ルークスは日産のトールワゴン型軽自動車。オーテックはオーテックジャパンによるカスタムモデルである。本稿では3代目となるB44AおよびB47A型のオーテック仕様を扱う。
出典:日産認定中古車
日産 3代目・ルークスとは?
2020年3月にフルモデルチェンジし3代目となった日産ルークス。先代はデイズルークスという名前だったが3代目では単純にルークスという初代と同じ名前に先祖返り。
先代のデイズルークス同様に三菱との共同開発は同じだが今度は開発が日産、生産が三菱という真逆の関係での体制となった。3代目ルークスは先行するデイズの技術をふんだんに取り入れ、エンジン、ボディ、自動ブレーキ等で大幅な改良が加えられた。
そしてフルモデルチェンジの際に同時発売されたカスタムモデルが「ルークス オーテック」だ。オーテックという名前からもわかるように日産の特装車を手掛ける「オーテックジャパン」によるカスタムモデルである。
かつてオーテックジャパンが手掛けたカスタムモデルというと、軽自動車のなかった時代は普通車のみだったが、三菱からOEM供給されたeKワゴンの日産版、「オッティ」をベースとした「オッティライダー」がそのはじまり。
その後はスズキのパレットOEMである初代ルークス、初代デイズ、デイズルークスなど軽自動車においても幅広く展開。今回の3代目ルークスではベースのフルモデルチェンジと同時発売という気合の入ったモデルとなっている。
グレード構成も先代や初代同様にノーマルモデルとカスタムモデルの2本立て。本稿で扱うのはノーマルのルークスとなる。
ボディ形状は三菱のekスペースと同じだがフロントデザインを日産仕様とすることで日産らしさを強調し差別化している。3代目では日産共通デザインであるVモーショングリルを取り入れそれまでのイメージを刷新すると共にひと目見て日産車とわかる個性的な顔つきとなった。
インテリアではアイボリーを基調にブラックのアクセントカラーでシンプルながら飽きのこない上質なデザインとした。また、インパネは開放感を与えつつ前方視界を確保。実用性も両立させている。
室内空間は先行するデイズのプラットフォームを採用し、大人4人が乗れるクラストップレベルの室内を実現。ホイールベースは先代比で65mm延長してこれを実現した。あわせて荷室も延長され675mmの荷室長で48Lスーツケースを同時に4つ積める大きさとした。
後席スライドドアにはセレナでも搭載される「ハンズフリーオートスライドドア」を両側共に設定(※グレード別)。手が塞がっていても足をかざすだけで開閉を可能とした。
自動ブレーキ面では日産の先進安全技術である「プロパイロット」をデイズと同じく全グレードに標準搭載。
高速道路時の渋滞走行や長時間の巡航走行という2大ストレスシーンにおいてアクセルとブレーキ、ステアリング操作を車側で支援することでドライバーの負担を軽減し、軽自動車でのロングドライブを身近にかつ気軽に提供する。
エンジンはデイズに採用している新型のBR06エンジンをルークスに合わせて調整したものを搭載。先代よりもパワフルかつ低燃費なエンジンで扱いやすさが向上。
これにアシスト用のモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドとなる「S-ハイブリッド」を全グレードに標準採用。特に発進加速などでアシストを発揮し、自然吸気エンジンでありながら実用的な加速力を得ることに成功した。
さらにもしもの事故の際の緊急通報やあおり運転や急病などの緊急事態に通報可能な「SOSコール」は上位グレード(Xグレード)にオプション設定とした。
3代目ルークス・オーテック仕様の特別装備とノーマルとの違い
3代目ルークスに設定されたオーテックバージョンは先代にあった「デイズルークス・ライダー」とは異なりノーマルモデルがベース。
外観は先代とは打って変わってギランギランの押しの強さは控えめで、ベースモデルの素性の良さを活かしつつ、上品さやスタイリッシュ感をプラスさせたのが大きな特徴だ。
エクステリアではオーテック専用フロントグリル、オーテック専用フロントバンパーシールアクセント、ドアハンドルのシルバー化、バックドアフィニッシャーのメッキモール化、リアドアにオーテック専用エンブレム、足元にオーテック専用の切削光輝14インチアルミホイールを。
