モコは日産のワゴン型軽自動車。スズキ・MRワゴンのOEMモデルである。本稿では3代目のMG33S型をを扱う。
出典:日産認定中古車
日産 3代目モコとは?
2011年2月に登場した3代目モコ。初代モコの時代からスズキMRワゴンのOEM供給車として販売されていたモデルである。
ただし、エンブレムや車名だけを変更するOEMとは異なり、日産オリジナルのデフォルメが与えられているのがモコの特徴で、スズキ版よりもスタイリッシュなエクステリア、上質な内装など日産らしい仕様となる。
3代目のエクステリアは、初代や2代目のイメージを引き続きつつ、シャープさと可愛らしいを兼ね備えたヘッドライト、安定感のあるバンパー、質感の高いスモークテールランプ、面積拡大で開放感を高めたフロントガラスなど2代目よりも箱型でかつスタイリッシュとした。
インテリアではピアノブラック調フィニッシャーの採用で、上質感を演出。メーターには自発光式メーターを採用し、シート表皮は千鳥格子柄の採用でモダンな雰囲気も持たせた。
パッケージングは先代よりもロングホイールベースとし、室内長を最大180mm拡大。頭上空間や後席ニールームも大幅拡大することでより快適でゆったりとした室内空間とした。
エンジンは新世代のR06A型エンジンを採用。自然吸気エンジンとターボエンジンの2種類を設定し、これに副変速機を内蔵したCVTの採用でパワフルな加速と静粛性、低燃費を両立させた。
さらに高張力鋼板の採用で先代比30kgの軽量化も実現。低燃費や加速性能に貢献している。また、エコドライブをサポートするため、スピードメーター内に「ECOインジター」を搭載するなど、環境性能にも対応させた。
3代目モコ(MG33S)と3代目MRワゴン(MF33S)との違い
3代目モコと3代目MRワゴンの違いは車名エンブレムやメーカーエンブレム以外に内外装のデザインにある。
エクステリアはではモコ専用ヘッドライト、専用グリル、専用バンパーを採用しスズキとは完全差別化。先代同様に日産仕様の方がよりスタイリッシュかつ上品さや可愛らしさを表現したデザインとなっている。
また、インテリアでも日産専用のシート表皮を採用。スズキのブラウン単色シートに対し、明るいブラウンの千鳥格子柄シートを採用することでモダンな雰囲気を与え、こちらも差別化がなされている。
グレード構成も同じで最廉価グレード(S)、ミドルグレード(X)、ターボグレード(G)の3種類を設定。ただしモコでは全グレードでオーディオレスが標準仕様に対し、スズキのMRワゴンでは全車標準装備などの違いがあった。
さらにFFのターボ仕様にセットオプションだったSRSサイドエアバッグ、SRSカーテンエアバッグ、ESPの3点セットも非設定となっていた。
なお、3代目MRワゴンでは特別仕様車が設定されたが日産のモコでは直接OEMされることはなかった。
が、そのかわりオーテックジャパンによる架装の特別仕様車が2代目同様設定され、こちらでも差別化がなされていた。
3代目モコのグレード一覧 S、S FOUR、X、X FOUR、X アイドリングストップ、G、G FOUR、エアロスタイル、ドルチェの違いなど
3代目モコのグレード構成は下から順番に「S」、「S FOUR」、「X」、「X FOUR」、「G」、「G FOUR」の6種類。
前期モデルにはこれに加えてエコ仕様の「S アイドリングストップ」、「X アイドリングストップ」が設定されていた。
また標準モデル以外にオーテックジャパンによる特別仕様車「エアロスタイル」が設定されていた。
後期モデルで追加のカスタム仕様「モコドルチェ」についてはこちらから。
Sグレード、S FOURグレード
Sグレードは3代目もモコ廉価グレード。
マニュアル式エアコンに、ステアリングチルト機構とプッシュ式エンジンスタートボタンが非装備で快適装備が簡略化される。
S FOURグレードはSグレードの4WD仕様版で、寒冷地仕様(運転席シートヒーターなど)が標準装備となる。
S アイドリングストップ
2012年5月追加の新グレード。低燃費仕様「MRワゴン エコ-L」のOEMモデル。
