ルークスは日産のトールワゴン型軽自動車。本稿では３代目となるB44AおよびB47A型の2020年3月～2023年5月までを前期型とし、これを扱う。
３代目 日産・ルークスとは？
2020年3月にフルモデルチェンジし３代目となった日産ルークス。
先代はデイズルークスという名前だったが３代目では単純にルークスという初代と同じ名前に先祖返りした。先代のデイズルークス同様に三菱との共同開発は同じだが今度は開発が日産、生産が三菱という真逆の関係での体制となった。
３代目ルークスは先行するデイズの技術をふんだんに取り入れ、エンジン、ボディ、自動ブレーキ等で大幅な改良が加えられている。
グレード構成も先代や初代同様にノーマルモデルとカスタムモデルの２本立て。本稿で扱うのはノーマルのルークスとなる。
ボディ形状は三菱のekスペースと同じだがフロントデザインを日産仕様とすることで日産らしさを強調し差別化している。
３代目では日産共通デザインであるVモーショングリルを取り入れそれまでのイメージを刷新すると共にひと目見て日産車とわかる個性的な顔つきとなった。
インテリアではアイボリーを基調にブラックのアクセントカラーでシンプルながら飽きのこない上質なデザインとした。また、インパネは開放感を与えつつ前方視界を確保。実用性も両立させている。
室内空間は先行するデイズのプラットフォームを採用し、大人４人が乗れるクラストップレベルの室内を実現。ホイールベースは先代比で65mm延長してこれを実現した。あわせて荷室も延長され675mmの荷室長で４８Lスーツケースを同時に４つ積める大きさとした。
後席スライドドアにはセレナでも搭載される「ハンズフリーオートスライドドア」を両側共に設定(※グレード別)。手が塞がっていても足をかざすだけで開閉を可能とした。
自動ブレーキ面では日産の先進安全技術である「プロパイロット」をデイズと同じく全グレードに標準搭載。
高速道路時の渋滞走行や長時間の巡航走行という２大ストレスシーンにおいてアクセルとブレーキ、ステアリング操作を車側で支援することでドライバーの負担を軽減し、軽自動車でのロングドライブを身近にかつ気軽に提供する。
エンジンはデイズに採用している新型のBR06エンジンをルークスに合わせて調整したものを搭載。先代よりもパワフルかつ低燃費なエンジンで扱いやすさが向上。
これにアシスト用のモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドとなる「S-ハイブリッド」を全グレードに標準採用。特に発進加速などでアシストを発揮し、自然吸気エンジンでありながら実用的な加速力を得ることに成功した。
さらにもしもの事故の際の緊急通報やあおり運転や急病などの緊急事態に通報可能な「SOSコール」は上位グレードにオプション設定とした。
ルークスの改良とターボエンジン仕様の追加
2022年9月の一部仕様変更ではシート表皮を抗菌仕様に変更。燃費性能も若干アップした。さらに従来ではハイウェイスターのみに設定のターボ仕様車が標準モデルにも追加設定。「Xターボ」が新設定された。
ルークスのグレード構成 Sグレード、Gグレード、Xターボの違いなど
ルークスのグレードはエントリーグレードの「Sグレード」。上級の「Xグレード」。オーテックジャパンによる「オーテック(AUTECH)」。
2022年9月以降はターボ仕様の「Xターボ」を加えた全４種類となった。
Sグレード
３代目ルークスのエントリーグレード。Xグレードよりも装備を簡略化し価格を抑えている。
Xグレードと比較してスライドドアが両方とも手動式(非電動)で、助手席のみスライドドアオートクロージャーを備える。ヘッドライトもハロゲンランプのみで、足元も１４インチスチールホイール＋ホイールキャップ。
内装でもマニュアル式エアコンにリヤシーリングファンが非装備。オーディオレス(2スピーカーのみ)、旧来のキーレス(インテリジェントキーは非装備)となるなど、貧相な装備となる。
ただし、自動ブレーキの衝突軽減ブレーキやペダル踏み間違い、誤発進抑制システムなどは一通り装備する。
Xグレード
３代目ルークスの上級グレード。Sグレードと比較して標準で助手席パワースライドドアがつくほか、スライドドアオートクロージャーは両側標準装備。
機能装備としてンテリジェント アラウンドビューモニターやディスプレイ付きの自動防眩ルームミラーも標準装備となる。
快適装備ではフルオートエアコンにリアシーリングファン(※ナノイー搭載)をオプション設定。プッシュエンジンスタート、インテリジェントキー、メッキ加飾のセンターベントノブ＆サイドベントノブ、ブラックピアノ調フィニッシャーパワーウインドウスイッチベース、日産オリジナルナビ取付パッケージ（６スピーカーシステム）など内装も豪華になる
Xターボ
