ハイゼットトラックはダイハツのトラック型軽乗用車。本稿では9代目S200系のデビュー当初、1999年1月~2004年11月までを前期型とし、これを扱う。
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9代目 ダイハツ・ハイゼットトラックとは?
1999年1月にフルモデルチェンジし、9代目となったダイハツ・ハイゼットトラック。
9代目のハイゼットトラックは1998年の軽乗用車新規格に対応しつつもコストカットの観点から先代をベースに設計。そのためボディスタイルそのものは先代によく似た形となった。
一方でヘッドライトを大型化し8代目のアイデンティティーだった黒縁を廃止。フルモデルチェンジをイメージさせるスッキリとした顔つきに変化した。また、インパネも新設計となりそれまで旧規格までのイメージを刷新させた。
9代目では新規格と安全対策を取り入れながらも荷台長は1940mmに拡大。またボディの85%に亜鉛メッキによる防錆鋼板を採用し、カチオン電着塗料により高い防錆性能を実現した。
さらに「ストロング防錆仕様」がスペシャル、ローダンプ、パネルバングレードを除いてオプション設定され、軽トラック初となる錆による穴あき5年、表面錆3年の長期保証を実現した。
9代目のハイゼットトラックでは新規格にボディを対応させ外観を一新。さらに荷室長さの拡大とサビ対策が強化されるなど、フルモデルチェンジにふさわしい内容となっている。
9代目・前期ハイゼットトラックのグレード スペシャル、デラックス、エクストラ、スペシャル農用パックの違いなど
9代目前期ハイゼットトラックのグレードは廉価グレード「スペシャル」、ミドルグレード「デラックス」、上級グレード「エクストラ」、農家向け「スペシャル農用パック」などが設定されていた。
スペシャル
9代目中期ハイゼットトラックのエントリー(廉価)グレード。装備を簡略化し、価格を抑えたモデル。
エクステリアでは
- 樹脂タイプの無塗装バンパー
- 樹脂タイプのドアミラー&アウタードアハンドル
- スチールホイール
- ボディカラーはオフホワイトの1色のみ
で簡素な見た目が大きな特徴。このほかスペシャルでは快適装備の
- パワステ
- エアコン
- パワーウィンドウ
- キーレスエントリー
を非装備とした廉価仕様。前期ではAMラジオさえもオプション設定(2スピーカーだけ標準装備)。エアコンはオプション設定可能となっていた。
トランスミッションは5MTと3AT。駆動方式はFRと4WDを設定。
2000年2月の一部改良で樹脂バンパーを廃止。カラードバンパーと助手席側の乗降グリップが標準装備となった。
2001年1月の一部改良ではエアコンとパワステが標準装備化された。
スペシャルツインカム
上記スペシャルグレードのエンジンを、SOHCからエクストラ用のツインカムエンジン(EF-VE型)に変更したグレード。このほか
- バッテリーカバー
- シガーライター
- 間欠式2スピードワイパー
- Hi-Lo切替式パートタイム4WD(※4WD車のみ)
も追加で標準装備となる。
2001年1月の一部改良ではエアコンとパワステが標準装備化された。
エアコン・パワステスペシャル
2003年6月の一部改良で追加されたグレード。「スペシャル」グレードをベースに
- エアコン
- パワーステアリング
- 間欠ワイパー
- 助手席サンバイザー
などを標準装備としたグレード。
デラックス
9代目前期ハイゼットトラックのミドルグレード。
スペシャルに対し、「フロントメッキガーニッシュ」を標準装備し、見た目が良くなる。
エクストラ
9代目前期ハイゼットトラックの上級グレード。
外装では「メッキフロントグリル」を標準装備。快適装備の「エアコン」はオプション設定。
ボディカラーは「オフホワイト」のほか、「ブルー」、「ブライトシルバーメタリック」の全3色を設定。
2000年2月の一部改良で「パワーステアリング」と「AM/FMラジオ」がオプション設定に追加。
2001年1月の一部改良では
- カラードドアミラー&ドアアウターハンドル
- 大型荷台作業灯
- 格納式テールゲートチェーン
- リア4枚リーフスプリング(4WD)
- スーパーデフロック(4WD)
が追加で標準装備となった。
スペシャル農用パック
9代目前期ハイゼットトラックの農家向けグレード。
「スペシャル」グレードをベースに農用バージョンでは農道などの急勾配やぬかるみに対応できるよう、「副変速機」と「スーパーデフロック」を標準装備。
さらに繁忙期の収穫や荷物運搬に対応すべく重荷に耐えうる「リヤ4枚リーフスプリング」を標準装備とし、荷台には「あゆみ板掛けテールゲート」と「荷台作業灯」も標準装備する。
トランスミッションは5MTのみで、駆動方式もパートタイム4WDのみの設定となる。
エクステリア
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フロントデザイン。9代目ではそれまでの黒縁の外枠+長方形とウィンカーというデザインをやめ、外枠分までヘッドライト単体で拡大された。
これにより先代のイメージをもたせつつ、新規格にふさわしい新しいイメージを創出した。
なお、廉価グレードのスペシャルグレードでは無塗装バンパーを標準装備。それ以外はカラードバンパー。
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上級グレードのデラックスとエクストラではフロントメッキガーニッシュ(ラジエーター風)を標準装備とした。
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ただし、無塗装バンパーに関しては2000年2月マイナーチェンジで全グレード共通のカラードバンパーに置き換えられた。
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サイド。先代のフルキャブタイプを踏襲。このカタチはこの後の10代目にも受け継がれかれるため、ハイゼットトラックといえばこのスタイルという部分だ。
