ハイゼットはダイハツの軽トラおよび軽ワゴン型軽商用車。「ハイゼットキャディー」はウェイクをベースとした2シーターの4ナンバー軽貨物車(軽バン)である。
出典:ガリバー
ダイハツ・ハイゼットキャディーとは?
2016年6月に登場したダイハツ・ハイゼットキャディー。
ハイゼットという名前が付いているものの、ベースはウェイクで外装を簡略化し、後部座席を完全撤去。2シーターの軽貨物車としたモデルである。
開発の背景には近年の運送業における働き手の変化で以前は少なかった女性や高齢ドライバーが増えたことにある。
それまでの軽貨物車というのはエンジンを運転席下か後部ラゲッジルーム下に配置するためエンジン音が大きく、またコストカットのためシートや内装は簡略化されたものがついているなど乗り心地や快適性の低いものだった。
そこで乗用モデルのウェイクをベースとし、乗用車のような乗り心地や快適性と軽貨物の積載性を両立させたモデルを投入することなった。
ハイゼットキャディーはFFレイアウトのウェイクをベースにすることにより、低い運転席フロア高と適度なシートの高さを実現し、既存のハイゼットカーゴよりも乗り降りをラクにした。
キャビンはFFレイアウト採用によりクラスNo1の低荷室フロア高595mmを実現。ハイゼットカーゴよりも荷物を高く持ち上げること無く積載でき、積み下ろしをラクにできるようにした。
一方でラゲッジスペースはウェイクのリアシートを完全撤退しフルフラット化。デッキボードを着脱式にしてラゲージアンダートランクを備え、助手席後方アンダートランク機能も設定。ラゲージアンダートランクの採用で荷室高は最大で1,485mmを確保した。
安全装備としてはスマートアシストⅡ(※2017年11月一部改良でスマートアシストアシストⅢにバージョンアップ)を一部グレードに装備。
従来の軽バンにはオプション設定が一般的だった「EBD付きABS」を全グレードに標準装備したほか、「VSC&TRC」、「エマージェンシーストップシグナル」、「ヒルホールドシステム」も標準装備とし、乗用モデルのような安全装備を与えた。
エンジンはウェイクと同じでミライースにも採用の可変バルブタイミング機構付きのKF型エンジン(※上級グレードにはターボエンジンも設定)にトランスミッションはCVTを採用。
クールドi-EGRやCVTサーモコントローラー、エコアイドルを全グレードに備え、優れた燃費とFFレイアウト&吸遮音材の最適配置により軽バンで不評だった圧倒的な静粛性を実現した。
ボディカラーもハイゼットカーゴにはないカラフルなオレンジや水色、ピンクを含めた全5色を設定。オプションも豊富に設定し、ドレスアップも可能とした。
ハイゼットキャディー D、D デラックス、X、X SAグレードの違いなど
ハイゼットキャディーのグレード構成は自然吸気エンジン(NA)でベーシックな「D」と、ミドルグレードの「D デラックス」。
ターボエンジン搭載で上級グレードの「X」の3本立て(※SAⅡやSAⅢが付くグレードは自動ブレーキ搭載グレード)。
特別仕様車の設定は無し。
D
ハイゼットキャディの中でも最も廉価でベーシックなのがDグレード。
エクステリアは足元がスチールホイールでフォグランプ、プッシュスタートボタンが非装備。
樹脂タイプの手動式ドアミラーにオーディオレス、セキュリティアラームレス仕様となるなど装備がかなり簡略化される。
イメージ的にはハイゼットカーゴの「スペシャル」グレードのような構成に近い。
ただしハイゼットカーゴの廉価グレードと比較しても見た目は簡素だが、プライバシーガラスやパワーウィンドウ、キレーレスエントリー、ABSやVSC&TRC、エマージェンシーストップシグナル、ヒルホールドシステムは標準装備のため、かなり乗用モデルに近い。
一方で豪華装備ゆえに新車価格は一番安いFFモデルで税込約120万円からと、ハイゼットカーゴよりも高かった。
D SAⅡ
Dグレードに自動ブレーキのスマートアシストⅡを搭載したグレード。
D SAⅢ
Dグレードに自動ブレーキのスマートアシストⅢを搭載したグレード。
SAⅡに対し衝突回避支援ブレーキ機能に「対歩行者」が追加され、作動領域も向上した。
D デラックス
D デラックスはエントリーグレード。
Dグレードに対し、オーディオ(CD/AM・FMラジオ)が標準装備となり、ステアリングのメッキオーナメット、シルバー塗装のセンターガーニッシュ、電動格納式ドアミラー(ボディ同色タイプ)、ホイールキャップが標準装備となり、見た目や快適装備が良くなる。
2017年11月の一部改良で廃止。「D デラックス SAⅢ」にグレード集約となった。
