ムーヴはダイハツのワゴン型軽自動車。本稿では5代目・LA100SおよびLA110S系の後期型(2012年12月マイナーチェンジ~2014年11月)に設定された特別仕様車の「L VS」、「VSスマートセレクションSA」、「VSスマートセレクションSA&SN」を扱う。
概要
2010年12月にフルモデルチェンジし、5代目となったダイハツのムーブ。
先代の4代目で印象的だったエレガントな外観を引き継ぎ、ワンランク上となっているのが5代目の特徴である。モデル構成も伝統的に「ノーマルムーブ」とターボエンジングレードを展開するカスタムモデルの「ムーブカスタム」の2本立てとし、スポーティー路線のムーブカスタム。ベーシックなノーマルムーブという基本戦略は変わらないものの両者ともより上級感がアップした。
メカニズムでは5代目ムーヴでは先代よりも35kg程度軽量化を行い、改良型KFエンジンを採用。トランスミッションも全グレードでCVTに統一。アイドリングストップも電動オイルポンプを廃止し、変速制御域の最適化を行なった。また、カスタムのナンバープレートをリアゲート上に変更したり、ノーマルムーヴからドアミラーターンランプが廃止となるなどコストカットも行われた。
エコ分野では5代目で初めてとなるストップランプのLED化で省電力をアップ。ノーマルムーヴとムーヴカスタムの両方でLEDストップランプが標準採用となった。これに上述のエンジンやトランスミッション。アイドリングや省電力化によりFFモデルでは27.0km/L(10.5モード)の低燃費を実現した。
安全面では「セーフティパック」(SRSサイドエアバッグ、SRSカーテンシールドエアバッグ、ダブルプリテンショナー&フォースリミッター機能付きフロント3点式ELRシートベルトの3てんセット)がムーヴカスタムにオプション設定。
カスタムのRSには「インテリジェントドラインビングアシストパック」(衝突被害軽減ブレーキ、車載カメラを利用した車線逸脱防止支援機能、VSC、全車速対応型レーダークルーズコントロールの4点セット)もオプション設定となっていた。
その5代目の登場から約2年後の2014年12月にビッグマイナーチェンジをして登場したのが5代目・後期型ムーブだ。後期型では当時のスズキとの熾烈な競争、そこにNシリーズで割って入ってきたホンダに対向するためフルモデルチェンジに匹敵するぐらいの大幅なマイナーチェンジとなった。
後期型で最も大きい変更はフロントデザイン。フルモデルチェンジかと間違うぐらいの変貌ぶりで前期型の上級なキャラクターは完全消滅。変わってベーシック感を強めた万人受けしやすい顔つきへと変化した。メカニズムではミライースの「e:Sテクノロジー」をさらに進化させ軽自動車初の「CVTサーモコントローラー」を採用。
エコアイドルも車速9km/h以下でアイドリングストップするよう停止タイミングを変更したことでアイドリングストップ時間が延長し、無駄な燃料の消費を抑えた。また、CVTにおいて変速ギアのハイギヤード化。ボディも空力抵抗を抑え車高を落としたことでFFモデルでは29.0km/L(JC08モード)を達成した。また、後期型ではスタビライザーをノーマルムーヴにも採用(4WDはフロントのみ採用)した。
安全技術としては「スマートアシスト」(低速域衝突回避支援ブレーキ機能、誤発進抑制制御機能、先行車発進お知らせ機能・VSC&TRCのセット)を一部グレードで標準装備。万が一の自動ブレーキ機能を選択できるようにした。
5代目・後期型ムーヴ(LA100S/LA110S)L VS/L VSスマートセレクションSA・SA&SNの特徴と違い
そして2014年5月。内外装に専用品を用い魅力を向上させた特別仕様車を設定した。それがこの「L VS」、「L VSスマートセレクションSA」、「L VSスマートセレクションSA&SN」である。
「VS」という特別仕様車は3代目ムーヴで初設定されたものでエアロパーツやブラック内装でスポーティーな外観に仕立てたモデルである。4代目ではスポーティ路線から若干はずれラグジュアリー路線に変更となったが、今回の5代目後期型では再びスポーティ路線に回帰となった。