インテリアではこれまたオーテック専用となる本革巻ステアリングホイールにオーテック専用レザー調インパネ、助手席サンバイザー、プラズマクラスター搭載リヤシーリングファン、オーテック専用レザー調のトリコットコンビシート。
後席パーソナルテーブル、メッキボタン付きシフトノブ、USBソケット、メッキインナードアハンドルを装備し内外装で上品かつスタイリッシュに仕立てたカスタムモデルとなっている。
ルークスの改良とターボエンジン仕様の追加
2022年9月の一部仕様変更ではシート表皮を抗菌仕様に変更。燃費性能も若干アップした。
さらに従来ではハイウェイスターのみに設定のターボ仕様車が標準モデルにも追加設定。「Xターボ」と「オーテック ターボ」が新設定された。
ルークス・オーテックのエクステリア(外装)
フロントデザイン。2代目ルークスの顔つきは日産のアイデンティティーである「Vモーショングリル」を取り入れた日産らしさを強調したデザインだったが、オーテック仕様ではこれをベースにメッキ加飾をプラス。個性や精悍さをよりアップさせている。
また、バンパーも専用品でシルバーのシールアクセントをプラス。グリルとあわせてベースモデルと差別化されている。
サイド。オーテック仕様としてはドアミラーとドアハンドルをシルバー化。フロントバンパーとあわせてワンポイントのアクセントとしている。オプションとしてアーテックエンブレム入のドアバイザーを設定。
ボディカラーにはオーテック専用色となる「アトランティックブルー/ブラック」(写真色)、「アッシュブラウン/ブラック」、「ホワイトパール)/ブラック」、「スパークリングレッド/ブラック」、ホワイトパールを含めた全9色を設定。
スライドドア関連ではXグレードがベースのため、両側スライドドアオートクロージャーに助手席側がハンズフリーオートスライドドアを標準装備。運転席側のハンズフリーオートスライドドアはオプションとなる。
足元は14インチのオーテック専用品。切削光輝のアルミホイールでノーマルのルークス、カスタムのルークスハイウェイスターにも存在しない唯一無二の一品だ。
リア。オーテック仕様としてメッキモール付きのバッグドアフィニッシャーとバッグドア右下にオーテックエンブレムが付く。リア周りもさりげなく差別化されており、特別感が所有欲を満たすことだろう。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンは三菱と同じ新開発のBR06型直列3気筒DOHC自然吸気のみ。三菱版のeKスペースにはデビュー当初からターボモデルがあるが、日産版のノーマルモデルでは当初ターボの設定がなかった。
これが2022年9月の一部仕様変更で追加設定となった。
自然吸気エンジンの最高出力は52ps(38kW)/6400rpm、最大トルクは6.1kg・m(60N・m)/3600rpm。
ターボエンジンの最高出力は64ps(47kW)/5600rpm、最大トルクは10.2kg・m(60N・m)/2400~4000rpm。
これにモーター(最高出力2.7ps(2.0kw)/1200rpm、最大トルク4.1kg(40N・m))を組み合わせたマイルドハイブリッドとなる。さらに新開発でワイドレシオなCVTの組み合わせ。駆動方式はFFまたは4WDの2種類。燃費性能はJC08モードでFFが27.2km/リットルとなる。
ほかにデイズ同様、「ヒルスタートアシスト」、「フロントスタビライザー」、「エマージェンシーブレーキ」、「VDC(ビークルダイナミクスコントロール)」、「ABS+EBD(電子制御制動力配分システム)」、「インテリジェント オートライトシステム」を全グレードで標準装備。
VDCの機能の中には「ブレーキLSD」が含まれる。ブレーキLSDは滑りやすい路面でタイヤが空転した際、自動でで空転する駆動輪にブレーキをかけてもう片方の駆動力を確保するもの。
スズキの初代ハスラーあたりから搭載された簡易LSD装置で雪国では頼もしい機能だ(※スズキでは「グリップコントロール」という)。