7代目アルトの派生モデルで低燃費仕様の「アルトエコ」の技術を採用したエコモデルで、R06A型エンジンと副変速機付きCVTに摩擦抵抗を低減する改良を与え、アイドリングストップを既存の搭載グレードからパワーアップし時速9km以下で作動するように変更。
また、転がり抵抗を低減したエコタイヤ&専用エアロ形状ホイールキャップの採用と足回りの改良により走行抵抗を低減。これによりデビュー当初、自然吸気エンジンのFFモデルで23.0km/L(JC08モード)だった燃費が27.2km/L(JC08モード)までアップしている。
「S アイドリングストップ」グレードはエントリー仕様で、上級グレードと比較して装備を一部簡略化し価格を抑えたグレード。
Sアイドリングストップではエアコンがマニュアル式エアコン、チルトステアリングや運転席シートリフター、LEDサイドターンランプ付きドアミラーが非装備。
なお、Sグレードには非装備だったキーフリーシステムやプッシュエンジンスタートはXアイドリングストップグレードで標準装備となり、一部装備が拡充される。2WDモデルのみで、4WDは非設定。
2013年7月のマイナーチェンジでSグレードに統合され、廃止された。
X、X FOURグレード
Xグレードは3代目モコのミドルグレード。
LEDターンランプ付きドアミラーやフルオートエアコン、ステアリングチルト機構、プッシュ式エンジンスタートボタンが標準装備となり、快適装備が豪華な仕様。
X FOURグレードはXグレードの4WD仕様版。寒冷地仕様(運転席シートヒーターなど)が標準装備となる。
X アイドリングストップ
2011年6月追加の新グレード。
新設定時はアイドリングストップがつく程度のプチエコグレードだったが、2012年5月の一部改良で「S アイドリングストップ」と同じくMRワゴンエコの低燃費技術が適用され、「MRワゴン エコ-X」のOEMモデル相当となった。
2012年5月以降の改良内容はS アイドリングストップと同じだが、こちらは上級グレードの位置づけで快適装備などが豪華になる。
Xアイドリングストップでは
- フルオートエアコン
- チルトステアリング
- 運転席シートリフター
- LEDサイドターンランプ付きドアミラー
が標準装備。キーフリーシステムとプッシュエンジンスタートはSアイドリングストップと共通で標準装備する。
なお上級グレードでもアルミホイールは非装備で、専用の空力特性の高いホイールキャップがつく。2WDモデルのみで、4WDは非設定。
2013年7月のマイナーチェンジでXグレードに統合され、廃止された。
G、G FOURグレード
Gグレードは3代目モコの最上級グレード。
3代目モコ唯一のターボエンジンを搭載し、アルミホイールで見た目が良くなる。
このほか、Xグレードと同じLEDターンランプ付きドアミラーやフルオートエアコンやチルトステアリング機構、プッシュ式エンジンスタートに加え、スピーカーが標準で6スピーカー仕様となるが、オーディオレス仕様となる。
G FOURはGグレードをベースとした4WD仕様版。寒冷地仕様(運転席シートヒーターなど)が標準装備となる。
特別仕様車 エアロスタイル(オーテックジャパン仕様)
日産の架装メーカー、オーテックジャパンによる特別仕様車。
外装にエアロ感漂う専用パーツと、専用ボディカラーによりノーマルモデルよりもスタイリッシュに仕立てたモコ。
エアロスタイルのエクステリアは
- フロントプロテクター
- サイドシルプロテクター
- ホワイトリングイルミネーション付き専用フォグランプ
- LED発光の専用キッキングプレート
- シルバー塗装の専用フロントグリル
- リアアンダープロテクター
- ルーフスポイラー
ボディカラーではエアロスタイル専用の「スノーパープルホワイト」を含めた全4色を設定。
MRワゴンWitのようなカスタムモデルとしつつもオーテックジャパンによる専用デザインで差別化がなされた特別仕様である。
なお、ドルチェとエアロスタイルでも明確に異なり、エアロスタイルはモコをベースにエアロパーツでスタイリッシュに仕立てたカスタムモデル。
ドルチェは専用ヘッドライトや専用グリルなどでフロントデザインを差別化。内装も専用品としより上級感を強めたカスタムモデルとなる。
3代目モコの一部改良や前期・後期マイナーチェンジについて
3代目モコの前期・後期の違い
