フレアワゴンはマツダのトールワゴン型軽自動車。スズキ・パレットのOEMモデルである。本稿では初代のMM21S系を扱う。
出典:マツダ認定中古車
マツダ 初代・フレアワゴンとは?
2012年6月にスズキ・パレットのOEM供給を受けてデビューしたマツダ・フレアワゴン。
それまでのマツダの軽自動車はAZワゴンのようにオートザムを意味する「AZ」という名前が先頭に付いていたが、このフレアワゴンからはそれを廃止。
イメージのリフレッシュも兼ねて「フレアシリーズ」の第1弾として誕生した。
フレアワゴンはそれまでのマツダのランナップにはないスーパーハイト系スライドドア付きの新ジャンル軽自動車として登場。
スズキでいうところのスペーシア(旧パレット)、ダイハツはタントに相当する車種で、独立したボンネットにエンジンを持つタイプでありながらゆとりある1,365mmの室内高と2070mmの室内空間を確保。大人4人がゆったりと乗れるパッケージングを実現した。
出典:マツダ認定中古車
便利機能としては後部座席のドアを両側スライドドアとしグレード別で左側をリモコン操作でも開閉可能な電動パワースライドドアとするなど利便性も向上させている。
その他快適装備として保冷機能付きアッパーボックス、プッシュスタート式エンジンスタートなどもグレード別で標準装備とした。
快適装備ではエアコンの冷風を利用する保冷機能付き助手席アッパーボックスや豊富な収納スペースを用意。
上級グレードでは抗アレルゲン+カテキン・エアコンフィルターを標準装備とし、全グレードで自発光式メーターを採用。上級グレードではタコメーター付きの3連タイプとした。
先進装備としてはキーレスプッシュスタートシステムを廉価グレードを除いて標準採用。上級グレードではディスチャージヘッドランプやオートライトシステムも標準装備とした。
また、最上級のTSグレードでは専用チューニングを施したステレオと10個のスピーカーを装備したハイグレードサウンドシステムも採用した。
エンジンは従来通りのK6A型自然吸気エンジンとインタークーラー付きターボエンジンの2種類。トランスミッションは副変速機内蔵のCVTのみとなる。
OEM元のパレットはデビュー当時4ATがあったが、フルモデルチェンジ直前の4型が供給されたことによりそれまでのパレットにおける改良がすべて適用済みとなる。
エンジンは電子制御スロットルを採用し副変速機内臓のCVTははロックアップ領域を拡大によるメカニカルロスの低減、CVTオイルを低粘度タイプに変更によるCVT内部の摩擦抵抗を低減などが適用されている。
また、特別仕様車のISリミテッドでアイドリングストップシステムを標準装備とし燃費向上を図った。
マツダ・初代フレアワゴンとスズキ・パレットとの違い
初代フレアワゴンとパレットとの違いはエンブレム程度で、基本的な内外装は同じ。ただしグレード構成はパレットよりも少ない。
またカスタムモデルの「パレットSW」に相当するグレードが非設定で、初代フレアワゴンでは標準モデルのみとなる。
ボディカラーもフレアワゴンでは「クリアベージュメタリック」が非設定。
初代フレアワゴンのグレード一覧 LS、XS、TS、ISリミテッドの違いなど
初代フレアワゴンのグレード展開はベーシックな「LS」、上級「XS」、ターボ搭載最上級「TS」3種類。
特別仕様車には「ISセレクション」が設定されていた。
LS
初代フレアワゴンのベーシックグレード。パレットの「L」グレードのOEM。
後期モデルがベースのため、パレットのGグレードよりも装備が豪華。
キーレスプッシュエンジンスタート、後席後側にスライドドアイージークローザーなどを標準装備する。
XS
初代フレアワゴンの上級グレード。パレット「X」グレードのOEM。
キーレスプッシュエンジンスタートとサイドエアバッグ、左側後方パワースライドドアと両側イージークローザー、フルオートエアコンを標準装備する。
TS
初代フレアワゴンの最上級・ターボ仕様。パレット「T」グレードのOEM。
XSをベースにターボエンジンやメッキグリル、エアロパーツなどを採用した上級モデル。
後期モデルがベースのため、パレットのTSグレードとは異なり、アルミホイールや3眼式メーターなどは廃止され、コストダウンされている。エンジンは64馬力仕様。
特別仕様 ISセレクション
2012年6月設定の特別仕様車。パレット「ISセレクション」のOEM。
ミドルグレードのLSグレードをベースにカスタムモデルの最上級グレード「パレットSW・XSグレード」のみ搭載されていた「アイドリングストップシステム」や各種便利装備、ワンポイントアクセントをプラスして日常の使い勝手を高めたモデル。
外装では専用フロントメッキグリルを採用。後部左側のパワースライドドアにフルオートエアコンを標準装備。
内装では撥水加工を施したブラウンシート表皮&ドアトリム表皮の採用や、抗アレルゲン+カテキン・エアフィルター付のオートエアコンを採用。
ミドルグレードベースでありながら上級グレードに匹敵する豪華装備を少し与えつつ価格も抑えた特別仕様車。
エクステリア
出典:マツダ認定中古車
フロントデザイン。パレットと同じく大きな斜めの切込みが特徴的なヘッドライトに大型グリルが組み合わされ少し個性的な顔つきとなっている。
