ハイゼットカーゴはダイハツの商用軽ワンボックス。ハイゼットカーゴ デッキバンはその架装車である。本稿では4代目のS320WおよびS321W系のデッキバンについて扱う。
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4代目 ハイゼットカーゴ デッキバンとは?
ダイハツの商用軽ワンボックスであるハイゼットカーゴをベースに、後部の荷室天井部分を大胆にカットし軽トラのような荷台にしたのがハイゼットカーゴ デッキバンだ。
古くは1988年登場の7代目ハイゼットS80WおよびS82W型時代に登場し、今日30年以上続くロングセラーモデルとなっている。元々は冷蔵庫を電器店で立てに積めるようにと当時の松下電器との共同開発されたところからはじまった。
4代目のハイゼットデッキバンは5代目ハイゼットカーゴがベース。先代のS200型ベースよりも荷室サイズが拡大し、より使い勝手が向上している。デッキバンは特装車という扱いでそれまで軽自動車検査証に「改」の記載が必要だったが、4代目からは不要となった。
デッキバンS320W/S330Wの特徴とハイゼットカーゴS320G/S330G、トラックとの違い
ハイゼットカーゴデッキバンは軽バンのハイゼットカーゴと、軽トラのハイゼットトラックを足して荷で割ったようなパッケージが特徴である。
独立したリアシートにスライドドアを持ちながら、ラゲッジスペースのみトラックと同じ荷台とすることで、多様な使い勝手を可能とした軽バンとなっている。
その一方で軽バンと比べると室内のラゲッジスペースが狭く、ラゲッジスペースの荷台も軽トラよりは狭いため、中途半端な部分もある。ハイゼットカーゴやハイゼットトラックでは積めた長物が積めない場合もあるためその点は注意が必要だ。
エンジンやトランスミッションはハイゼットカーゴとまったく同じで、クルーズターボのようなターボ仕様は非設定。
ボディカラーはホワイトやブライトシルバーメタリックのほか、ブラックマイカメタリックに加え、Gリミテッドではトニコオレンジメタリック、ブルーマイカメタリック、オフビートカーキメタリックなどカラフルなボディカラーが設定される。
エクステリア(外装)
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フロントはベースのハイゼットカーゴとまったく同じだ。乗用モデルのアトレーワゴンに比べるとオーソドックスであるが仕事で使うことがメインなので豪華さよりも経済性が重視されるデザイン。正面からはまんまハイゼットカーゴなのだが…
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サイドから見ると違いは歴然。リアのラゲッジルームがそのまま軽トラのような荷台になっている。デザイン的にも軽ワンボックスと軽トラックを足して2で割ったようなデザインだ。
当初は松下電器からの要望で誕生したデッキバンだったが、この軽ワンボックと軽トラックのいいとこ取りな部分は花屋さん、工事業者、狩猟愛好家やサーファーなど電器店以外の需要を生み出し、軽トラックと軽ワンボックスを2台持ちしなければならいところが1台で済む点からも特定ユーザーに今でも人気のある車種となっている。
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アメリカで人気のピックアップトラックのようなスタイリングは軽自動車の中でも異型の存在だ。また、荷台には汚れた物を気軽にそのまま積めるので、仕事で使うだけでなくレジャーや趣味目的としての需要も生まれている。
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リア。真ん中から半分はハイゼットカーゴそのままだが、上から半分が大胆にもカットされ軽トラの荷台のようになっている。バンパーすぐ上にはちょうつがいが取り付けられれ
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このように開閉する。本家軽トラックと比べると奥行きは無いのだが、縦方向は元のハイゼットカーゴ以上に荷物を積むことが出来る。また軽トラックの荷台のように汚れた物をそのまま積める点もデッキバンの魅力だ。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンは3気筒の自然吸気のみ。KF-VE型直列3気筒DOHC自然吸気エンジンの最高出力は5MTが46ps(34kW)/5700rpm、最大トルクは6.1kg・m(60N・m)/4000rpm。
AT仕様では最高出力はS320W型のFRモデルが53ps(39kW)/7000rpm、最大トルクは6.1kg・m(60N・m)/4000rpm。トルクは同じだが、最高出力がATとMTで若干異なる。
トランスミッションは4ATまたは5MTで駆動方式はFRまたはパートタイム式4WDだ。
ハイゼットデッキバン S320WとS330W型の違い
S320WとS330Wの違いは駆動方式。S320Wは後輪を駆動する2WD(FR)のハイゼットカーゴデッキバン。
S330WはS320W型ベースで全輪を駆動する4WDのハイゼットカーゴデッキバン。S330Wの4WDシステムにはパートタイム4WDが採用されており、運転者が任意に切り替えることで普段は燃費の良いFR。いざという時は4WDという使い方ができる。
ただしジムニーやパジェロミニ同様に舗装路などの急カーブや駐車場での駐車時にタイトコーナーブレーキ現象が起きやすく、扱いには注意が必要だ。
インテリア(内装)
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インパネ。商用ベースなので簡素な作り。シフトはマニュアル、オートマともにインパネシフトとなる。
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フロントシートはセパレートタイプ。クルーズ系のヘッドレスト分離型セパレートシートが採用され、軽バンであるものの、快適性は高い。
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リアシート。ヘッドレストが軽トラのようにボディ側に付く変わったタイプの一体可倒式シート。一応座れるが見ての通り決して上質なシートでは無いので長時間は辛い。
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ちなみにこのシートを倒すと室内のラゲッジルームとなり、汚れた物は荷台へ。濡れたくない物は中へといった使わけができるようになっている。
まとめ
4代目のハイゼット デッキバンは軽ワンボックと軽トラックのいいとこ取りのようなモデルである。
先代にもデッキバンはあったが荷室サイズが拡大され使い勝手が向上しており予算の許す限りは4代目のほうがメリットがある。
上述のとおりハイゼットカーゴと軽トラのいいとこ取りなので、仕事以外に個人で使う場合は薪を軽トラのように運ぶとか土の入った園芸用品を運ぶなどが考えられる。ただしラゲッジスペースが室内も室外も狭いため車中泊も厳しく実用性としてはかなり低い。デッキバンはファッショナブルな装備に近いが、個性的で面白いモデルであることは間違いない。
なお他社からはこのようなデッキバンは発売されておりず(※スバルへのOEMを除く)、この手の市場はダイハツの独壇場となっている。
中古市場ではハイゼットカーゴよりもタマ数が少なく、同年代で走行距離が同じハイゼットカーゴと比べると少し高い。絶対数が少ないためその点は致し方ない部分がある。
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