3代目モコは2代目とは異なり内外装の大幅変更がなく、デビューからモデル終了までほぼ同じ内外装だった。そのため前期や後期を外観から判断するのは難しい。
ただし、2013年7月の3型改良相当では標準モデルにターボエンジンが廃止され、モコドルチェ(MRワゴンWitのOEM)を新設定するなどグレード体系を大きく見直した、後期モデルといえるような大幅変更があった。
本稿ではこの3型以降を後期モデル、それ以前を前期モデルとする。
なお、前期と後期の特徴は
- アイドリングストップが付くグレード、標準モコのG(ターボ)グレードであれば前期モデル
- Xグレードのタイヤが13インチ+ホイールキャップであれば前期モデル、14インチアルミホイールだと後期モデル
など、仕様やグレードで違いが判断できる。
2011年6月・X アイドリングストップの追加
2011年6月にはアイドリングストップ機能を搭載した「X アイドリングストップ」を追加。
2012年5月・2型改良
2012年5月の2型改良ではFFモデルでエンジン制御の見直しやCVTの改良で燃費性能を改善。
「X アイドリングストップ」はMRワゴンエコと同じ低燃費技術が適用され、燃費性能が大幅にアップ。
全グレードで後席にISOFIX対応のチャイルドシート固定用アンカーを採用。およびリアの車名エンブレムの位置がリアゲート中央横のSマークと同じ水平位置に移動した。
2013年7月・3型改良(後期モデル)
2013年7月の3型改良では「S アイドリングストップ」と「X アイドリングストップ」を「S」と「X」グレードへ統合。
アイドリングストップの停止開始時間を時速13秒以下にはやめ、かつアイドリングストップ時間を延長。
加えてエネチャージにエコクールを採用、エンジンのVVT制御やCVT制御の最適化などでさらなる燃費アップを果たした。
その一方でターボ仕様のTグレードが廃止となり、ターボモデルはこのあとデビューしたカスタム仕様の「モコドルチェ(MRワゴン Wit)」へ移行した。
2013年10月・モコドルチェ追加
質感を高めカスタム仕様とした「モコドルチェ」を追加。ターボ仕様はこちらに移行となった。
2014年9月・仕様変更
2014年9月の仕様変更ではボディカラーの入れ替えを以下のように実施。
- 「アロマティックアクアメタリック」を廃止→「フォレストアクアメタリック」を追加
- 「ペールブルー」を廃止→「フィズブルーパールメタリック」を追加
- 「ミルクティーベージュメタリック」を廃止→「コメットグリーンパールメタリック」を追加
3代目モコのエクステリア(外装)
フロントデザイン。3代目モコは先代までの可愛らしいイメージを引き続きつつ、ヘッドライトを大型化。よりスタイリッシュなヘッドライトとした。また、グリルもMRワゴンとは異なり、2代目と同じ格子形状を採用。バンパーには曲線や厚みをもたせスズキよりも洗練されたデザインとした。
※3代目MRワゴンのフロント
スズキは当時、ムーミンに出てくるリトルミイをイメージキャラとして宣伝を行っていたが、OEMモデルのモコとは全く異なる顔つきとなっているのが日産のこだわりや気合を感じるモデルである。
出典:日産認定中古車
サイド。3代目モコはボディ形状がさらに変更された。初代は卵型。2代目は曲線のあるワゴン型だったが、3代目ではボンネットの出っ張りを強調した箱型となった。これにより室内空間が広くなり、かつ運転席からのボンネットの見切りも良くなり運転しやすくなった。
なお、Sグレード以外ではサイドミラーがLEDターンランプ付きの電動格納式リモコンドアミラーとなる。
足元は自然吸気エンジンが13インチフルホイールキャップ+スチールホイール。サイズは 145/80R13。デザインは日産専用となる。
ターボは14インチアルミホイール。サイズは155/65R14。こちらはスズキ版と同じデザイン。
出典:日産認定中古車
リア。このあたりはMRワゴンと共通でエンブレムや日産マークへ変更となる程度。ただし車名エンブレムの位置はスズキがバックドア右下に対し、モコでは左真ん中となる。
3代目モコではテールランプにもこだわり、スモーク気味のデザインとすることで、上品さを演出している。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンはR06A自然吸気エンジンとターボエンジンの2種類を設定。