2022年9月追加の新グレード。Xグレードにターボエンジンを搭載したモデル。
オーテック(AUTECH)
標準ルークスをベースにオーテックジャパンが手掛けたカスタムモデル。
エクステリアではオーテック専用フロントグリル、オーテック専用フロントバンパーシールアクセント、ドアハンドルのシルバー化、バックドアフィニッシャーのメッキモール化、リアドアにオーテック専用エンブレム、足元にオーテック専用の切削光輝１４インチアルミホイールを。
インテリアではこれまたオーテック専用となる本革巻ステアリングホイールにオーテック専用レザー調インパネ、助手席サンバイザー、プラズマクラスター搭載リヤシーリングファン、オーテック専用レザー調のトリコットコンビシート。
後席パーソナルテーブル、メッキボタン付きシフトノブ、USBソケット、メッキインナードアハンドルを装備し内外装で上品かつスタイリッシュに仕立てたカスタムモデルとなっている。
2022年9月にはそれまで非設定だったオーテックグレードにターボ仕様(オーテック ターボ)が追加設定された。
３代目ルークスのオーテックについてはこちらから。
日産・３代目ルークス(B44A/B47A型)と三菱eKスペース(B34A/B37A/B35A/B38A型)との違い
日産・３代目ルークス(B44A/B47A型)と兄弟モデル、三菱eKスペース(B34A/B37A/B35A/B38A型)とのの違いはエクステリア、インテリア、ターボの有無などがある。
まず三菱eKスペースとは顔つきが大きく異なり、グリルとバンパーがそれぞれ専用品となる。三菱eKスペースはボディ同色で開口部を少なくしたベーシックなグリル(※ターボ仕様はブラック塗装)に下部にメッキをあしらった２段開口バンパーでよりスタイリッシュな雰囲気としている。
画像参照元：三菱認定中古車
一方の日産・３代目ルークスは日産のアイデンティティであるVモーショングリルを取りいれ、V型メッキグリルとメッシュ形状のグリルで日産らしい精悍な顔つきとしている。
バンパーもほぼ同じだが、ルークスでは下部のメッキパーツが省略される。
グレード構成も異なり、三菱では自然吸気エンジン＋マイルドハイブリッドとターボエンジン＋マイルドハイブリッドの２構成に対し、日産ルークスでは自然吸気エンジン＋マイルドハイブリッドのみとなる(※ターボ仕様はカスタムモデルのハイウェイスターに設定)。
インテリアではステアリングのオーナメントが異なる程度でほぼ同じとなる。
エクステリア（外装）
フロントデザイン。３代目ルークスの顔つきは先にデビューした３代目デイズとほぼ同じで三菱仕様と差別化、日産らしさが強調されている。
グリルまわりは日産共通の「Vモーショングリル」を取り入れアイデンティティーを演出。ヘッドライトはデイズよりも背の高いハイトワゴンということでより水平ラインを意識しデイズよりオーソドックスな形となっている。
サイド。先代よりもボンネットのエッジが立ち、運転席からの見切りが良くなっている。後部のリアクォーターガラスは形状が台形となり、デザイン面で面白みがでている。
また、サイドの窓ガラスはフロントからリアにかけて先代よりも小さくなっており、先代はスペースを強調したのっぺりとしたデザインだったのに対し、さきほどのボンネットのエッジと組み合わさってハイトワゴンでありながらスマートなデザインになった。この点のデザインはかなり良い。
スライドドア関連では下位グレードのSグレードでは助手席スライドドアオートクロージャーが標準装備。上級のXグレードでは両側スライドドアオートクロージャーとなる。
ハンズフリーオートスライドドアはXグレードのみに標準装備で、オプションでXグレードではこれを両側ハンズフリーオートスライドドアに変更可能だ。
ハンズフリーオートスライドドアは両手がふさがっていてもスライドドア下部に足をかざすだけでスライドドアの開閉が行える便利機能。開口部650mmの後部スライドドアと組み合わせれば利便性バツグンとなる。
足元は１４インチのスチールホイール＋ホイールキャップ。オプション設定もなし。
リア。３代目ルークスのリアは先代よりもデザインが少し異なる。リアゲートガラスはより直角に。その下に水平基調のブラックなガーニッシュ。コンビランプはより上部へ移動し縦長に細くなった。
デザインもクリアーテールから通常のコンビランプとなり、３代目N-BOXに近い(ブレーキランプは標準でLEDタイプ)。コンビランプが縦長に、かつ上部へ移動したことによりリアゲートの開口部が拡大。荷物の積み下ろし時の使い勝手が向上している。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンは三菱と同じ新開発のBR06型直列３気筒DOHC自然吸気のみ。三菱版のeKスペースにはデビュー当初からターボモデルがあるが、日産版のノーマルモデルでは当初ターボの設定がなかった。