D デラックス SAⅡ
Dデラックスに自動ブレーキのスマートアシストⅡを搭載したグレード。
D デラックス SAⅢ
Dデラックスに自動ブレーキのスマートアシストⅢを搭載したグレード。
SAⅡに対し衝突回避支援ブレーキ機能に「対歩行者」が追加され、作動領域も向上した。
X(ターボ搭載)
Xはターボエンジンを搭載する上級グレード。
外装ではウェイク用のLEDヘッドライトにブラック塗装グリル、フォグランプ、アルミホイール、クリアーテールランプを標準装備。
内装や快適装備ではデラックスとほぼ同じ。見た目はほぼウェイクなので軽バンらしさが一番しない上級グレードとなる。
2017年11月の一部改良で廃止。「X SAⅢ」にグレード集約となった。
X SAⅡ
Xに自動ブレーキのスマートアシストⅡを搭載したグレード。
X SAⅢ
Xに自動ブレーキのスマートアシストⅢを搭載したグレード。
SAⅡに対し衝突回避支援ブレーキ機能に「対歩行者」が追加され、作動領域も向上した。
ハイゼットキャディーLA700V/LA710Vの特徴とハイゼットカーゴ(S321V/S331V)との違い、最大積載量など
ハイゼットキャディーはウェイクがベースのFFレイアウトの軽貨物。ハイゼットカーゴは伝統的なエンジンを運転席真下に配置し、FRレイアウトの軽貨物。
外装が異なる他、荷室の広さ、最大乗員、最大積載量、燃費、リアゲートの開口部、運転席の快適さ&静粛性などが異なる。
まず見た目はハイゼットカーゴが軽バンらしいベーシックな箱ワゴンに対し、ハイゼットキャディーはウェイクがベースのためどちらかといとタントのような乗用モデルに近い外観となる。
ボディカラーもハイゼットキャディーはカーゴには無いオレンジ、水色、ピンクと豊富な5色で軽バンらしくない色設定。
両者とも両側スライドドアを備えるが、ハイゼットキャディーはあくまで軽バンなので電動パワースライドドアは非装備。ハイゼットカーゴと同じく手動のスライドドアとなる。
リアはかなり異なり、ハイゼットキャディーのテールランプはリアゲート両端。ハイゼットカーゴはバンパー下部につく。これによりリアゲート開口部はハイゼットカーゴの方が大きく、横方向では荷物が載せやすい。
一方でハイゼットキャディーは地上からの荷室がハイゼットカーゴよりも低いため、背の低い女性などが荷物を積み下ろしする場合はより作業しやすい特徴もある。
荷室容量も異なり、ハイゼットキャディーに荷室長は1,210mm。対して同年代のハイゼットカーゴは1,860mmとかなり長い。
これはエンジンをボンネットに配置し、運転席がより後方にあるハイゼットキャディーに対し、エンジンが運転席真下で前方に運転席があるハイゼットカーゴの設計の違いに由来する。
そのためより多くの荷物を積む場合はハイゼットキャディーでは約不足で、ライトな軽バンという位置づけになる。
また最大積載量も違い、ハイゼットカーゴが最大350kgに対し、ハイゼットキャディーは最大150kg。Amazonフレックスなど「最大積載量350kgの軽貨物」を条件にしている場合、ハイゼットキャディーは使えないので注意が必要だ。
その一方でハイゼットキャディーはウェイクがベースのため走行時のエンジンの静粛性や乗り心地がハイゼットカーゴよりも圧倒的に良く、軽バンらしくない特徴もある。
このあたりは快適性をとるか、荷室の広さ、最大積載量をとるかのトレードオフといったところ。
実際、ハイゼットキャディーの販売路線も荷室よりも静粛性や快適性をメインにする人向けとなっていた。
なお、ハイゼットキャディーデビュー当時のハイゼットカーゴにはスマートアシストなどの自動ブレーキの設定がなく、ウェイクベースのハイゼットキャディーには設定があったのでその点も差別化がなされれていた。
ハイゼットキャディーの販売不振と生産終了、不人気だった理由など
ハイゼットキャディーは2016年6月に登場し、2021年9月にベースのウェイクよりも先に販売を終了しわずか5年の短命であった。
静粛性が高く、乗り心地も良い新ジャンルの軽バンという販売路線は悪くは無かったが、同じダイハツのハイゼットカーゴとくらべても価格が高く、荷物はあまり乗らずと色々と中途半端な点が仇となった。
特に軽商用車(軽バン)は仕事で使うため価格の安さは重要視されるポイントで、荷物がどれだけ載せられるかも重要なポイント。
静粛性や乗り心地は良くてもハイゼットカーゴよりも高くて荷物が乗らないハイゼットキャディーは軽バンとしては中途半端で、あまり売れなかったようだ。
