AZ-1はマツダ系列のオートザム店で販売されていた2シーターの軽自動車。
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マツダ AZ-1とは?
1992年10月登場のマツダオートザム・AZ-1。
軽自動車史上の中でも唯一なガルウィングを標準装備する小型スーパーカーのような外観とFRPを多用した軽量ボディ。ミッドシップレイアウトに2代目アルトワークス譲りのターボエンジンを搭載したMRの軽スポーツである。
いわゆる平成の軽自動車ABCトリオのAにあたるモデルで、3車種の中では最も個性的な1台である。
現在のマツダの軽自動車は完全なスズキOEMで、オリジナルモデルのイメージが薄いがこの時代はスズキからエンジンやプラットフォームの供給を受けて、ボディや内装だけは自社生産していた。そのためAZ-1以外にもアルトOEMの2代目キャロルが専用ボディのオリジナル仕様となっている。
特にガルウィングのためにボディ重量が増えてしまう欠点を補うため、AZ-1のボディはFRP製でスケルトンモノコックという特殊フレームを採用し、ガルウィング装着車としては脅威の720kgとなっている。
また、AZ-1はボディがない状態でも走行可能で最近でいうところの2代目コペンのようなフレームとなっていた。
そしてエンジンはアルトワークスと同じF6Aの3気筒DOHCインタークーラー付きターボエンジンをボディ後方に搭載し後輪を駆動するMR方式を採用。
トランスミッションは5MTのみを設定する硬派な仕様で、その独特なスタイリングに軽量ボディ、地を這うような低い全高に本格的なターボエンジンとビートやカプチーノに負けない魅力のマイクロスポーツカーとして販売されていた。
AZ-1の特別仕様車、TYPE L、マツダスピードバージョン、M2-1015とは?違いなど
AZ-1はデビュー前はかなり注目されたモデルだったが、いざ販売すると硬派すぎるガチガチの仕様やバブル崩壊の影響もあってあまり売れず、マツダは在庫を抱える事態に陥った。
不人気ゆえの販売促進や在庫整理のため、販売終了までに特別仕様が3度設定された。順番に「TYPE L」、「マツダスピードバージョン」、最後が「M2-1015」である。
「TYPE L」はオプション設定の快適装備などが付いた物で外観の変化は無かったが、「マツダスピードバージョン」と「M2 1015」は専用パーツにより、よりスポーティな雰囲気が与えられ、希少なAZ-1の中でもさらに価値が高い特別仕様となっている。
TYPE L
1993年1月設定の特別仕様車。
外観の違いは無いが快適装備などなどが充実しつつ、プラス10万円アップで買えたお買得仕様。
TYPE Lではベースモデルに追加で
- MOMOステアリング
- MOMOシフトノブ
- カセットステレオ
- サブウーファー
- サイドシルハンドステップ
- ENKEI製アルミホイール
などが標準装備されていた。
マツダスピードバージョン
1994年2月~設定の特別仕様車。
マツダスピードバージョンではエクステリアに専用の大型エアインテーク付きボンネット、エアロバンパー、大型リアスポイラーを装着し外観に迫力を与えた特別仕様車。
なお、マツダスピードバージョンには販売された時期によってバージョン1、バージョン2、バージョン3と若干の違いがある。外観はほぼ同じだが、若干仕様が異なる。
AZ-1 マツダスピードバージョン1
バージョン1は1993年6月販売で限定50台。
ボディカラーは「クラシックレッド」、「サイベリアブルー」の2色。MAZDA SPEEDのサイドステッカーなし。
AZ-1 マツダスピードバージョン2
バージョン2は1993年10月販売で限定100台。
ボディカラーは「クラシックレッド」、「サイベリアブルー」、「シルバーストーンメタリック」の3種類でサイドステッカーあり。
AZ-1 マツダスピードバージョン3
バージョン3は1994年2月販売で限定100台。
ボディカラーは「サイベリアブルー」を廃止し、入れ替えで「ブリリアントブラック」を設定。
その他「クラシックレッド」、「シルバーストーンメタリック」を含めた全3色。
サイドステッカーの文字が白地に中貫の「MAZDA SPEED」となり、アルミホイールがオプション設定されていた。

M2-1015
1994年5月設定の特別仕様車。
当時マツダのグループ会社であった「M2」社が企画したAZ-1のカスタムモデルで丸型フォグランプを内蔵した専用ボンネットや大型リアスポイラーが特徴的なより個性あふれる外観が特徴の特別モデル。
外装パーツに
- 専用ボンネットフード
- 専用フォグランプ
- 専用フロントバンパー
- 専用リアウィング
- 専用エンブレム
- 専用アルミホイール
- ブラックアウト・リアエンドパネル
