パレットはスズキのトールワゴン型軽自動車。スペーシア(MK23S)の前身モデルである。本稿ではモデル末期に設定された特別仕様車、「ISセレクション」を扱う。
概要
2008年1月に登場したスズキのパレット。それまでのワゴンRよりも全高が高く、エンジンをボンネット内部に収めるトールワゴン型としてスズキでは初のモデルであった。スズキ自身は公言していなかったが、似たような全高とボンネットにエンジンを持つトールワゴン型のダイハツ・タントのライバル車種であることは明らかであった。
外観は室内空間の広さを感じさせるロングルーフデザインにヘッドライトから続く伸びやかななベルトラインの採用で、全長や全幅こそそれまでのワゴンRなどと変わらないものの、視覚的にもゆとりあるデザインとした。また、すべてのピラーをブラックアウトととし、連続したガラスエリアによる開放感も演出した。
パッケージングはホイールベース2400mmの新設計プラットフォームに2025mmの室内長を確保。後席の居住性を向上させるととももにハイルーフ化で1365mmの室内高を確保。デビュー当時としてはトップクラスの室内高をほこった。
便利機能としては独立したボンネットにエンジンを収めるボンネット型軽自動車としてはクラス初となる後席の両側スライドドアを全車に採用(当時のタントは片側スライドドアのみ)。また、上級グレードでは携帯リモコンから開閉操作可能なパワースライドドアとスライドドアクローザーを採用した。
快適装備ではエアコンの冷風を利用する保冷機能付き助手席アッパーボックスや豊富な収納スペースを用意。上級グレードでは抗アレルゲン+カテキン・エアコンフィルターを標準装備とし、全グレードで自発光式メーターを採用。上級グレードではタコメーター付きの3連タイプとした。
先進装備としてはキーレスプッシュスタートシステムを廉価グレードを除いて標準採用。上級グレードではディスチャージヘッドランプやオートライトシステムも標準装備とした。また、最上級のTSグレードでは専用チューニングを施したステレオと10個のスピーカーを装備したハイグレードサウンドシステムも採用した。
エンジンは従来通りのK6A型自然吸気エンジンとインタークーラー付きターボエンジンの2種類に4ATを組み合わせたものを採用。
ただし、モデル中盤の2009年9月一部改良(2型)では電子制御スロットルの採用と上級グレードに副変速機付きCVTの採用で燃費が向上。
2010年5月仕様変更ではグレード体系整理により全グレードでCVTのみとなった。さらに2010年8月の一部改良(3型)ではこの副変速機付きCVTを改良。ロックアップ領域を拡大しメカニカルロスの低減も行ったことでさらに燃費が向上した。
2012年2月の一部改良ではCVTオイルを低粘度タイプに変更したことでCVT内部の摩擦抵抗を低減。これも燃費アップにつながった。最後の改良となる2012年6月(4型)ではカスタムモデルのパレットSWのXSグレードでアイドリングストップシステムを追加しさらなる燃費向上を図った。
パレット(MK21S)ISセレクションの特徴とリミテッドなどとの違い
そのパレットに2012年6月。上述の4型改良時に設定された特別仕様車が本稿で扱う「ISセレクション」である。
ISセレクションはミドルグレードのLグレードをベースにパレットSWのXSグレードのみ搭載されていた「アイドリングストップシステム」や各種便利装備、ワンポイントアクセントをプラスして日常の使い勝手を高めたモデルである。
具体的には外装にフロントメッキグリルを採用。後部左側のパワースライドドアにフルオートエアコン、バックドアに「IDLING STOP」エンブレムを貼り付けた。
内装では撥水加工を施したブラウンシート表皮&ドアトリム表皮の採用や、抗アレルゲン+カテキン・エアフィルター付のオートエアコンを採用してミドルグレードベースでありながら上級グレードに匹敵する豪華装備を少し与えつつ価格も抑えた特別仕様車となっていた。
エクステリア
フロントデザイン。ISセレクションではパレット特別仕様車(リミテッドやリミテッドⅡ)用のフロントメッキグリルを標準装備。
ターボモデル用のものと比べるとそこまで自己主張の強いデザインではないが、オシャレや上級感漂うメッキグリルで特別感を演出した。これ以外はベースモデルと同じでヘッドライトはハロゲンランプとなる。
サイド。外観はベースモデルと同じ。ISセレクション仕様としてLグレードでは非装備の後席左側パワースライドドアが標準装備となる。
足元は13インチフルホイールキャップ。
リア。このあたりもほぼ同じだがISセレクションではノーマルパレット唯一のアイドリングストップシステム採用により専用エンブレムの「IDLING STOP」エンブレムがバックドア右下に付く。
ISセレクションとは付いていないもののこのエンブレムの有無がISセレクションなのかを見分けるポイントだ。
エンジン・機能
エンジンはK6A型直列3気筒DOHC自然吸気エンジンのみ。最高出力は54ps(40kW)/6500rpm、最大トルクは6.4kg・m(63N・m)/3500rpm。トランスミッションは(副変速機を内蔵した)CVTのみで駆動方式もFFのみとなる。
このほかISセレクション仕様としてノーマルには無い「アイドリングストップシステム」を標準装備。
インテリア
インパネ。ステアリングはウレタンタイプ。
右側のスイッチ部には後席左側パワースライドドアの開閉スイッチが。
エンジンスタートはLグレードベースのためプッシュスタート式。
スピードメーターは自発光式タイプ。ただしタコメーターはなし。3型以降のためエコドライブインジケーターが追加されている。
エアコンはISセレクション仕様として上級グレード用の抗アレルゲン+カテキン・エアフィルター付オートエアコンとなる。
フロントシートはベンチシートタイプ。ISセレクション仕様としてブラウンカラーのファブリックシート(撥水加工)表皮となる。また、ドアトリムクロスもブラウンカラーとなる。
リアシート。スライド機構付き。
ラゲッジルーム。
リアシートを倒した状態。
まとめ
パレットのISセレクションは外装に特別仕様車用のフロントメッキグリル、左側パワースライドドアを。内装ではブラウンカラーのファブリックシート&ドアトリムクロスにアレルゲン&カテキンエアフィルター付きオートエアコンを標準装備とするなど安いグレードベースでありながら上級グレードに匹敵するような快適装備を与え日常での利便性を高めた特別仕様車である。
パット見はフロントメッキグリルの追加程度なのでそこまで変化していないが便利&快適装備がプラスされているためノーマルのLグレードやそれ以前にあったGグレードよりも魅力的なモデルとなっている。また、新車価格もターボモデルからひとつ下の自然吸気エンジンの最上級グレードよりも少し安く設定されており、価格面でも良心的な特別仕様車であった。
中古市場ではISセレクションそのもののタマ数がかなり少ないのだが、ノーマルの安いグレードでは物足りない人などに嬉しい1台である。車重のせいで後継モデルのスペーシアより燃費が悪い点や、このモデルFF&ノンターボのみなど仕様も限定されているため購入層がかなり阻められるがそれが問題ないのであれば十分選択肢となりえるだろう。
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