N-WGNはホンダのワゴン型軽乗用車。「N-WGN カスタム」はそのカスタムモデルである。本稿では初代JH1およびJH2系の後期(2016年6月マイナーチェンジ~2019年7月)に設定された特別仕様「SSパッケージⅡ」と「ターボSSパッケージⅡ」を扱う。
出典:ホンダ認定中古車
初代 ホンダ・N-WGNとは?特徴など
N-BOX、N-ONEに続くNシリーズとして2013年11月にデビューしたN-WGN(エヌワゴン)。
Nシリーズ最後発のこのモデルは、かつて販売されていたゼストとライフの後継モデルとして、売れ筋であるムーヴやワゴンRのライバル車種として投入された。
ライバルと似たような売れ筋のボディフォルムにホンダらしい直線基調のフロントデザインを与えたことでノーマルモデルでもベーシックでありながら非ファニー(可愛らしい)系の万人向けするデザインとなっている。
モデル構成は他社と同様にノーマルモデルのN-WGN、カスタムモデルのN-WGNカスタムの2種類を設定。
スズキやダイハツと違うのはデビュー当初からノーマルモデルでもターボエンジンモデルを設定する点で、ターボモデルにありがちな極端な価格上昇を抑えている点は良心的だ。
出典:ホンダ認定中古車
エンジンはN-BOXやN-ONEと同じS07A型を採用。これにCVTを組み合わせ、ゼスト時代の4ATは完全廃止された。
S07A型はナトリウム封入バルブやツインインジェクションシステムの採用で優れた低燃費と高出力&高トルクを両立させた。エンジン技術に定評のあるホンダらしいエンジンである。
安全技術としてはN-BOXやN-ONEと同じていたエマージェンシーストップシグナル、VSA、ヒルスタートアシスト機能を全グレードで標準装備。
自動ブレーキのシティブレーキアクティブシステムはサイドカーテンエアバッグシステム・前席用i-サイドエアバッグシステムをセットにした「あんしんパッケージ」としてグレード別にオプション設定または標準装備となる。
初代 N-WGNカスタムとは?
そのN-WGNにスタイリッシュな専用パーツを内外装で採用し、質感やスポーティ感を高めたカスタムモデルがN-WGNカスタム。
エクステリアには
- 専用ヘッドライト(ディスチャージヘッドランプ)
- 専用グリル
- 専用エアロバンパー
- サイドアンダースポイラー
- ルーフエンドスポイラー
- クリアーテールランプ
- アルミホイール
- LEDターンランプ付きドアミラー
などを標準装備し標準モデルと差別化。インテリアでも
- カスタム専用ブラックインテリア
- カスタム専用インパネ
- 革巻きステアリング+ピアノブラック調ステアリングガーニッシュ
- バイオレットイルミネーション照明
など上質な室内空間が特徴のモデル。スズキならワゴンRスティングレー、ダイハツはムーヴカスタムに相当するモデルで、かつての売れ筋モデルのライバル車種となるべく投入された。
初代・後期型N-WGNカスタムの改良点と前期との違い
そのN-WGNカスタムは、N-WGNと同様に2016年6月マイナーチェンジで、フロントデザインの変更を伴い後期型となった。
後期型のN-WGNカスタムでは新デザインのメッキグリルを採用した他、フォグランプまわりをメッキ化。前期よりも精悍さをアップさせた。
ボディカラーもタフタホワイトII、ルナシルバー・メタリック、シャイニンググレー・メタリック、クリスタルブラック・パール、ブリティッシュグリーン・パールの新色5種類を追加。
インテリアではLEDルームランプを標準装備とするなど前期よりもより魅力をアップさせたマイナーチェンジとなっている。
初代N-WGNカスタム特別仕様車 SSパッケージⅡ/ターボSSパッケージⅡとは?