同年代のタントと比べると少し挑戦的なデザインで好みが別れるところ。なお、AZワゴン時代ではデフォルメが行われてが今回のフレアワゴンではマツダ仕様としての専用パーツは特になく、エンブレムの変更のみとなる。
出典:マツダ認定中古車
サイド。ボンネットが短くそこから上方向にめいいっぱい大きくなるハイルーフ&ロングルーフデザインとなる。マツダ仕様としての変更点は特になく、サイドビューはパレットとまったく同じ。
上述のとおり両側はスライドドア(イージークローザー付き)を標準装備とし、左側後方は上級グレードでリモコン操作可能な電動パワースライドドアとなる。
出典:マツダ認定中古車
足元は全グレードでフルホイールキャップのみ(アルミホイールは未設定)。ただしタイヤサイズは自然吸気エンジンが13インチ。ターボ仕様が14インチとなる。
出典:マツダ認定中古車
リア。こちらもフロント同様、エンブレム類が変更されれる程度でマツダ仕様としての専用パーツはなし。
出典:マツダ認定中古車
エンブレム類(FLAIR WAGON)はベースモデルとは左右反転し、バックドア左下に付く。
コンビランプはコストカットのためか曇っていてスタイリッシュ感にかける部分があるがここはカスタムで対応可能だ。
正統派ならカスタム版のパレットSWのクリアーテールを用いる方法か、あるいは社外品もリリースされているので、検討の価値ありだ(パレット用でもOEMモデルなのでポン付けでフレアワゴンに適合する)。
エンジン・機能装備・安全装備など
出典:マツダ認定中古車
エンジン直前3気筒DOHC自然吸気エンジンとインタークーラー付きターボエンジンの2種類。
最高出力は自然吸気エンジンが54ps(40kW)/6500rpm、最大トルクは6.4kg・m(63N・m)/3500rpm。
ターボエンジンが最高出力64ps(47kW)/6000rpm、最大トルクは9.7kg・m(95N・m)/3000rpm。
トランスミッションはスズキ版のパレットのデビュー当初4ATのみだったが、OEM供給時には副変速機内臓のCVTに全グレードですべて置き換わった。駆動方式はFFまたは4WD。
これ以外ではベースモデル同様にフロントスタビライザーを標準装備し、背の高い軽自動車でありがちなカーブ時のロールを低減しつつ快適な乗り心地を確保。
また、エンジンルーム内にエンジンからの放射音を低減する吸音処理を施したことで防音・防振対策ボディとした。
インテリア
出典:マツダ認定中古車
インパネ。ベージュとブラックのコントラストでプラスチックの質感は安っぽさがあるものの、曲線を用いて上品なイメージとしている。
助手席側にはエアコンの冷風を利用する保冷機能付アッパーボックスを備える。
出典:マツダ認定中古車
スピードメーターは全グレードでタコメーター無しの自発光式メーターとなる。
出典:マツダ認定中古車
エアコンは上級グレードでオートエアコンタイプとなる。
出典:マツダ認定中古車
プッシュスタート式エンジンスタートも上級グレードに標準装備。
出典:マツダ認定中古車
左側後方の電動パワースライドドアはLSグレードを除いて全グレードで標準装備。このボタンのほか、携帯リモコンからも操作可能だ。
出典:マツダ認定中古車
フロントシートはベンチシートタイプ。ベージュ系の明るい内装色となる。
出典:マツダ認定中古車
リアシート。スライド機構付き。
出典:マツダ認定中古車
ラゲッジルーム。他のモデルと同じくリアシートを倒すと広大な荷室が生まれる。
まとめ
初代のフレアワゴンはマツダとしては初となる新ジャンルの軽自動車として登場したモデルである。それまでにない広大な室内空間やスライドドアなど利便性の高さがウリのモデルで、ダイハツのタントなど売れ筋モデルをラインナップに加えるものであった。
その一方でそれまでAZワゴンなどに見られたマツダオリジナルの変更点は一切与えられず違いはエンブレムのみとなり、スズキ版とあまり変わらない魅力減なモデルとなっている。さらにカスタム版のパレットSWに相当するモデルはマツダ版にはなく、かなり大人しい仕様になっている。
さらに付け加えると同じOEMの日産・初代ルークスでは専用グリルがあり、パレットSWに相当するカスタムモデル、ルークスハイウェイスターもあるのにマツダはエンブレムの変更のみというモデルに対する売る気の無さが伝わってくる1台となっている。
ただ、トヨタの軽自動車に代表されるようなエンブレム効果は健在なので、安っぽいスズキエンブレムよりもあまり街中で見かけないマツダエンブレムの付いた軽自動車としてみると少し雰囲気が変わってみえる部分もある。ゆえに、あえてこちらを選んでみるのも面白いだろう。
なお、初代フレアワゴンはOEM元のパレットが2013年3月にスペーシアとしてフルモデルチェンジした関係で生産期間はわずか9ヶ月の短命モデルであった。
このためパレットよりもフレアワゴンのタマ数が極端に少なく全体的に希少モデルとなっている。特にターボ仕様の「フレアワゴンTS」はそれが顕著で、レア中のレアと言っても過言ではない。
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