイン。前述のとおり外観は特に変更点はない。スポーティーなプロジェクターヘッドライトを装着し、小さいながら迫力あるフロントデザインとなっている。
ボンネットのスズキSエンブレムは旧タイプの溝入タイプ。
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この時代の軽自動車としては珍しいスポーティーなプロジェクターヘッドライトを標準装備。小さいながら迫力あるフロントデザインとなっている。
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サイドから。このあたりも同様に外観の変更点はない。カプチーノ独特のロングノーズ&ショートデッキが特徴的なステアリングを生み出している。
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ルーフは手動着脱式の「3分割式デタッチャブルトップ」。全部で着脱パターンは4通り(4WAYオープントップ)となる。
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足元は14インチアルミホイール。サイズは165/65R14 。
デザインそのものは同じだが、後期型では微妙に小変更され、スポークの本数が前期の7本から後期では6本となった。
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リア。このあたりも共通だ(写真のものは純正オプションのリアスポイラーを装着)。
エンジン・機能装備・安全装備など
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エンジンは前述のとおりオールアルミ製K6A型3気筒12バルブDOHCインタークーラーターボエンジン。
同年代のアルトワークスにも採用されたエンジンで、最大出力は64ps(47kW)/6500rpm、最大トルクは10.5kg・m(103.0N・m)/3500rpmとなる。
エンジンが軽量化されたことにより、前期よりも車重が10kg軽くなっている。
トランスミッションは5MTまたは3AT、駆動方式はFRのみとなる。メーカーオプションとして運転席エアバック、3チャンネル4センサーABS、リミテッドストップデフ(LSD)を3点セットで設定。
フロントベンチレーティッドディスクブレーキ+リアディスクブレーキ、サイドドアビームは標準装備となっている。
カプチーノの軽自動車税について 金額は?年いくら?
カプチーノの軽自動車税は年12,900円。これは新車登録から13年経過した軽自動車ゆえに重課税制度が適用されるためで、旧時代の乗用モデル・年7200円や現行の10,800円よりも少し高い。
他の軽自動車ABCトリオも同じく新車登録から13年以上経過しており、ビートもAZ-1も年12,900円。
また車検時の自動車重量税も若干高くなり、年6,600円から年8,200円に引き上げられ、18年以上では年8,800円となる。
例外的に貨物登録だった旧規格時代のアルトワークスは重課税でも軽自動車税が安く、年6000円となっている。
後期型カプチーノのインテリア(内装)
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インパネ。ほぼ前期と変わらないが
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運転席エアバックを装着するとステアリングが専用のものに変更される。スピードメーターは前期と同じだ。
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5MTのシフトノブ。これもデザインは前期と同じ。
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シートはセミバケットシート。形状は同じだが後期ではシート表皮が変更されている。
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トランクオープン時。
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トランク内部。ちょっとした荷物は乗るが基本はおまけ程度な広さと考えたほうが良い。
後期型カプチーノの総評
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カプチーノの後期型はK6Aエンジンにより加速のフィーリングが変更されたこと、3ATに採用によりそれまでより広い購入層をターゲットにできるようになった点が主な特徴だ。
エンジンに関してはK6Aターボ全般に言えるが中速トルクが太くなり逆に高回転域が伸びなくなったため、それまでのF6Aと比較して好き好きが別れる点である。
街乗りであれば扱いやすいエンジンだがサーキットメインだったりチューニング前提となるとF6Aに軍配があり高年式といえど前期型のほうが人気があったりする。
後期型カプチーノは主に街乗りや郊外のドライブメインでチューニングもライトチューン程度といった位置づけが良いだろう。
後期型カプチーノの中古価格は前期よりも高く、プレミアム価格がつくことも…
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後期型カプチーノの中古市場では製造から20年近くにも経過するモデルでありながら前期型と並んで高値で取引されている。
これは2023年6月現在でも「軽自動車&FR&ターボ&5MT&スポーツカー」という位置づけのモデルが存在しないためである。また、少しでも新しい方がボディなど車の状態が良かったり、エンジンも特性が異なるゆえに走行距離によってはプレミアム価格が付く状況だ。
購入の際はジムニーのように趣味性がはっきり出るモデルで、気軽には買えない1台だが予算に余裕があるのなら税金も普通車より格段に安いので1/1ミニカー的な楽しみ方ができるモデル。
ただ、古いモデルがゆえのトラブルは多々ありそれを許容できる人のみ購入すべき1台でもある。
無難に故障を機にせず2シーターの軽スポーツを楽しむならホンダ・S660か、ダイハツ・コペンあたりがオススメ。古い車を買う人のほとんどは車に対する知識や理解のある人だと思うので大丈夫だとは思うが、足車のように乗りっぱなしの人はカプチーノのは避けるべきである。
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