サンバートラックはスバルの軽トラック。本稿ではダイハツからのOEM版となった7代目のS200系およびS210系のサンバートラックについて扱う。
7代目 スバル・サンバートラックとは?
2012年4月に登場したのが7代目サンバートラック。スバルの軽自動車撤退発表後、スバルの軽自動車は順次ダイハツのOEMに切り替わっていった。
その中でもサンバーは一番最後までスバルで生産され続けていたが惜しまれつつも2012年3月にその生産を終了した。その一ヶ月後に登場したのが7代目サンバートラックである。
7代目サンバートラックは9代目ハイゼットトラックがベースとなったことにより先代よりも荷台長が80mm拡大。荷台の鳥居の張り出しが少なくなり機能性をアップ。ロープフックをあおりや荷台下に多数配置。使い勝手を向上。
キャビンはフルキャブ構造となったことで足元スペースが拡大。乗降性をアップし、インパネには収納スペースを多数配置。
最小回転半径も従来よりも0.2m短い3.7mとし、AWD車にはセレクティブAWD(パートタイム4WD)を採用。TCの5MT・AWDモデルと3方開ダンプにはハイロー切り替え機構付きとしリアデフロックも標準装備。
安全装備としては全グレード運転席エアバッグを標準装備。助手席エアバッグとABSはセットパックオプションとして設定した。
サンバートラックとハイゼットトラックとの違い
7代目サンバートラックは9代目ハイゼットトラックをベースとし、これにエンブレムの変更と専用のグリルを装備し差別化された。
そのためOEM後直後の7代目サンバートラックのみフロントデザインが差別化され、スバルオリジナルのデザインが採用されている。
これ以外にフロントのエンブレムとリア車名デカール、インパネのステアリングオーナメントが変更になる以外は基本的に同じ。
グレード構成は自社生産時代と同じグレードを引き継ぎ、TB、TC、パネルバン、ダンプに加えハイゼットトラックジャンボのOEMとなる新グレード、「グランドキャブ」を追加している。
7代目サンバートラックのグレード一覧 TB、TC、ハイルーフ、グランドキャブの違い
7代目サンバートラックのグレード構成は下から順番に廉価「TB」、ミドル「ハイルーフ」、上級「TC」、最上級「グランドキャブ」、特装車の「パネルバン」などが設定されていた。
特別仕様車として「ハイゼットトラック VS」に相当する「TBタフパッケージ」、「TCタフパッケージ」、「ハイルーフタフパッケージ」がある。
なお、ハイゼットトラックに設定のある農業者向けグレードの「農用スペシャル」は農協専売の「JAサンバートラック」があるため先代と同じく、カタロググレードとしては非設定となっている。
TB
7代目サンバートラックの廉価(エントリー)グレード。ハイゼットトラックの「スペシャル」に相当し、装備を簡略化し価格をおさえた低価格グレード。
TBでは快適装備のパワステ、エアコン、パワーウィンドウ、キーレスエントリーを非装備とした廉価仕様。ただしUVカットガラスとAMラジオは標準装備。エアコンもオプション設定可能。
外装では樹脂タイプのドアミラー&アウタードアハンドル。スチールホイールにボディカラーはオフホワイトの1色のみの設定。トランスミッションは5MTと3AT。駆動方式はFRと4WDを設定。
ハイルーフ
7代目サンバートラックのミドルグレード。TBやTCよりも天井を少し高くとったジャンボと同じハイルーフ仕様車。上方向に少し広くなり開放感がある。グレード的にはTBとTCの中間に位置。
エクステリアはTBと同じで樹脂タイプのドアミラー&アウタードアハンドル。スチールホイール。
快適装備はTCに近く、パワステ、エアコン、パワーウィンドウ、キーレスエントリーを標準装備。ただしオーディオはAMラジオのみ。
ボディカラーは「オフホワイト」のほか、「ブライトシルバーメタリック」の全2色を設定。
TC
7代目サンバートラックの上級グレード。ハイゼットトラック「エクストラ」のOEM。
外装ではメッキフロントグリルにボディ同色ミラー&アウタードアハンドルを標準装備。
快適装備ではパワステ、エアコン、パワーウィンドウ、キーレスエントリーにCDオーディオ+2スピーカーなどを標準装備。シート表皮もファブリックシートとなる。
ボディカラーは「オフホワイト」のほか、「ブライトシルバーメタリック」の全2色を設定。
このほか4WD仕様ではリヤ4枚スプリングを標準装備。4WDの5MTには副変速機のほか、デフロックも標準装備となる。
グランドキャブ(ジャンボOEM)
7代目サンバートラックから新設定の「グランドキャブ」はノーマルよりもキャビンを拡大し、居住性を向上させた上級グレード。ハイゼットトラック・ジャンボOEMモデルである。
天井を高くしたハイルーフ仕様にリクライニング可能なシートを装備し、上方向やキャビン後方が拡大されたことで荷物を置くスペースや開放的な室内空間が最大の特徴だ。