- ドアミラー&サイドシル&リアバンパーをボディ同色に塗装
としAZ-1やマツダスピードバージョンとも異なる外観を演出。
販売不振のAZ-1をなんとかすべく(売れ残り在庫のAZ-1の外装をそのまま付け替えて…)販売された特別仕様車。

アメリカ25年ルール解禁でAZ-1の中古価格が高騰しプレミアムカーに
元々生産台数が少なく、国内市場でも中古価格は安くなかったAZ-1。
ここ最近は2016年から25年ルール適用でAZ-1の初期モデルのアメリカへの輸出が可能となったあたりから急激に価格が高騰し、現在では状態のいいものであれば300万円前後の値札が付くプレミアムカーとなっている。
これは日本でしか販売されなかった日本車(JDM:Japanese domestic market)が日本のアニメやゲーム、ワイルドスピードなどの映画の影響でアメリカで人気となっており、その筆頭としてGT-Rの高騰がある。
AZ-1も軽自動車という日本でしか販売されなかったモデルで、その小さくて可愛いボディにデロリアンのようなガルウィング、後輪駆動、5MTターボなど唯一無二点からも人気の理由となっている。それゆえに国内市場の中古価格もこれに押し上げられ、高値傾向となっている。
AZ-1のエクステリア(外装)
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フロントデザイン。大きな丸目ヘッドライトにエアインテークのエアダクト付きボンネットで愛嬌がありつつも勇ましい顔つきとなっている。
エンジンやミッションの供給元であるアルトワークスに通じるところがある。なお、特別仕様車の「マツダスピードバージョン」や「M2」ではノーマルとは異なる専用のボンネットとバンパーが組み合わされる。
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サイドから。ボンネットからフロントガラスまでゆるやかに傾斜しリア部分で凹む美しいボディラインが与えられている。
昨今の軽自動車では見られないスタイリングでこれを軽自動車で実現するあたりバブルカーといったところだろうか。全高もかなり低く「1150mm」。これは当時の軽自動車ABCトリオの中で最も低く、軽自動車史上の中でも最も低い全高だ。
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AZ-1最大の特徴である純正ガウルウィングはこのように開閉する。なお、リアにエンジンを搭載する関係でリアのボディにはエアインテークが設けられている。
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一方で窓ガラスはほとんど開閉せず駐車場の自動発券機の券が取れないぐらい使いづらい。このあたりは走りに重点を置いた設計のため仕方ない部分か。
この小さな窓ガラスゆえに夏場はエアコンがないと地獄の車内に…開放的なイメージがあるがフルオープンのカプチーノやビートと違って開口部が少ないため、とても暑くなる。
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リア。フロント同様丸目のコンビランプで愛嬌がありつつもスーパーカーを連想させるデザインとなっている。
エンジン・機能装備・安全装備など
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エンジンはF6A型3気筒DOCHインタークーラー付きターボエンジン。同年代のアルトワークスと同じエンジンでこれをリアに搭載。
最高出力は64ps(47kW)/6500rpm、最大トルクは8.7kg・m(85.3N・m)/4000rpmを発生する。トランスミッションは5MTのみで駆動方式はミッドシップとなる。
そしてABSはオプション設定で、エアバッグの設定は一切なしの硬派な仕様となっていた。
AZ-1は危ない?危険?事故率が高い理由
AZ-1はリアにエンジンを搭載し、リアを駆動するMR方式レイアウトを採用しているが、それゆえにコーナリングがクイックで曲がりすぎるという問題がある。
また、前後重量配分は44:56に加えて車重も720kgと軽ボンネットバン(アルトバン)なみの軽さ。
リア側が重たくフロントは軽いAZ-1は低速域では問題ないが高速走行すると、リア荷重にショートホイールベースゆえにフロントが浮きやすく速度に比例してフロントの接地感がどんどん無くなる。
この状態でコーナーを曲がったり、車線変更しようとするとスピンしやすいのは想像のとおり。そのためAZ-1の運転はかなり難しく、危なかったり実際死亡事故率も高いモデルであった。AZ-1で高速道路、特に雨の日など滑りやすい路面の際は特に注意されたい。