そのN-WGNカスタムに2016年12月に設定せれた特別仕様車が「SSパッケージ」と「ターボSSパッケージ」SSとはSuzukaSpecialの略で、ホンダの鈴鹿製作所の名前をあしらった特別モデル。
先に登場したSSパッケージ、ターボSSパッケージⅡのグレードアップ版。
SSパッケージⅡの特別装備とSSパッケージとの違い
2018年7月設定の特別仕様車。後期SSパッケージの第2弾。
ベースモデルを「G・Lパッケージ」とし、G・Lパッケージの装備に加えて
- あんしんパッケージ(シティーブレーキアクティブシステム、サイドカーテンエアバッグなど)
- 運転席&助手席シートヒーター(第2弾で追加)
- 本革巻セレクトレバー(ホワイトステッチ)
- 常時点灯3眼メーター(ホワイト照明)
- ホワイトイルミネーション
(スライドセンタートレー、フット〈運転席/助手席〉、ドリンクホルダー〈運転席/助手席〉) - 専用色としてサンセットオレンジⅡを設定
を標準装備しつつ、お買い得とした特別仕様車。
第2弾のSSパッケージでは運転席&助手席シートヒーターが追加で標準装備となったほか、ボディカラーでは「サンセットオレンジ」が専用色として追加された。
ターボSSパッケージⅡの特別装備
2018年7月設定の特別仕様車。後期ターボSSパッケージの第2弾。
ベースモデルを「ターボG・Lパッケージ」とし、上記SSパッケージⅡの装備に追加で
- 本革巻ステアリングホイール(パンチング&スムースレザー、ホワイトステッチ)
- サイドシルガーニッシュ(アルミ調フィルム加飾付)
- 15インチアルミホイール(ベルリナブラック塗装+切削+クリア塗装)
- 専用色としてサンセットオレンジⅡを採用
を標準装備しつつ、お買い得とした特別仕様車。
第2弾のターボ仕様では本革巻きステアリングにパンチング&スムースレザーとホワイトステッチを追加し、ベルリナブラック塗装+切削+クリア塗装の15インチアルミホイール、が追加装備となり、ボディカラーも「サンセットオレンジ」が専用色として追加された。
ベースモデル(G・Lパッケージ)の装備内容
これ以外はベースモデルの「G・Lパッケージ」と同じでエクステリアでは
- カスタム用ヘッドライト
- LEDフォグライト
- カスタム用グリル
- カスタム用バンパー
- テールゲートスポイラー
- クロームメッキリアライセンスガーニッシュ
- クロームメッキアウターハンドル
- 14インチアルミホイール(自然吸気エンジンのみ、ターボは15インチ)
- クロームメッキ付きリアバンパー
インテリアでは
- ホワイトステッチ入り本革巻きステアリング
- クオリティインテリア
- クロームメッキプッシュエンジンスタート
- クロームメッキ・グローブボックスノブ、
- ピアノブラック調エアコンパネル
など内装が加飾タイプとなる。
快適装備は「360°スーパーUV・IRカットパッケージ」が適用され、
・IRカット〈遮熱〉/UVカット機能付フロントウインドウガラス
・IRカット〈遮熱〉/スーパーUVカットガラス(フロントドアコーナー/フロントドア)
・IRカット〈遮熱〉/スーパーUVカットプライバシーガラス(リアドア/テールゲート)
を標準装備しこのほかに
- プッシュエンジンスタート
- フルオートエアコン
- スマートキー
- チルトステアリング
- クルーズコントロール
- 運転席ハイトアジャスター
- ナビ装着用スペシャルパッケージ
- ETC車載器(ナビゲーション連動)
- 充電用USBジャック
- ハーフシェイド・フロントウインドウ
も標準装備する。
SSパッケージⅡ/ターボSSパッケージⅡのエクステリア(外装)
出典:ホンダ認定中古車
フロントデザイン。後期型モデルのためグリルデザインが変更されており、前期よりも造形が細かく、洗練されたデザインとなっている。
SSパッケージ仕様として専用品はなく、見た目はベースモデルと同じ。
出典:ホンダ認定中古車
ヘッドライトはロー側が全グレードでディスチャージヘッドライトとなる。
出典:ホンダ認定中古車