なお、2018年7月には今度はホンダからN-BOXをベースとしたFFレイアウトの軽バン「N-VAN」が発売された。
出典:ホンダ認定中古車
N-VANではリアゲートの開口部をできるだけ広く取り、助手席側はセンターピラーレスとし荷物を最大限まで載せやすくしたり、助手席までラクに倒せてフルフラット化できるシートアレンジなどハイゼットキャディーよりも圧倒的な使い勝手の良さでヒット。
アクティバンの後継モデルということもあり、ハイゼットキャディーのような販売不振とはならず大成功している。
特にこの使い勝手の良いN-VANの登場や自社のハイゼットカーゴに需要を食われ、ハイゼットキャディーは思ったほど販売が伸びなかった。
エクステリア(外装)
出典:ダイハツ認定中古車
フロントデザイン。ハイゼット キャディーでは(後期ウェイクの廉価グレードでも採用された)シンプルなマルチリフレクターヘッドライトを採用した。
ウェイクではプロジェクター式ヘッドライトで上級モデル感のつよいデザインだったが簡略化により商用モデル感が強くなった。
加えてグリルはボディ同色でバンパーも無着色の商用タイプが付く。また、ウェイクでは専用エンブレムだったのがハイゼットキャディーではブランド共通のダイハツエンブレムに変更された。コテコテだったフロントデザインはかなりシンプルなデザインとなってすっきりとした印象をうける。
なお、ウェイクにあったフォグランプは「スタイリッシュパック」にてオプション化され、LEDフォグランプと14インチアルミホイールがセットになっている。
出典:JU適正販売店
ターボエンジンのXグレードではウェイクと同じLEDヘッドライトやフォグランプを標準装備する。
出典:ダイハツ認定中古車
サイド。パット見はウェイクと同じだが商用モデル化にともない外装が簡略化されている。パワースライドドアの非搭載に加え基本的には商用モデルなのでボディカラーはホワイト系1色のみにドアミラーは無着色、
足元はスチールホイールとなる。ただし、オプションの「カラーパック」を選択するとウェイクと同じボディカラー(全5色)が選択可能となる。
また、ドアミラーもDデラックス以上でウェイクと同じカラータイプで電動格納ミラーとなり、足元もただのスチールホイールから14インチフルホイールキャップ付きに変更される。
フロントガラスは全グレードでUVカットガラス。オプションの「ビューティーパック」を選択するとフロントドアにスーパーUV&IRカットガラスが付く。
出典:ダイハツ認定中古車
リア。コンビランプのデザインこそ同じだがコストカットのためハイゼットキャディーでは非インナーメッキのシルバー塗装タイプに変更された。
加えてLEDブレーキランプも省かれノーマルタイプとなった。もともとデザインが3代目タントに似ていたが、コストカットにより見た目がかなり近くなった。
車名エンブレムは商用モデルということでエンブレムタイプからデカールタイプに変更されている。
出典:JU適正販売店
なお、ターボエンジンのXグレードではウェイクと同じクリアーテールランプが採用される。
エンジン・機能装備・安全装備など
出典:ダイハツ認定中古車
エンジンはKF-VE型3気筒DOHC自然吸気エンジンとKF-VET型3気筒DOHCインタークーラー付きターボエンジンの2種類。
自然吸気エンジンでは最高出力52ps(38kW)/6800rpm、最大トルク6.1kg・m(60N・m)/5200rpm。
ターボエンジンでは最高出力64ps(47kW)/6400rpm、最大トルク9.4kg・m(92N・m)/3200rpmを発生する。
このほか、ミライーステクノロジーからクールドi-EGR(※自然吸気エンジンのみ)、CVTサーモコントローラー、エコ発電制御などを適用。
また、エコドライブアシストを全グレードで備えドライブ面でも低燃費をサポートする。トランスミッションはCVTのみで駆動方式はFFまたは4WD。
このあたりはウェイクと同じ構成で商用モデルでありながらターボモデルを設定している。
グレード別で 衝突回避支援ブレーキ機能の作動範囲拡大、衝突警報機能の歩行者検知機能、車線逸脱警報機がプラスされた「スマートアシストⅡ」をグレード別に設定。軽貨物車の中でも自動ブレーキの面を強化している。
この他全グレードでVSCとABSを標準装備。アイドリングストップも標準装備となる。
燃費性能は燃費の良い乗用モデルベースもあってか廉価グレードのD、FFモデル(自然吸気エンジン)で25km/Lを達成。