またボディ後部の重量が前部よりも重たく、リア駆動のため高速道路などでスピードを出すとフロントがわずかに浮いてくるという不安定な部分もある。軽量ボディにリアエンジン・リアドライブゆえの問題点も。
AZ-1はただでさえ小さいボディで軽量のため事故った時のダメージはかなり大きい。それこそ大型トラックなんかと事故ったら一瞬で…。
AZ-1のインテリア(内装)
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インパネ。AZ-1では狭い空間を有効利用するため、シフトノブの上にエアコン操作パネルを縦置きに配置し、限られた空間で機能性を確保している。
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5MTのシフトノブ。ATは非設定でマニュアルトランスミッションのみ。
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スピードメーター。タコメーター付きで背景がホワイトのスポーティなデザイン。回転数が中央に配置されるスポーツタイプで、かなり本格的だったのが伺える。
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シートはバケットシートタイプ。
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ラゲッジルーム…は残念ながらAZ-1には無く荷物がほとんど載らない。
ミッドシップ車はトランクルーム部にエンジンがあり、かわってボンネット内部にラゲッジルームがあることが多いが、AZ-1ではボンネットにスペアタイヤを搭載するための空間が用意されているものの、衝突安全性の問題からこの部分が使えなくなり市販時には運転席後ろのわずかなスペースに移動。このため1名乗車時は助手席程度である。
なお特別仕様車のマツダスピードバージョンやM2でも同様で、専用ボンネットであってもスペアタイヤは運転席後ろとなる。
AZ-1の評価
AZ-1の総評
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AZ-1はバブル期の終盤に登場した軽自動車ABCトリオの中でも最も硬派なモデルである。
全高は最も低くスーパーカーの代名詞でもあるガルウィングを標準装備し、エンジンはアルトワークス譲りのターボエンジンをリアに搭載しミッドシップとするなど普通車のスポーツカーでも珍しい機構をふんだんに取り入れた「軽自動車スーパーカー」的なモデルであった。
その一方で居住性はカプチーノやビートにも劣り、実用性が重視されがちな軽自動車としては異端児的な存在で、新車価格も150万円からと趣味性の強いモデルであった。ゆえにデビュー当初は良かったがすぐさま販売不振に陥り1年後には生産休止。あまった在庫をはけるためパーツを交換して作られた「マツダスピードバージョン」など特別仕様車が設定されていった不運なモデルであった。

中古市場の価格は高騰 新車価格の倍以上の固体も…
中古市場ではその希少価値から軽自動車ABCトリオの中ではもっとも高値となりやすいモデルで、20年以上前の車にもかかわらず最低でも100万円以上、程度の良いものは300万前後の値が付くプレミアムカーとなっている。
また以前よりもかなりタマ数が減り、アメリカをはじめ海外流出したものと推測される。
年式からくる経年劣化など旧車の維持のような手間のかかるモデルだが外観や走行性能は独特のものがあり、海外のマニアを含め好きな人にはたまらない1台かもしれない。
もしAZ-1を持っている人で程度の良い固体であれば、中古買取で高い海外需要からかなりの高値がつく可能性がある。
OEMモデル スズキ・キャラ
なお、AZ-1はエンジン供給元のスズキへOEM供給され「スズキ・キャラ」として販売されていた。
スズキ版との違いはエンブレム程度で、ほかに角型フォグランプ内蔵バンパーが標準装備、寒冷地仕様が非設定になるなど、若干のい違いがある。
AZ-1よりもスズキ版のほうが希少のため、気になった人はこちらもチェックして欲しい。

コメント
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AZ-1はノーマル仕様車でもスペアタイヤはボンネットにないですよ。販売時はすべてのAZ-1は運転席後ろにスペアタイヤがありました。ボンネットにスペアタイヤがある車は所有者が手を加えた車です。
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ご指摘ありがとうございます。形状からここにスペアタイヤがあるものかと思いました。どうやらフロントにスペアタイヤがある場合は改造によるものみたいですね。