また、一般的な軽トラでは不可能な「シートを倒して昼休み」といった使い方も可能となり、快適性がウリの最上級グレードである。
一方でキャビンを広く取ったため荷台スペースの全長が削減されているが、キャビン後方に彫り込みのような溝を設けることで背の低い長ものであれば従来どおり積載可能とするなど、キャビンスペース確保によるデメリットを極力解消した設計としている。
外装はTBと同じで樹脂タイプ(非塗装)ミラー&アウタードアハンドル。内装はTCに準じ、パワステ、パワーウィンドウ、キーレスエントリー、エアコンなど各種快適装備を標準装備する。
パネルバン
キャビン後方の荷台をパネルで覆った箱車仕様。荷物の運搬のほか、パネルバンをベースに冷凍車などに改造して冷凍食品の配送などに使われる。
エクステリア(外装)
フロントデザイン。六連星エンブレムと専用のグリルが与えられている。先代の最終モデルに通じるデザインの専用グリルでサンバー風に仕立ててある。バンパーはダイハツ版と共通だ。
サイドから。このあたりは特に変更なし。ダイハツ製に切り替わったことで先代より荷台のフロア長が80mm拡大した。
足元は12インチスチールホイール。
リア。右側の車名エンブレム以外はベースと同じだ。ダイハツ製に切り替わったことでサンバーの伝統であったリアのエンジンは廃止、運転席下に移動している。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンは3気筒の自然吸気のみ。先代ではスーパーチャージャーの過給器モデルがあったが、ダイハツ製になったことでこれも廃止された。
新搭載のKF-VE型直列3気筒DOHCエンジンは5MTが最高出力37kw(50ps)/5700rpm、最大トルクは64n・m(6.5kg)/4000rpmを発生。
3ATモデルでは最高出力が若干異なり、53ps(39kW)/7000rpm、最大トルクは6.5kg・m(64N・m)/4000rpm。
トランスミッションは引き続き5MTまたは3ATの2種類で駆動方式はFRまたはパートタイム4WD(ハイロー切り替え付き)となり、一部4WDグレード(農用スペシャル・5MT)ではデフロックが備わる。
安全装備としてデュアルSRSエアバッグ、プリテンショナー&フォースリミッター機構付シートベルト (運転席/助手席)、ABS(ブレーキアシスト付)はセットパックでメーカーオプション設定されていたが、2011年12月マイナーチェンジで保安基準改正に適合。グランドキャブやパネルバンを除いて運転席エアバッグが標準装備となった。
トランスミッションは5MTまたは4ATで、駆動方式はFRまたは切り替え式の4WD。足回りにおいてもダイハツ製に切り替わったことで伝統の独立懸架式は廃止となった。
インパネ(内装)
インパネ。商用車らしく質素なつくり。ハイゼットトラックベースとなったことで収納スペースが増え、インパネドリンクホルダーなど新設されている(※6代目までほフロアドリンクホルダーは廃止)。
スピードメーター。ワンボックスのハイゼットカーゴと同じメーターだ。
4WDモデルではインパネのスイッチで2駆と4駆を切り替える。6代目では5MTのシフトノブ先端に切り替えスイッチが付いていたが、7代目ではこちらに変更された。
さらにグレードによってデフロックを備え、写真の一番左のスイッチで切り替えることが出来る。
運転席。軽トラということでさすがに長距離は疲れれるシートだ。上級のTCグレードではファブリックシートを標準装備する。
7代目サンバートラックのまとめ
7代目サンバートラックは完全なダイハツ製OEMとなった最初のモデルである。
歴代のサンバーといえば独立懸架式サスペンションに4気筒エンジン、スーパーチャージャー、RR方式と他社では見られない特徴が熱狂的なファンを生んだモデルだったが、ハイゼットトラックがベースとなったためにこれれは全て失われ、歴代から見るとサンバートラックといはいえない軽自動車になってしまった。
正直、これまでのサンバートラックユーザーが買う理由が無くなってしまい、非常に微妙なモデルとなっている。その個性的なメカニズムとユーザーのためにも、個人的はサンバーだけはダイハツに生産をお願いしてでも残すべきだったと思ってならない。
中古市場では2年ほどしか生産期間がなかったこともあるが、やはり微妙なモデルということで中古のタマ数は少なめだ。さらにOEMの7代目よりもスバル製6代目の方が特に個体によって(5MTのスーパーチャージャーなど)は高値と、逆転現象も起きている。
中古車需要としてもニーズは個性的な6代目サンバーのほうにあり、7代目サンバートラックを買うのならハイゼットトラックで充分なのだが、あえてこの車を勧めるなら、そこまでメカニズムに拘らない人、あるいはハイゼットトラックを探している人でエンブレムを気にしない人向けとったところ。そんなニーズしか無い残念なモデルである。
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