自然吸気エンジンの最高出力は54ps(40kW)/6500rpm、最大トルクは6.4kg・m(63N・m)/4000rpm。
ターボエンジンは最高出力は64ps(47kW)/6000rpm、最大トルクは9.7kg・m(95N・m)/3000rpm。ターボエンジンは先代ではMターボという60馬力仕様だったが、3代目では64馬力ターボとなる。
トランスミッションはCVTのみで駆動方式はFFまたは4WD。変速機が先代の4ATからCVTに置換され、ボディも軽量化されたことで自然吸気エンジンでも加速や燃費がよくなり、かつターボ仕様ではよりパワフルな走行性能となっている。
安全装備としてはABS+EBD(電子制御制動力配分システム)+ブレーキアシスト、運転席・助手席SRSエアバッグシステムを標準装備。ターボ仕様のGとG FOURにはタイヤ空気圧警告灯も標準装備とした。なお自動ブレーキ類はこの世代には設定がなく、すべて非装備となる。
3代目モコのインテリア(内装)
インパネ。3代目はセンター部分のホワイトが特徴的で直線を意識したスッキリとより上品な感じになった。ステアリングは全グレードでウレタンステアリングホイール。
エアコンはSグレードがマニュアルエアコン。XとGではオートエアコンとなる。シフトノブはインパネシフトを採用。
スピードメーター。シンプルで見やすい自発光式。なおターボモデルでもタコメーターは付かない。
フロントシートはベンチシートタイプ。スズキ版とは異なる日産専用シート表皮で、千鳥格子のデザインを取り入れたモダンなシートとなる。
もちろんフロアマットもモコ仕様を設定する。
リアシート。足元は広い。スライド機能を備えるので足元とラゲッジルームの広さを調節できる。
ラゲッジルーム。
リアシートを倒した状態。
ちなみに3代目モコはシートアレンジも優秀で、このようにフロントからリアシートにかけてフルフラットにでき、一応車中泊も可能となっている。
3代目モコの評価
3代目モコの総評
モコは洗練されたフロントデザイン、専用インテリアなどスズキMRワゴンのOEM車であるがそのデザインの違いから個性のある軽自動車となっている。
本家MRワゴンは、元々主婦層をターゲットにした車だが、パレット(現行モデルではスペーシア)の登場により主婦層から若者へとターゲットを変更している。
そのためフロントデザインがかっこ可愛い顔面になっているが、こちらのモコではそれを感じない。ターゲットは変更せず、旧モデルの印象を受け継ぎ女性向けといった感じだろうか。
モコは本家MRワゴン同様、ワゴンRとはちょっと違ったかわいい軽自動車を探している人にぴったりな1台である。
モコの生産終了(販売終了)とその理由…後継モデルなど
その後モコは日産&三菱の合弁会社NMKVより新型・初代デイズが発売されたことによりその役割を終了。スズキからのOEMモデルを終了し自社生産にシフトさせたことで後継の4代目モデルが登場すること無く生産・販売終了となった。
OEM元のMRワゴンもモデル終盤頃には、軽自動車の人気がトールワゴンからスライドドア付きスーパーハイトワゴンに人気がシフトしたこともあり、初代や2代目のほど販売台数が伸びなかった。
中古車は価格がかなり安価となり、高年式でも買いやすい
中古市場では初期型が年数経過もあって安価な価格帯になってきている。特に人気がスライドドア付きのスーパーハイトワゴンにシフトしていることもあり、トールワゴンはかつてほどの人気が薄くなっている。
前期型にはターボ仕様の設定もあり、比較的新しいモデルなので、より広い室内空間よりも日産らしい可愛らしさとスタイリッシュな内外装が気に入った人には魅力的なモデルといえよう。
なお、モデル後半ではMRワゴンにWitが復活したのと同時にモコにもドルチェとしてOEM供給された。よりスタイリッシュかつエレガントなモコとなっているため、モコよりもワンランク上の上級グレードが欲しい場合は、モコドルチェもチェックしてみてほしい。
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