自動ブレーキとしてはXグレードがベースのため、「衝突軽減ブレーキシステム」に「車線逸脱防止支援機能」、「踏み間違い衝突防止アシスト」、「ふらつき警報」、「車線逸脱警報システム」、「オートマチックハイビーム」、「先行車発進お知らせ」、「標識検知機能」などが備わる。なお、「SOSコール」はオーテック仕様でもオプション設定となる。
ルークス・オーテックのインテリア(内装)
インパネ。オーテック仕様の最大のウリともいうべきがこの内装。ベースモデルはライトウォームグレーを基調とし、先代よりも質感や高級感がアップした。
加えてオーテック仕様ではアイボリー色に上半分をダークブラウンの専用レザー調インストパネルを組み合わせてワンランクアップ以上のインパネとなっている。なお、デザインそのものはベースモデルと同じ。
ステアリングもオーテック仕様の専用品となり、アイボリーとダークブラウンを組み合わせた本革巻ステアリングホイールとなる。
スピードメーター。デイズと同じく全グレードでタコメーター付きの2眼タイプにセンターがマルチインフォメーションディスプレイとなる。
エアコンはXグレードがベースのため、タッチパネル式のオートエアコン。下位グレードのSでは非タッチパネルで旧来のダイヤル調整式マニュアルエアコンとなる。オーテック仕様としてメッキボタン付きのシフトノブに変更される。さらに助手席側サンバイザー裏のバニティミラーも標準装備となる。
Xグレードベースのためアラウンドビューモニターも標準装備。オプションのナビを購入すると大画面に表示できるほか、切り替えるとルームミラーにも表示可能となる。
フロントシートはベンチシートタイプ。こちらもオーテック専用品でアイボリーとブラウンを組み合わせた専用レザー調トリコットコンビシートとなる。インナードアハンドルもオーテック仕様としてメッキタイプとなる。
オプションでオーテックの刺繍入りフロアマットを設定。
リアシート。フロントシートに取り付けられた折りたたみ式のパーソナルテーブルは本来オプション設定だが、オーテック仕様では標準装備となる。
また、テーブル下には本来オプション設定のUSBソケットもオーテック仕様では標準装備となり、ドリンクを置いたりスマホを充電したりと後部座席の快適性アップに寄与する。
ロールサンシェードはオーテック仕様として標準装備となる。
天井サーキュレーター(プラズマクラスター付き)もオーテック仕様では標準装備となる。。
ラゲッジルーム。
リアシートを倒した状態。
ルークス・オーテックの評価
3代目ルークスに設定されたオーテック仕様車はさりげなく、かつ上品に差別化されたエクステリアに上級感あふれる内装を備えたプレミアムモデルとなっている。
カスタムモデルというとハイウェイスターが順当だが、それとは一味違う選択肢としてオーテック仕様が設定されている点がなんとも嬉しい。
カスタムモデルにありがちなギラギラ感がなく、内装はカスタムモデルに相当する上級感があるためそういったギラギラ感の外観が苦手な人の選択肢となりうるモデルだ。
デビュー当初は無かったターボモデルも追加設定され、価格は上昇するものの、ハイウェイスターと引けを取らない個性的なモデルに仕上がっている。
自然吸気エンジンはマイルドハイブリッドの出来がよく街乗りやちょっとした遠出程度で絶対的な加速力を求めないのであれば十分な性能を持つ。
ベースモデルよりも20万円程度アップするが、カスタムモデルのハイウェイスターとほぼ変わらないので、もうひとつのカスタムモデルとして一考の価値ありである。
ルークス・オーテックの廃止・生産終了について
3代目ルークスに設定されていた標準タイプのオーテック仕様、「ルークス オーテック」は2023年6月の後期型マイナーチェンジで廃止され、生産終了となった。
そのため現在では絶版モデルとなり、中古車でのみ購入可能なレアなグレードとなっている。中でもモデル後半で追加されたオーテック ターボはレア中のレアで、カスタム仕様のハイウェイスターとは異なる標準寄りのシンプルな外観にターボエンジン搭載で走りが強化されたモデル。
生産期間がわずか9ヶ月とかなり短命で価格が高くなるオーテックのターボ仕様とあって販売台数もかなり少なく、中古市場でもほとんどタマが出てこないことが予想される。
年式がまだまだ新しいのでオーテック、オーテックターボともに中古車は高いが希少価値という点でも所有欲を満たしてくれる特別なスーパーハイトワゴンとなっている。
コメント