VS仕様として外装ではフロントコーナースポイラー、サイドストーンガード、リヤスポイラー、クリアサイドターンランプ、14インチアルミホイールを標準装備。
内装ではカスタム用の自発光式3眼メーターにシルバーセンタークラスター、ブラックインテリア(ドアトリム、シート、インパネのブラック仕様)を与え便利機能としてキーフリーシステムとプッシュボタンスタートを標準装備とし、内外装で精悍なイメージを与えている。
エクステリア
フロントデザイン。2012年12月マイナーチェンジで5代目ムーヴはフロントデザインの大幅変更を実施。それまでは4代目ムーヴから続くエレガントなヘッドライトや上級感あふれるグリルとなっていたが、これをベーシックなインナーブラックの角型ヘッドライトとメッキグリルに変更した。
VS仕様としてはLグレードをベースとし、バンパー下部にフロントコーナースポイラーを与えベーシックでありながら少しスポーティな印象とした。
サイド。VS仕様としてサイドストーンガードとクリアーサイドターンランプを標準装備。スマートセレクションSAではフロントドアがスーパーUV&IRカットガラスとなる。
足元はVS仕様として14インチアルミホイール。
リア。VS仕様としてリヤスポイラーを標準装備。リアバンパーのスポイラーは省略されている。
エンジン・機能
搭載するエンジンはKF型3気筒DOHC自然吸気エンジン。最高出力は52ps(38kW)/6800rpm、最大トルクは6.1kg・m(60N・m)/5200rpmを発生。
ビッグマイナーチェンジ当初はターボモデルは毎度のことカスタムのみの設定だったが、後の改良で非カスタムのムーブにも設定された(※グレード名:Xターボ)。駆動方式はFFか4WDで、トランスミッションはCVTのみ。
安全装備としてABS、EBDを標準装備。これに加えてスマートセレクションSAでは衝突安全回避支援システムの「スマートアシスト」を標準装備とした。
インテリア
インパネ。VS仕様としてカスタム用のブラックインテリアを採用しスポーティな印象とした。
加えてセンタークラスターをシルバーパネルに変更しワンポイントのアクセントも与えている。なお、スマートセレクションSNではスマートフォン連携メモリーナビゲーションシステムとスーパーエアクリーンフィルターが標準装備(※ただしLグレードベースのためエアコンはマニュアル式)となる。
スピードメーター。VS仕様としてカスタム用の3眼式自発光式メーター(タコメーター付き)となる。
エンジンスタートはVS仕様として上級グレードに標準装備のプッシュボタンスタートを与えた。加えてキーフリーシステムもプラスされる。
フロントシートはベンチシートタイプ。こちらもVS仕様としてカスタム用のブラックシート表皮とドアトリムクロスが与えられた。
リアシート。
ラゲッジルーム。
リアシートを倒した状態。
まとめ
5代目・後期型ムーヴに設定された「VS」は、ベーシックなLグレードをベースに外装ではエアロパーツやアルミホイール、クリアーサイドターンランプでスポーティな印象に。内装でもカスタム用のブラックインテリアや3眼式自発光式メーターの採用で上級感を与え内外装で魅力をアップさせた特別仕様車である。
過去のムーヴにもVSというグレードがあったが、概ねそれに準ずるもので標準仕様とは異なるスタイリッシュな追加装備が嬉しい1台といえよう。
なお、本稿では扱っていないが、5代目後期型ムーヴではこのエアロパーツとブラックインテリアを与えたVSのターボ仕様(Xターボ VS)も同時設定され、ターボ車がほしいという需要にも答えられるようになっていた。
中古市場ではこの自然吸気エンジン仕様よりもさらにタマ数が少ないのだが、ムーヴカスタムとはまた異なる「ベーシックでありながらほどよくスポーティでターボ付き」という独特の特徴があるため、気に入った場合は根気よく探してみるといいだろう。
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