この他フォグランプのリフレクターを丸型から長方形へ。そのまわりにクロームメッキ・フォグライトガーニッシュをプラスしてバンパー部分でも精悍さをプラスさせた。なお、フォグランプはLED仕様となる。
出典:ホンダ認定中古車
サイド。デザインは同じで特に変更はないが後期型ではG・Lパッケージベースなので「360°スーパーUV・IRカット パッケージ」を標準装備。
ボディカラーは後期モデルで「シャイニンググレー・メタリック」、「クリスタルブラック・パール」、「ブリティッシュグリーン・パール」などが追加されたが、SSパッケージⅡではこれに専用色の「サンセットオレンジ」が選択可能となる。
LEDターンランプ付きドアミラー(オートリトラミラー仕様)は全グレード標準装備。ワンタッチでキーを解除する「Hondaスマートシステム」も全グレード標準装備。
出典:ホンダ認定中古車
足元は全グレード共通では「切削クリア塗装+ベルリナブラック塗装」の14インチアルミホイールを標準装備。タイヤサイズは155/65R14。
出典:ホンダ認定中古車
ターボSSパッケージⅡでは「スタイルアップパッケージ」としてオプション設定されていた専用デザインの15インチアルミホイール(ベルリナブラック塗装+切削+クリア塗装)が標準装備となる。
こちらのタイヤサイズは165/55R15。
出典:ホンダ認定中古車
リア。後期型ではリアバンパーの左右リフレクターの間にメッキガーニッシュが追加された。このあたりもベースモデルと同じ。特別仕様車を示す専用エンブレムは付かない。
出典:ホンダ認定中古車
コンビランプは前期と同じく、ポジション球点灯時はコの字型にLEDが点灯する。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンはS07A型3気筒のNAとターボの2種類を設定。
ターボエンジンは最高出力64ps(47kW)/6000rpm、最大トルク10.6kg・m(104N・m)/2600rpmを発生する。
自然吸気エンジンでも最高出力は58ps(43kW)/7300rpm、最大トルクは6.6kg・m(65N・m)/4700rpmと軽自動車のエンジンにしてはかなりの高出力。
これはツインインジェクションシステムとナトリウム封入排気バルブを採用したためで、スズキの「デュアルジェットエンジン」のような直噴エンジン並の燃焼効率が得られている。圧縮比も11.8とかなり高め。
トランスミッションは全グレードCVTのみで、駆動方式はFFと4WDが用意される。
この他アイドリングストップ機構を備え、安全装備としてはVSA(ABS+TCS+横すべり抑制)とヒルスタートアシスト機能が全グレードで標準装備。
約30km/h以下での前方車両との衝突の回避・被害軽減をサポートする「City-Brake Active System(シティブレーキアクティブシステム)は「あんしんパッケージ」はSSパッケージ仕様として標準装備とした。
なお、クルーズコントロールはオプション設定。
ホンダN-WGNカスタム JH1とJH2の違い
N-WGNカスタムのJH1とJH2との違いは駆動方式。JH1はフロントエンジン、フロントドライブのFF方式のN-WGNカスタム。JH2はJH1をベースに前輪を駆動する4WDモデルのN-WGNカスタム。
また、FFのJH1と4WDのJH2では全高と重量が若干異なり、4WDのJH2の方が20mm全高が高く、約50kg重たい。さらに最小回転半径もJH2の方が0.2m大きくなる。
JH1/JH2型初代N-WGNカスタムのリコール 2022年6月2日届け出・低圧燃料ポンプの不具合
2022年6月2日にホンダから国交省へN-WGNカスタムのリコールが届け出られた。
対象となるのはJH1型とJH2型N-WGNカスタムで、対象となるのは2018年3月から2018年12月製造の車体。
内容は燃料ポンプの不具合。燃料ポンプ内のガソリンを吸い上げる樹脂製の羽根車に不具合があり、使用し続けるこの歯車が変形しガソリンをエンジンに送れなくなる。
