パジェロミニは三菱のSUV型軽自動車。本稿では初代H56AおよびH51A型に設定された特別仕様車、「アイアンクロス」を扱う。
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三菱・初代パジェロミニとは?
1994年12月(平成6年)に登場した三菱の初代・パジェロミニ。この時期はSUV(RV)が爆発的に大流行した時代で、三菱ではその代表格ともいうべき「パジェロ」がよく売れた時代だ。
この時に普通車のパジェロで培ったオフロード機能と軽自動車としての手軽さや経済性を融合し、新ジャンルのミニSUV(RV)として生まれたのパジェロミニである。
この手の車はすでにスズキが「ジムニー」として市場に数十年前からデビューさせ独壇場となっていたが、ジムニーが硬派なクロカンモデルだったのに対し、パジェロミニでは街乗りをメインとしたシティーユースなSUVとして市場に投入した。
その独壇場へ乗り込むために三菱は同社の象徴的な(クロカン)SUV車であるパジェロのブランドを全面的に使い、車名を「パジェロミニ」と命名(一般公募でも名前を募集したが無難な”パジェロミニ”となった)。
外観もパジェロを小さく軽自動車サイズに収めたデザインとした。かつてTBS系列で放送されていた「関口宏の東京フレンドパーク」では、最後の視聴者プレゼントで「パジェロミニ! パジェロミニ!」と連呼されていたことも懐かしい。
ジムニーよりもクロカン性能で劣る部分もあるものの、当時の軽自動車としては珍しくボディは大型断面フレームをビルトインしたモノコック構造の高剛性ボディが採用され、40km/h前面衝突時の乗員障害値規制をクリア。
エンジンは、これまた軽自動車としては珍しい1気筒5バルブを採用した4気筒DOHC 20バルブインタークーラーターボを縦置きに配置。
このターボエンジンは知る人ぞ知る三菱の4A30型ツインスクロールターボ付きDOHC4気筒エンジンで、同年代の7代目ミニカダンガンやブラボーGTでも採用されたパワフルなエンジンである。

さらに4WD機構としては路面状況に応じて走行中に2WD/4WDロー/4WDハイが切り替え可能な新開発のイージーセレクト4WDを採用。
足回りではフロントにはマクファーソンストラット式、リヤには5リンク式コイルスプリングのサスペンションを採用。
コックピットには電子方位計、高度計、外気温計、時計を組み合わせたマルチメーターなどただの足車的なそれまでの軽とは異なるRV機能を満載した。
また、万が一の衝突時にベルトをロックする3点式ELR付シートベルトを標準装備。SRSエアバッグシステムもオプションで用意し軽自動車のSUVとして当時の技術を惜しみなく注ぎ込んだ1台であった。
初代パジェロミニ・アイアンクロスとは?特徴と他との違い
その初代パジェロミニに特別仕様車第3弾として1996年10月に設定されたのが今回扱う「アイアンクロス」である。
「アイアンクロス」はスキーなどのウィンタースポーツを楽しむ人向けとした特別仕様車で、内外装でウィンタースポーツに特化した装備が与えられた。ちょうどジムニーでいうところの「ワイルドウィンド」や「FISフリースタイルカップリミテッド」に相当するモデルである。

ただし、アイアンクロスは2代目パジェロミニには設定されることなく、初代だけでしかもスキーブームが去った後の最長1年半程度のみの販売期間であった。そのため現存するアイアンクロスはかなり希少なモデルである。
アイアンクロスでは自然吸気エンジンのXRとターボモデルのVR-Ⅱをベースとし、エクステリアでは
- スキー&スノーボードに便利なルーフレール
- スノーボードキャリア
- アルミホイール
- UVカットガラス
- アイアンクロス専用スペアタイヤケース
- フォグランプ
- ストーンガード
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ボディカラーはピレネーブラック/レガードグレーとパルマーレッド/シンフォニックシルバーの2色のみの専用カラーを設定し、さらに専用サイドデカールを貼り付けた。
インテリアでは「アイアンクロス専用のシート表皮」と「専用ドアトリムクロス」を採用。
このほか寒冷地仕様とAM/FMカセットステレオ、マルチメーターを標準装備とし、ウィンタースポーツに特化させた特別仕様車となっていた。
アイアンクロスのエクステリア(外装)
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フロントデザイン。ベースはXRおよびVR-Ⅱ。これにアイアンクロス仕様としてフロントにはUVカットガラスと
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ストーンガード、フォグランプを標準装備。ウィンタースポーツで雪道を移動しても安心の装備とした。
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サイドから。アイアンクロス仕様としてルーフ部分にルーフレール&スノーボードキャリアを標準装備。狭いパジェロミニの室内ではなくルーブ部分にスキー板やスノーボード板を収納しやすいよう最初からルーフレールを標準装備としてる。
ボディカラーはアイアンクロス専用色のピンク&シルバーの「パルマーレッド/シンフォニックシルバー」、ブラック&グレーの「ピレネーブラック/レガードグレー」の2色(いずれもツートンカラー)のみとなる。

