パレットはスズキのトールワゴン型軽自動車。スペーシア(MK23S)の前身モデルである。本稿ではそのターボ仕様車である「T」グレードの後期型(2010年8月以降)を扱う。
出典:ガリバー
初代 スズキ・パレットとは?
2008年1月に登場したスズキのパレット。
それまでのワゴンRよりも全高が高く、エンジンをボンネット内部に収めるトールワゴン型としてスズキでは初のモデルであった。スズキ自身は公言していなかったが、似たような全高とボンネットにエンジンを持つトールワゴン型のダイハツ・タントのライバル車種であることは明らかであった。
外観は室内空間の広さを感じさせるロングルーフデザインにヘッドライトから続く伸びやかななベルトラインの採用で、全長や全幅こそそれまでのワゴンRなどと変わらないものの、視覚的にもゆとりあるデザインとした。また、すべてのピラーをブラックアウトととし、連続したガラスエリアによる開放感も演出した。
パッケージングはホイールベース2400mmの新設計プラットフォームに2025mmの室内長を確保。後席の居住性を向上させるととももにハイルーフ化で1365mmの室内高を確保。デビュー当時としてはトップクラスの室内高をほこった。
便利機能としては独立したボンネットにエンジンを収めるボンネット型軽自動車としてはクラス初となる後席の両側スライドドアを全車に採用(当時のタントは片側スライドドアのみ)。また、上級グレードでは携帯リモコンから開閉操作可能なパワースライドドアとスライドドアクローザーを採用した。
快適装備ではエアコンの冷風を利用する保冷機能付き助手席アッパーボックスや豊富な収納スペースを用意。上級グレードでは抗アレルゲン+カテキン・エアコンフィルターを標準装備とし、全グレードで自発光式メーターを採用。上級グレードではタコメーター付きの3連タイプとした。
後期型パレット(MK21S)Tとは?特徴と前期型パレットターボとの違い
標準パレットのターボモデルはデビュー当初、Tと上級のTSグレードとして設定されていた。
パレットTでは標準パレットの上級ターボ仕様として「スポーティな専用メッキフロントグリル」を専用装備。
追加で最上級のTSグレードでは
- アンダースポイラー
- ルーフエンドスポイラー
をまとうフルエアロ仕様に
- アルミホイール
- 60馬力のターボエンジン
- パレットSWと同じブラック内装
- タコメーター付きの3眼式メーター
- 10スピーカーシステム
などかなりスポーティな内外装が特徴だったが、2009(平成21)年9月の2型改良時にパレットSWとの入れ替えで一旦消滅。
その後2010(平成22)年8月の3型マイナーチェンジで復活となった。本稿で扱うのはこの3型以降となる。
後期型パレットターボでは最上級のTSグレードを廃止。
Tグレードのみに集約し、外観でも同じフロントメッキグリルを装着するもののアンダースポイラーやルーフエンドスポイラーはオプション化。
さらにアルミホイールもオプション化されフルホイールキャップが標準装備となりかなり大人しい外観に。
内装でも専用ブラック内装を廃止し、標準パレットと同じベージュ内装に。スピードメーターもパレットSWの3眼メーターを廃止して標準パレットと同じ1眼メーターに変更するなど内外装でコストダウンが行われた。
その一方でターボエンジンを64馬力のハイプレッシャーに変更したり、新たにCVTを採用するなど燃費向上が図られたマイナーチェンジでもあった。
後期型パレットTのエクステリア(外装)
出典:ガリバー
フロントデザイン。Tグレードでは専用のメッキグリルを装着する。ノーマルモデルでは黒系のベーシックなグリルだったためワンポイントのアクセント効果により精悍さがアップしている。
後期型ではTSにあったフロントアンダースポイラーの標準装備を廃止してオプション化。そのためノーマル状態だとメッキフロントグリル以外はかなり大人しい外観となった。さらにヘッドライトのプロジェクター式ディスチャージヘッドライトも後期型では廃止されている。
出典:ガリバー