従来モデルのハイゼットカーゴの5MT、FFモデル(自然吸気エンジン)が17.2lm/Lなので同年代のハイゼットカーゴと比較しても燃費の面ではかなり良くなっている。
2017年11月の一部改良ではスマートアシストⅡがスマートアシストⅢ(SAⅢ)にアップグレード。リアコーナーセンサーもSAⅢには標準装備となり、自動ブレーキ機能が強化された。
LA700VとLA710V型との違い
ハイゼットキャディーLA700VとLA710Vとの違いは駆動方式。LA700Vは前輪を駆動するFFモデルのハイゼットキャディー。
LA710VはLA700Vをベースに全輪を駆動する4WDのハイゼットキャディー。4WDのシステムにはハイゼットカーゴとは異なり、ビスカスカップリング式のオンデマンド4WDが採用される。
これは普段はFFで走行し、悪路や雪道などで前輪と後輪の差分が発生すると自動的に4WDに切り替わるタイプ。
ジムニーやパジェロミニなどのパートタイム4WDと比べると自分で切り替える必要がなく、タイトコーナーブレーキ現象も発生しないので扱いやすく、街乗り4WDで一般的に採用されることが多い。
インテリア(内装)
出典:ダイハツ認定中古車
インパネ。ウェイクベースのため商用モデルにしてはデザインがかなり良い。
Dグレードではブラックカラーのシンプルな配色となる。
カラーパックを選択するとカップホルダーやオーディオクラスターがシルバー塗装される。ステアリングは最廉グレードのDがベーシックなウレタンステアリングホイールに対し、Dデラックスグレード以上ではメッキオーナメント付きウレタンステアリングホイールとなる。
プッシュスタート式のエンジンスタートはオプションの少量パックに設定。セキュリティーアラームはXとDデラックスグレード以上で標準装備。その他は少量パックに含まれる。
この他インパネには商用モデルらしく多数の収納を用意。
スピードメーター。DグレードとDデラックスグレードではタコメーター無し。
出典:ダイハツ認定中古車
最上級のXグレードではタコメーター付き3眼式となる。共に自発光式メーターで右上にマルチインフォメーションディスプレイを備える。
シフトはインパネシフトで、エアコンは全グレードでマニュアル式エアコン。
出典:ダイハツ認定中古車
フロントシートはセパレートタイプ。ウェイクではベンチシートだったが商用モデル化にともないセパレート化された。シート形状や表皮は従来の商用モデルにはない上級のもので、乗り心地や快適性に貢献する。
ハイゼットカーゴでもクルーズやクルーズターボには上級セパレートシートが採用されるが、ハイゼットキャディーの方がシート形状も生地もワンランク上。
出典:ダイハツ認定中古車
リアシートは無し。常にこの状態で荷物が積みやすくなっている。当然ながら最大乗車人数も2名に限られる。
出典:ダイハツ認定中古車
ラゲッジルーム。ウェイク譲りの広々とした荷室を確保。助手席は前側に倒すことも可能で、N-VANのようなフルフラットにはならないが、一応長ものも積むことはできる。
軽商用ワンボックスのハイゼットカーゴ等と比較すると荷室長さが狭め(ハイゼットカーゴは1860mm)だが、メーカー曰く十分な積載量は確保されているとのこと。
まとめ
出典:ダイハツ認定中古車
ダイハツのハイゼットキャディーはウェイクをベースに今まで無かった乗用モデルのような軽貨物車としたモデルである。
確かに最近ではネット通販による個人宅配重要増により運送業でも女性が働くケースが増えており、女性目線では従来の商用軽ワンボックスでは不満な点が多いと思われる。
そこに目を付けたダイハツの戦略といえるモデルだ。一方であまり売れないウェイクの苦肉の策との見方もあり、それまでのウェイクユーザーからしてみると残念に感じる部分も多いだろう。
価格も最廉価のDグレード、FFモデルで120万程度からと軽商用モデルとしてはちょっと高めでここは快適性を取るか値段を取るかでハイゼットキャディーの価値観がかわってくる部分。
後追いでスズキが何か出すのかとおもいきや、ホンダがN-BOXベースでN-VANを登場させるなど、FFレイアウトの軽バンにライバルが登場することとなった。
そして最後はやっぱりスズキもスペーシアを4ナンバー化した「スペーシアベース」を登場させ、対抗モデルをラインナップさせている。
ただし、先出しのハイゼットキャディーは上述の不人気な点から2021年9月に販売終了。ベースとなったウェイクも2022年内に販売終了の話があり、ウェイク&ハイゼットキャディーは完全に終了となる。
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