これにより最悪エンジンが止まる恐れがある。ただし現状はそこまで重大な事故は発生しておらず、エンジンがかからないケースが68件報告されているとのこと。
なお、今回のリコールは2代目N-BOX・N-BOXカスタムの場合はFFモデルのみだったが、N-WGN・N-WGNカスタムの方はFFも4WDも両方が対象となる。
対象車種を使用している人は交換部品の準備ができ次第、リコール対応が実施される。
なお、今回のリコールでは2代目前期型N-BOX、N-BOXカスタム、初代W-WGN、N-VAN、初代N-ONE、N-BOXスラッシュ、S660も対象車種となっており、全部で21万9623台が対象となる大型リコールとなった。
SSパッケージⅡ/ターボSSパッケージⅡのインテリア(内装)
出典:ホンダ認定中古車
インパネ。ベースモデルと同じくプッシュエンジンスタート、エアコンにはプラズマクラスターを標準装備。
出典:ホンダ認定中古車
ステアリング。ベースモデルではピアノブラック調ガーニッシュ付きの本革巻ステアリングホイール(ホワイトステッチ)。センターパネルとメータパネルはピアノブラック調となる。
ターボ仕様のターボSSパッケージではこれがパンチング&スムースレザー仕様の革巻きステアリングに変更される。
出典:ホンダ認定中古車
ターボSSパッケージではベースと同じくCVTのマニュアルモードが使える「パドルシフト」が備わる。
出典:ホンダ認定中古車
SSパッケージⅡ仕様としてホワイトステッチ入の本革巻セレクトレバーが標準装備となる。
出典:ホンダ認定中古車
この他後期型ではLEDルームランプを標準装備とした。
出典:ホンダ認定中古車
スピードメーター。ベースモデルと同じくタコメーター付きの自発光式タイプ。
さらにエコインジケーターが搭載され、エコ運転を視覚的に色で表示する。
出典:ホンダ認定中古車
フロントシートはベンチシートタイプ。G・LパッケージとG・ターボパッケージベースのSSパッケージⅡでは「クオリティインテリア」となり、プライムスムース&ジァージコンビシート(ダブルステッチ)のシートとなる。
これ以外にもクオリティインテリアではインパネガーニッシュやドアオーナメントパネルがレイヤードクリアパネル(ダークシルバーライン付き)となり、エアコンパネルがピアノブラック調などに変更される。
4WD仕様車では標準装備で運転席と助手席の両方でシートヒーターを備えるが、SSパッケージⅡ仕様として、2WD仕様(FFモデル)にもシートヒーターを標準装備とした。
出典:ホンダ認定中古車
リアシート。スライド機構付き。
出典:ホンダ認定中古車
ラゲッジルーム。
出典:ホンダ認定中古車
リアシートを倒した状態。
SSパッケージⅡ/ターボSSパッケージⅡの総評
N-WGNカスタムのSSパッケージⅡとターボSSパッケージⅡは専用ボディカラーに「サンセットオレンジ」を新採用。人気の「G・Lパッケージ」の装備に加えて「あんしんパッケージ」や2WDにもシートヒーター、ターボ仕様では「ベルリナブラック塗装+切削+クリア塗装の15インチアルミホイール」などを追加で標準装備し、より魅力を高めた特別モデルとなっていた。
中古市場ではSSパッケージⅡやターボSSパッケージⅡのタマ数がN-WGN全体に比べてかなり少なく、探しづらいが中身はほとんどG・LパッケージやG・ターボパッケージと同じなので、プラスアルファ装備がついているグレードとして認識しておくと良い。
価格はまだまだ高年式のためアルトやミライースなどのセダンタイプと比べても少し割高感がある。ただし2代目特有の個性的なエクステリアが好みでない場合は、初代・後期モデルのN-WGNカスタムという選択肢もアリかも。

持病のCVT不具合も後期型では心配がないので、積極的に選べるモデルである。
なお、同時期に標準N-WGNにも「SSパッケージⅡ」が設定され、プラスアルファの追加装備とお買得な価格設定が魅力のモデルとなっていた。


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