ミラジーノはダイハツのハッチバック型軽自動車。本稿では初代L700SおよびL710Sの中期に設定されていた3ドア・ターボグレードの「ジーノS」を扱う。
概要
1999年3月登場のダイハツ・ミラジーノ。初代のミラジーノは先にデビューした5代目ミラをベースにクラシック風の外観と内装をまとわせたモデルである。
ターゲットはクラシック志向層。この手のパイオニア的存在であるスバル・ヴィヴィオ ビストロの大ヒットにより1990年代中盤ではホンダを除くスズキ、ダイハツ、三菱、マツダの各社が後追いする形で既存モデルをベースとしたクラシック風モデルを展開していた。
そこから軽クラシックモデルの需要を見出したダイハツが、1998年10月の軽乗用車新規格後に新たに登場させた本格クラシックテイストの軽乗用車がミラ・ジーノである。
ミラジーノは5代目ミラをベースに専用設計したボンネットフードとフェンダー、丸型マルチリフレクターヘッドライト、バンパーメッキモル、大型メッキグリル、専用リアコンビランプなどでベースとは異なるクラシックな雰囲気を演出。
内装でもウッドステアリングやウッド調パネル、専用シートに、専用ドアトリムクロスに専用ホワイトメーターなどを与えミラよりも上級かつファッショナブルなミニセダンとなっていた。
メカニズムは5代目ミラと同じくEF型の3気筒自然吸気エンジンとターボエンジンの2種類を設定。特にターボ仕様(ミラジーノ ターボ)には5MTも設定され、前モデルのミラ・クラシック時代とは異なり、走りを求める男性にも人気のモデルであった。
このほかに衝突安全ボディのTAFを採用し新国内衝突安全基準および新欧州衝突安全基準に余裕をもたせたて対応。
運転席エアバッグの標準装備やブレーキアシスト付きABSのオプション設定など安全面でも順当な進化を果たしていた。
初代ミラジーノ 3ドア仕様ジーノSの特徴・他との違い
ミラジーノはデビュー当初からターボエンジン&5MTのグレードを設定し軽自動車のメインユーザーである女性だけでなく、男性ユーザーをターゲットにしたグレード展開を行なっていた。
そのミラジーノの2000年10月マイナーチェンジ(中期型)で追加されたのがこの「ジーノS(もしくは単にS)」というグレードだ。
ジーノSではそれまでのミラジーノに存在しなかった3ドアモデルを新たに採用し、人気の特別仕様車、ミニライトスペシャルと同じフォグランプ、ミニライト製アルミ、メッキドアハンドルやメッキドアミラーなど精悍さとスポーティさをアップさせたグレード。
エンジンもEF-DET型水冷直列3気筒DOHC12バルブICターボエンジンのみの設定で、これに5MTまたは4ATを組み合わせ、初代ミラジーノの中でもよりスポーツ志向なホットモデルとしていた。
エクステリア(外装)
フロントデザイン。ジーノSではミニライトスペシャルと同様にフォグランプ付きグリルを装着。イエローのレンズもオシャレで丸目のミラジーノのフロントデザインにアクセントを与えている。
パット見このあたりではミニライトスペシャルかジーノSかの見分けは付かない。
サイドから。メッキドアミラーとメッキドアハンドルが標準で付く。ジーノSではサイドボディ上部にラインが入り、ラインの一番後ろには「Gino S」のデカールが付く。この点はミニライトスペシャルと違う。
5枚ドアでは後部ドア確保のためフロントドアが狭く、小さなボディに無理やりはめ込んだ感じがあったが3ドアではそれがなく、広々としたフロントドアで軽自動車でありながらスタイリングは独特。
このスタイリングの良さに加え5MTとターボモデルの設定から一部のマニアの間でジーノSは大人気なのだ。
足元はミニライト製14インチアルミホイールを標準装備。タイヤサイズは165/55R14。
リア。リアハッチ左側に専用の「Gino S」エンブレムが付く。ミニライトスペシャルではミニライトロゴだったのでリアではより違いが明確だ。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンは3気筒のEF-DET型インタークーラー付きターボエンジンのみ。最高出力は64ps(47kW)/6400rpm、最大トルクは10.9kg・m(107N・m)/3600rpm。
トランスミッションは5MTまたは4AT、駆動方式はFFまたは4WDとなる。3ドアボディのおかげで5ドアのジーノ・ターボより10kgほど車重は軽い(FF・5MTモデル)。
安全装備として運転席&助手席エアバッグを標準装備。ABSはオプション設定。
L700SとL710Sの違い
L700SとL710Sの違いは駆動方式にある。L700Sは前輪駆動のFFモデル。L710SはFFベースの4WDモデルとなる。なお、ベースモデルのミラとは型式がまったく同じで、専用外装や専用内装以外の基本部品は全く同じ仕様となる。
L710Sの4WDシステムにはビスカスカップリングが用いられ、普段はFFで走行し負荷が加わると自動的に4WDに切り替わるタイプ。ジムニーなどのパートタイム4WDと比べ街乗りでは扱いやすく、タイトコーナーブレーキング現象も起きづらいため街乗り4WDには多く用いられる。
ただし、ビスカスカップリングには寿命があり過走行な4WDミラジーノ(L710S)の場合、ビスカスカップリングが寿命を迎えている場合がある。カーブや駐車時などハンドルをきり後方から異音がしないか確認することをオススメする。
インテリア(内装)
ミラジーノSのインパネ。ジーノSではノーマルのウッド調パネルではなく、スポーティーなシルバーパネルに変更。本革巻ステアリングホイールはオプション設定となる。
スピードメーターはノーマルと共通。右側にタコメーター、真ん中にスピードメーター、左側に燃料計と水温計を備える3眼式。
フロントシートはセパレートタイプ。こちらはジーノS専用のシート表皮となっている。
リアシート。3ドアモデルなので足元は狭め。ただ、商用モデルの3ドアのリアシートを比べるとかなり作りは良い。
ラゲッジルーム。3ドアモデルなのでリアシートが起きた状態でも基本的に広い。
まとめ
初代のミラジーノSは3ドアモデルのスタイリングに5MTとターボエンジンを設定するスポーティなグレードである。
同様の外観のミニライトスペシャルは3ドアでもターボモデルが無かったり、後期でターボモデルが追加されるも5ドアと、この独特の3ドアでターボ&5MTはジーノSのみとなっている。
また、販売期間も1年ほどと短期間だったため中古市場ではタマ数が少ないにもかかわらず人気のためほとんどみかけることは無い希少モデル。
それゆえに状態が良い、特に超希少なジーノSの5MT&ターボだとプレミアムな高値にも。
手頃とは言えない部分があるが現行にはまずないホット&レトロないモデルで、中古車としても未だ魅力あるモデルである。
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