これが2022年9月の一部仕様変更で追加設定となった。
自然吸気エンジンの最高出力は52ps(38kW)/6400rpm、最大トルクは6.1kg・m(60N・m)/3600rpm。
ターボエンジンの最高出力は64ps(47kW)/5600rpm、最大トルクは10.2kg・m(60N・m)/2400~4000rpm。
これに全グレードでモーター(最高出力2.7ps(2.0kw)/1200rpm、最大トルク4.1kg(40N・m))を組み合わせたマイルドハイブリッドとなる。
さらに新開発でワイドレシオなCVTの組み合わせ。駆動方式はFFまたは4WDの２種類。燃費性能はJC08モードでFFが27.2km/リットルとなる。
ほかにデイズ同様、「ヒルスタートアシスト」、「フロントスタビライザー」、「エマージェンシーブレーキ」、「VDC(ビークルダイナミクスコントロール)」、「ABS＋EBD（電子制御制動力配分システム）」、「インテリジェント オートライトシステム」を全グレードで標準装備。
VDCの機能の中には「ブレーキLSD」が含まれる。ブレーキLSDは滑りやすい路面でタイヤが空転した際、自動でで空転する駆動輪にブレーキをかけてもう片方の駆動力を確保するものスズキの初代ハスラーあたりから搭載された簡易LSD装置で雪国では頼もしい機能だ(※スズキでは「グリップコントロール」という)。
自動ブレーキとしては全グレードで先代の「衝突軽減ブレーキシステム」に「車線逸脱防止支援機能」が追加され「踏み間違い衝突防止アシスト」、「車線逸脱警報システム」、「オートマチックハイビーム」の５つが備わる。
３代目ルークスB44AとB47A型との違い
３代目ルークスB44AとB47A型との違いは駆動方式。B44A型は前輪を駆動するFFの３代目ルークス。
B47A型はB44Aをベースに全輪を駆動する４WDの３代目ルークス。それぞれマイルドハイブリッド仕様でアシストモータによる動力補助がなされる。
なお、B47A型ルークスの4WDシステムにはビスカスカップリングが用いられる。これは普段はFFで走行し、悪路など後輪との差分が発生すると自動的に４WDに切り替わるタイプ。
ジムニーなどに代表される古典的なパートタイム４WDより街乗りでは扱いやすく、燃費も良いため街乗り４WDでは多くこのシステムが用いられる。
インテリア（内装）
インパネ。ライトウォームグレーを基調としかなり上質な雰囲気となっている。デザインは先に登場している３代目デイズと共通の部分もあるが、インパネ上部の特にエアコン吹出口あたりはルークスオリジナルとなっていて、差別化されている。ボディはフロントからリアにかけて流れるようなデザインだったが、インパネもこれと同じくサイドからインパネにかけて流れるようなデザインとなっている。
なお、デザインそのものは兄弟車の三菱・３代目eKスペースと同じ。
スピードメーター。デイズと同じく全グレードでタコメーター付きの２眼タイプにセンターがマルチインフォメーションディスプレイとなる。
エアコンは上位のXグレードがタッチパネル式のオートエアコン。下位グレードのSでは非タッチパネルで旧来のダイヤル調整式マニュアルエアコンとなる。
上位のXグレードにはアラウンドビューモニターを標準装備。オプションのナビを購入すると大画面に表示できるほか、切り替えるとルームミラーにも表示可能となる。
フロントシートはベンチシートタイプ。三菱版と同じくファブリックの撥水シートでカラーもライトウォームグレーのシートで暖かみがある。なお、三菱版にはノーマルモデルでもオプションで助手席をセパレートシートに変更可能だが、日産のルークスではカスタムモデルのハイウェイスターかつターボ仕様のグレードしか選択できない。
リアシート。
ロールサンシェードは上級のXグレードに「快適パックA」として
天井サーキュレーター(プラズマクラスター付き)とセットでオプション設定(※X系グレードのみ)となる。
ラゲッジルーム。
リアシートを倒した状態。
まとめ
３代目ルークスはスタイリッシュになった外観。ひと目で日産車とわかる顔つき、アップグレードされた運転支援技術と安全装備、新型エンジンとマイルドハイブリッドの採用、広くなった室内空間など先代の弱点を克服しつつライバルに引けを取らないモデルとなった。
特にメカニズム面ではスズキに次いでマイルドハイブリッド(S-HYBRID)を採用するなどかなり気合の入ったモデルとなっている。三菱版と異なり自然吸気エンジン仕様のみしか選べないのが残念だが、モーターのアシストにより特に信号待ちからの出だし加速はかなり実用的なレベルに改善している。
先代から乗り換える価値は十分にあるモデルといえよう。
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