サイド。LEDサイドターンランプ付きドアミラーとサイドアンダースポイラーが後期型では廃止。Tグレードでは引き続き携帯リモコンに対応した両側パワースライドドアとスライドドアクローザーを標準装備。
出典:ガリバー
足元は14インチフルホイールキャップ。前期では標準でアルミホイールだったが、オプションすら廃止されている。
出典:ガリバー
リア。後期型では前期にあったルーフエンドスポイラーとリアアンダースポイラーを廃止してオプション化。そのためノーマル状態では限りなく非ターボ仕様と同じ見た目に近くなった。このあたりもかなり大人しい印象だ。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンはK6A型3気筒DOHCインタークーラー付きターボエンジン。後期型ではMターボからハイプレッシャーターボに置き換えられ、最高出力は60ps(44kW)/6000rpm、最高出力は64ps(47kW)/6000rpm、最大トルクは9.7kg・m(95N・m)/3000rpmとなる。
トランスミッションは4ATにかわり、新たに副変速機付きCVTを採用。これにより燃費が向上し、かつ高速域での巡航時のエンジン回転数も下がり静粛性もアップした(燃費はFFモデルで4ATでは18.6km/l、FFのCVTでは21.0km/l(10モード/10・15モード燃費))。駆動方式はFFまたは4WDとなる。
これ以外ではフロントスタビライザーを標準装備し、背の高い軽自動車でありがちなカーブ時のロールを低減しつつ快適な乗り心地を確保。また、エンジンルーム内にエンジンからの放射音を低減する吸音処理を施したことで防音・防振対策ボディとした。
後期型パレットTのインテリア(内装)
出典:ガリバー
インパネ。前期のターボ仕様ではパレットSWと同じブラック内装だったが、後期型では標準パレットと同じベージュ内装に変更された。ステアリングもウレタンステアリングホイールとなる。
エアコンはフルオートエアコンにプッシュエンジンスタート&キーフリーシステムを標準装備する。
出典:ガリバー
スピードメーターはタコメーターが付かない1眼式自発光式メーター。標準パレットとまったく同じ仕様となる。後期型ではエコドライブインジケーターが追加されている。
出典:ガリバー
フロントシートはベンチシートタイプ。前期ではブラックシート表皮だったが、後期型では標準パレットと同じベージュ表皮に変更し、コストカットされた。
出典:ガリバー
リアシート。スライド機構付き。
出典:ガリバー
ラゲッジルーム。
出典:ガリバー
リアシートを倒した状態。パレットでは低床プラットフォームの採用により、軽自動車トップクラスの荷室床面地上高525mm (2WD車)を実現し高い荷室高を確保した。
これにより自転車をそのまま立てて載せられるほどなっている。その一方でスペアタイヤは省略化されかわりにパンク修理キットが付く。
後期型パレットTの評価
スズキ・パレットのターボモデルはベーシックなパレットにスポーティーな外観を与えターボエンジンを搭載したモデルである。後期型では内外装が前期がよりも簡素化され、大人しいデザインとなったが、エンジンの高出力化やCVTの採用により燃費向上がはかれれた。
前期型よりもかなり簡素化された背景には、当時はライバルのタントカスタム、N-BOXカスタムなどの販売好調からカスタムモデルのパレットSWに力を注いでいた部分があり、標準パレットのターボ仕様はそこまで重要視していなかったことが考えられる。
なお、パレットそのものは日産に「ルークス」としてOEM供給されたが後期型においてもノーマルベースのターボ仕様車である「T」相当するグレードは設定がなかった。よってスズキ版のみのターボ仕様車である。
前期と比較すると特別感が薄く、標準パレットにメッキフロントグリルとターボを載せただけというかなり存在感の薄いグレードとなっている。
そのため中古で購入する場合も前期よりもかなり大人しいデザインのためよく検討の上購入してほしい。その分CVT採用で燃費や巡航時の静粛性は良いのだが、中古価格も年式が若干新しいことから後期型パレットターボのほうが若干高めとなっている。
コメント