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足元は12インチ鉄チンホイール。タイヤサイズは145R12-6PR。
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リア。デザイン的には先代とほとんど変わらないが、コンビランプが横長から若干縦長に変更されいてる。
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あおり左側には「EFI DLI」のデカールが付く。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンはEF-SE型の3気筒SOHC自然吸気エンジンとEF-VE型3気筒DOHC自然吸気エンジンの2種類。廉価グレードのMT仕様(スペシャル等)ではSOHC仕様となり、最高出力43ps/5900rpg、最大トルクは5.8kg/3600rpm。
これ以外では3気筒DOHC自然吸気エンジンで最高出力48ps/5900rpm、最大トルクは6.4ps/4000rpmとなる。
トランスミッションは3ATまたは5MTで駆動方式はFRまたはパートタイム4WD。一部グレード(クライマー)では4WDにデフロック機構が備わる。
1999年9月にはEFGI(電子制御式フィードバック・ガス・インジェクション)採用エンジンを搭載したLPG車を追加。2000年4月には5MT車にクラッチスタートシステムを標準採用。
さらにそれまでSOHCエンジンだったスペシャルグレードのエンジンを他グレードと同じDOHC自然吸気エンジン(ツインカムDVVT3気筒12バルブEFIエンジン)としたグレード「ツインカムスペシャル」を追加。
2001年1月マイナーチェンジではデフロックを標準装備した「スーパーデフロック」グレードが追加された。
そして2002年1月マイナーチェンジではエンジンの出力アップが行われ、これによりEF-SE型(SOHC)エンジンは最高出力45ps/5900rpm、最大トルク5.8kg/3600rpmに。
EF-VE型(DOHC)エンジンも最高出力50ps/5900rpm、最大トルクは6.4kg/4000rpmにパワーアップ。街乗りでの扱いやすさが向上した。
上述のように9代目前期型のハイゼットトラックは同じ顔つきでもグレードや年式によりエンジン特性が異なる点に注意。
インテリア
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インパネ。デザインは商用車らしくベーシックな感じだが、それ以前よりは見た目がよくなっている。なお、廉価グレードではエアコンレスとなる。
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スピードメーター。
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5MTのシフトノブ(パートタイム4WD仕様)。3ATも同じくフロアシフトとなる。
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シート。
まとめ
9代目ハイゼットトラックの前期型は、新規格に対応し近代化された外観と拡大された荷台長。刷新させたインパネなどが特徴のモデルである。
これ以前では(他メーカーも同様に)かなり古臭さを感じる独特のデザインだったが、このあたりからハイゼットトラックも外観がよくなった。
さらにこの後のマイナーチェンジ(中期型)ではフルモデルチェンジに近いほどの変更内容(デザインや機能性)となるためさらなる魅力アップが図られる。
中古市場ではタマにもよるが新規格の軽トラックとしては比較的安めの価格となっており、購入しやすいモデルである。
ただし、軽トラックの需要の高さから全般的に極端に値は下がらない傾向があるため、場合によっては次の中期型と対して変わらない場合もある。この点はよく比較検討して購入してほしい。
9代目・ハイゼットトラックの前期モデルは2024年から25年ルールでアメリカ輸出可能に
9代目ハイゼットトラックの初期モデルは2024年に生産から25年を経過し、アメリカ輸出可能となる。
アメリカでは農場や牧場、ゴルフ場など広い私有地での移動に既存のカートやバギーなどに置き換わる形で日本の中古軽トラが人気だ。
バギーやカートでは雨風がしのげない野ざらしなボディに、荷物もほとんど詰めない。代わりに車を使おうとしてもアメリカにはピックアップトラックなどの大型車がメインのため、燃費が悪く小回りが効かない。
そういった背景もあって、小回りが効いて雨風がしのげる独立したキャビンを持ち、荷物も乗せられ悪路でも走破可能な日本の中古軽トラが大人気となっている。
これまでは1998年以前の旧規格の軽トラがメインだったが、2024年以降は1998年の軽自動車新規格に対応した一回り大きいサイズの軽トラが輸出可能となる。
※オフロード車登録であれば25年ルールに縛られること無く新しい軽トラも輸入可能
ハイゼットトラックはホンダのアクティトラックやスバルのサンバーのような独自のメカニズム(MRレイアウト)を持たないオーソドックスな軽トラのため、コアなファンは付きづらいが、スズキ・キャリイトラックと同じくオーソドックスな軽トラとして需要が見込める。
アメリカ人は日本人よりも体型が大きく、こぶりな旧規格・軽トラよりも一回り大きい新規格・軽トラのほうが人気が出ると個人的には思う。
特に今までは旧世代・旧規格で室内空間が狭いハイゼットトラックがメインだったため、新規格のハイゼットトラックが輸出可能となれば今まで以上にアメリカで人気が出る可能性が高い。
そのため2024年にかけて益々25年経過した日本の中古軽トラの人気が高まり、積極的にアメリカ輸出されると思う。
そしてこれまで日本では25年経過した軽トラックは廃車か部品取りの価値しかなかったが、アメリカ需要により中古車として買い取られる可能性も十分あり、売る場合も二束三文とはならなくなる。
今までのように安値で買い叩く買取業者には十分注意したい。
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