スピアーノはマツダのハッチバック型軽自動車。スズキの初代アルトラパンのOEMモデルである。本稿では2006年4月のマイナーチェンジ(後期型)で追加された「XF」グレードについて扱う。
概要
スピアーノではラパンと同じくそれまでの軽乗用車にありそうでなかった個性的な丸みを帯びた箱型フォルムの外観と家電や家具を意識した親しみやすい室内空間を与えた。
スピアーノが登場した時代では同社のAZワゴンをはじめとするトールワゴンが全盛期となる中、スピアーノは広さを最優先ではなく内外装のデザインを重視することで若い女性をメインターゲットとしていた。
スピアーノはマツダ仕様としてフロントグリルをアルトラパンのうさぎを用いず4代目・後期型キャロルのようにマツダのファイブポイント(逆五角形)を用いたファミリーフェイスに変更。ボディカラーもマツダ専用色としてキプロスブルーメタリックを含む全9色を設定。
内装色もブルー(マツダオリジナル)とアプリゴット2色設定することで、カラーリングにこだわる若者を意識。インパネもそれまでのスズキOEMモデルとは異なるファッショナブルなデザインで洗練されていた。
全高はほとんどの立体駐車場に入庫可能な1505mm(FFモデル)としながらも新設計により1255mmの室内高を確保。室内長も当時の背の低い軽乗用車としてはかなり長めの1655mmを確保するなどスタイリングとパッケージングのバランスの取れたモデルとなっていた。
エンジンはアルトやワゴンRで実績のあるVVT機構付きのK6A型エンジンを採用。安全面でも64km/hオフセット前面衝突にも対応した、軽量衝撃吸収ボディーTECT(テクと)を採用しこれ以外に運転席&助手席にSRSエアバッグとシートベルトフォースリミッター、シートベルトテンショナーを標準装備。ABSもオプション設定するなど安全面でも装備を充実化していた。
スピアーノは2006年4月のマイナーチェンジで後期型となった。後期型では従来のノーマルモデルで大きな変更はなかったものの、個性的な外観を採用した新グレード、「XF」を追加。これはスズキの「Lグレード」に相当するもので特徴的な丸目ヘッドライトと伸びやかなフロントグリルによりファッショナブルかつ親しみやすい外観とした。
また、このマイナーチェンジで一旦廃止されていたハイプレッシャーターボのスピアーノSS(ラパンSSのOEMモデル)がそれまでの「スピアーノTubro」に置き換わるかたちで復活。
さらにボディカラーでは新色、「ライムグリーンメタリック」を追加。内装ではデザインの変更はないものの、GとXFグレードではボディカラーとの組み合わせで従来のブルーと新たにイエローのシート&ドアトリム表皮を設定。内外装で魅力をアップさせたマイナーチェンジとなった。
後期型スピアーノ XFグレードとノーマルとの違い
後期型で追加されたグレードの一つにヘッドライトを大胆にも丸目としレトロ感を強くした個性的なモデルがあった。それがこの「XF」というグレードである。
エクステリアにはベースとは異なる丸目ヘッドライトを採用。グリルも非ファイブポイントのオーソドックスな3連タイプとしつつもガンメタリックで塗装。ボディ下部はシルバー塗装&アルミホイールを標準装備し、クリアーテールランプ、電動格納式リモコンドアミラーを。
インテリアではアナログクロックにAM/FMチューナー付MD/CDプレイヤー(2DIN・MDLP対応)+6スピーカーを標準装備とし、内外装でベースモデルよりも個性と魅力を高めたグレードとなっていた。
エクステリア
フロントデザイン。もともとこの丸目はスポーティな「スピアーノSS」というグレードで使われていたが、このマイナーチェンジでベーシックな自然吸気モデルでも採用となった。
ベースモデルのアルトラパンでは同時期に同じような自然吸気の丸目モデル「L」を追加しているが、スズキ版ではメッシュグリルとメッキによりレトロ感を表現しているのに対し、マツダ版ではガンメタ色にオーソドックスなグリル開口部で眼力を強調したデザインを採用した。
スズキ版とに比べても差別化がきちんと行われており、ワンアクセントの面白みがこのXFで生きたデザインとなっている。
サイドから。レトロ感のあるスポークデザインのアルミホイールを標準装備。ちなみにこのホイールはラパンで採用されているものと同じデザインだ。さらにアンダースカートの部分は色が塗り分けられこちらもちょっとしたアクセントとなっている。
リア。後期型なのでコンビランプはクリアータイプに。スズキ版とちがってマツダエンブレムにSpianoの車名エンブレムがしっかり入る。なお、初代アルトラパン同様、ラパン用の社外テールランプが流用可能でコンビランプに物足りなさを感じる人は交換を検討するといいだろう。ユーロテールのようなデザインのものなど複数がリリースされている。
※ユーロテールの一例
エンジン・機能
「XF」グレードではエンジンは3気筒の自然吸気のみで最高出力は54ps(40kW)/6500rpm、最大トルクは6.4kg・m(63N・m)/3500rpmを発生。トランスミッションは4ATのみ、駆動方式はFFまたは4WDだ。
インテリア
インパネ。
スピードメーター。
フロントシートはベンチシートタイプ。
リアシート。中身は初代ラパンなので2代目以降よりは若干足元が狭い。
ラゲッジルーム。
まとめ
リアシートを倒した状態。このあたりの使い勝手はワゴンRクラス以上のものより高さが無いものの、程よく荷物が乗る広さが確保されている。
スピアーノのXFはターボモデル以外のベーシックモデルで追加された丸目モデルで、スズキ版と差別化された個性あるモデルである。まるでパンダのような顔つきは好き嫌いが別れる点かもしれないが、気にいれば長く愛せるデザインとなっていてそういった個性や可愛らさなど他人とは違う軽自動車を探している人向けなモデルといえよう。
中古市場では流石にベースが現行よりも3世代前ということもあって個体によっては比較的安価に入手できる価格となっている。タマ数が少なく探すのが難しいが、うさぎの無い初代丸目ラパンとして隠れた良デザインの1台だ。
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