さらにアイアンクロスを示す専用デカールもセンターピラー付近に貼り付けた。
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アイアンクロス仕様として15インチアルミホイールも標準装備となる。タイヤサイズは175/80R15。
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リア。アイアンクロス仕様として専用スペアタイヤケースを標準装備とした(※写真のタイヤカバーは違うグレードのもの)。
エンジン・機能装備・安全装備など
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エンジンは上述の4A30型4気筒DOHC20バルブインタークーラーターボ(ツインスクロールターボ)付きエンジン(グレード名:アイアンクロスV)とその自然吸気エンジン(グレード名:アイアンクロスX)の2種類。
自然吸気エンジンのアイアンクロスXでは最高出力52ps(28kW)/7000rpm、最大トルク 6.0kg・m(58.8N・m)/5000rpm
ターボ仕様(アイアンクロスV)では最高出力64ps(47kW)/7000rpm、最大トルク 9.9kg・m(97.1N・m)/3000rpmを発生する。
これをエンジンルームに贅沢にも縦置きで配置される。
駆動方式は3ATまたは5MTで駆動方式はFRまたはパートタイム4WDとなる。パートタイム4WD仕様車ではイージーセレクト4WDが標準で備わり、路面状況に応じて2WD、4WD(ローまたはハイ)の3種類を選択可能だ。
なお、デビュー当初はパートタイム4WDのみの設定だったが、1997年5月マイナーチェンジでは2WD仕様車(FR駆動のみ)も追加設定された。ただしFR駆動仕様では自然吸気エンジンのみとなる。
これにアイアンクロスでは寒冷地仕様が標準装備となる。
アイアンクロスのインテリア(内装)
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インパネ。アイアンクロスではAM/FMカセットステレオと
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電子方位計、高度計、外気温計、時計が備わったマルチメーターを標準装備。
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エアコンはマニュアル式エアコン。
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ステアリングはウレタンステアリングホイール。
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スピードメーター。ノーマルと同じでタイプで露骨なデザインだ。当時の軽自動車としては珍しく、となっている。
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パートタイム4WD仕様車ではシフトノブ下の副変速機により駆動状態を変更可能だ(イージーセレクト4WD)。上から4WDのロー、真ん中で4WDのハイ。一番下が2WDとなる。4WD仕様車でも夏場のオンロード等で4WDが必要ない場合は2WDにしておくと若干燃費が良くなる。
一方で悪路などでスタックした場合は4WDロー(直結4WD)に切り替えると脱出が容易になる。
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フロントシートはセパレートタイプ。アイアンクロスセンター柄がアウトドア感あふれる模様の専用シート表皮となる。またドアトリムクロスもアイアンクロス専用品だ。
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リアシート。ヘッドレストは非装備。
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ラゲッジルーム。
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リアシートを倒した状態。
まとめ
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初代パジェロミニのアイアンクロスは、外装にスキー&スノーボードに便利なルーフレールやスノーボードキャリア、フォグランプ、ストーンガード等を標準装備。内装でもアイアンクロス専用内装を与え寒冷地仕様を標準装備とするなどかなりウィンタースポーツを意識した特別仕様車となっていた。
アイアンクロスが登場した1990年代はスキーやスノーボードが流行した時代で、特にスバルのレガシィツーリングワゴンに代表されるようなツーリングワゴンのリアにスキーやスノーボードを積んで遠くのスキー場まで走りに行くというレジャーが若者の間に流行した時代だった。
その流行を見て雪道に強いパジェロミニにも設定した特別仕様車だったが、登場した1997年はスキー&スノーボードブームが下火に急降下した時代で、それほどまでのヒットとはならなかった。
そのため中古市場では自然吸気エンジンが生産わずか10ヶ月。ターボ仕様でも1年半程度。スキーブームが終焉していたことも手伝ってあまり売れずかなりレアなモデルとなっている。
元々初代パジェロミニが20年以上前のモデルでタマ数が少なくなっている点もあるが、売れなかった特別仕様車という点も希少な理由となっている。さらに近年では海外に日本の中古車が輸出されるケースが増えており、冬に強いパジェロミニはロシア方面へ。25年ルール解禁でアメリカ方面に海外流出が多くなっている。
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