ekカスタムは三菱のワゴン型軽自動車。3代目ekワゴンのカスタムモデルでeKスポーツの後継モデルある。本稿ではデビュー当初~2015年9月までを前期型と定義し、これを扱う。
概要
2013年6月にフルモデルチェンジし、日産との共同開発で生まれた3代目ekワゴン。
3代目最大の特徴は、それまでのボディスタイルをアルトやミライースのような全高の低いモデルから、ムーヴやワゴンRと同じトールワゴンスタイルへと変更したこと。また、日産との共同開発により三菱版と日産版とで細かいフロントデザインの変更が加えられる。
さらにアイドリングストップ機構や最新のエコサポート技術の採用で、新生代の軽自動車としている。
その3代目eKワゴンのカスタムモデルとなる「ekカスタム」はそれまであったekスポーツの後継モデルとして登場。3代目からは名前を変え、「ekカスタム」となった。
エクステリアはフロント全体を覆うような大型クロムメッキグリルとディスチャージヘッドランプを採用した専用ヘッドライトにより精悍さやスタイリッシュさを表現。カスタム専用の大型バンパー、サイドエアダム、リアスポイラーによりスポーティな雰囲気ともした。
インテリアでは上質なピアノブラック調センターパネルにタッチパネル式のオートエアコンの採用や、ホールド性とソファーのような座り心地を両立した上質なシートで上級感や機能性にくわえブラックカラーを基調としカスタムモデルらしい質感を追求。
アンダートレイや上下グローブボックス、オープントレイ、シートアンダートレイなど収納スペースも豊富に設定した。
パッケージングは先代比で全高が70mmアップ、ホイールベースも90mm延長したことでゆとりある室内空間を実現。後部座席においては前席とのスペースを+107mm確保したことで居住性や快適性が格段にアップした。
快適装備としては紫外線カット率を実現した99%UVカットガラスをフロントガラスに標準装備。フロントウインドシールドには約100%*のUVカット機能がある合わせガラス、リヤドア/クォーター/テールゲートにも約94%*のUVカット機能のあるプライバシーガラス(『eKワゴン』の「E」を除く)を採用で360度で快適な室内環境とした。
3代目では運転のしやすさも向上。全高が高くなり着座位置も上昇。かつガラスエリアも拡大したことで広くみやすい前方視界を実現した。また、左右のフロントピラーを細くすることで良好な視界を実現した。
最小回転半径は4.4mで、ステアリングには電動パワーステアリングを採用。リヤビューモニター付ルームミラーはカスタムのGとTグレードに標準装備とした。
安全装備としては運転席&助手席エアバッグ、ブレーキアシスト付きABSを全グレードに標準装備とし、「アクティブスタビリティコントロール」をeKカスタムのTグレードにオプション設定とした。
3代目のボディは三菱自動車独自の衝突安全強化ボディ「RISE」を採用し、客室保全環状構造や、高張力鋼板を適材適所に使用して優れた衝突安全性を確保。エマージェンシーストップシグナルも標準装備とした。
エンジンは新世代MIVECエンジンを採用。トランスミッションも全グレードに副変速機内蔵のCVT(INVECS-III)を採用し、この代からMTが完全に非設定となった。
便利機能としてはエンジンスイッチ+キーレスオペレーションシステムをグレード別に装備。三菱自動車独自の電子制御システム「ETACS」により「ヘッドライトオートカット」、「コンフォートフラッシャー」、「フロント可変間欠ワイパー(車速感応式)」など軽自動車でありながら普通車のような便利機能を搭載。
また、リアシートは室内側からもスライド操作を可能とした5:5可倒式を採用し、ワンタッチでフルフラットなラゲッジスペースを実現した。
eKカスタム(B11W)と標準eKワゴンとの違い
eKカスタムは上述のとおり、標準のeKワゴンに対しスポーティな内外装を与えたカスタムモデルである。先代のeKスポーツ同様に外装では専用フロントメッキグリル、専用ディスチャージヘッドライト、専用バンパーにサイドアンダースポイラー、リアスポイラーでフルエアロ化。
内装でも標準とは異なるブラック内装基調とし、スタイリッシュとしている。2代目までは「eKスポーツ」というモデルであったが、3代目からは「eKカスタム」へ名称変更している。内容的にもスポーツというよりはカスタムモデルに近い。
eKカスタム(B11W)と日産版・デイズハイウェイスター(B21W)との違い
なお、日産版では兄弟モデルの「デイズハイウェイスター」として販売されている。
デイズハイウェイスターはデイズのカスタムモデルで、同じく専用の内外装が与えられるが三菱のeKカスタムとはデザインが異なるメッキグリル、フロントバンパー、アルミホイールのほか、グレード体系などに違いがある。
エクステリア(外装)
フロントデザイン。ノーマルは受け入れられやすいオーソドックスなデザインだったが、こちらは水平基調と、斜めのエッジを効かせたグリル&ヘッドラインのデザインで一目見てスポーティさが演出されている。
先代ではスクエア状のヘッドライト、それに続くグリルが特徴的だったに対し、大幅なイメージチェンジだ。ただライバルであるワゴンRのカスタムモデル、スティングレーにどこか似ている感じもする。
横からのシルエット。最近の傾向でワゴン型ではボンネット周りの角を立たせるデザインが多い。カスタムでは廉価グレードのMを除きLEDターンランプ付ドアミラーを装着。
足元ではサイドアンダースポイラーに標準で14インチアルミホイールを装着。タイヤサイズは155/65R14。
上級グレードでは写真のようなワンランク上の15インチアルミホイールを装着する。こちらのタイヤサイズは165/55R15。
リア。ぱっと見ムーブっぽいが、L字型のエッジが効いている。なお、カスタムモデルは専用のクリアテールとなる。
エンジン・機能
エンジンは3B20型直列3気筒DOHC自然吸気エンジンと同インタークーラー付きターボエンジンの2種類。
自然吸気エンジンの最高出力は49ps(36kW)/6500rpm。
グレードにより最大トルクが異なり、Gグレード4WD仕様では最大トルクは6.0kg・m(59N・m)/5000rpm。
MとGグレードの2WDでは最大トルクが5.7kg・m(56N・m)/5500rpm。
ターボ仕様は最高出力64ps(47kW)/6000rpm、最大トルク10.0kg・m(98N・m)/3000rpm。トランスミッションはINVECS-III CVT(副変速機付)のみで駆動方式はFFまたは4WDとなる。
スズキのエネチャージに似たエネルギー回生システムの「アシストバッテリー」を全モデルに(※4WD仕様車は2015年10月改良以降で)採用しわずにかに燃費を向上。
トランスミッションはCVTで駆動方式はFFか4WD。なお、4WDはビスカスカップリング式のオンデマンドタイプである。
デビュー当初はスズキやダイハツに遅れを取り自動ブレーキ等の設定がなかったがデビューから1年半後の2014年12月マイナーチェンジで低車速域衝突被害軽減ブレーキシステム(FCM-City)と誤発進抑制機能の2つの先進予防安全技術を採用した「e-アシスト」を全グレードで設定。
その後2015年10月マイナーチェンジで後期型に移行した際は上位の「セーフティパッケージ」のみの装備となった(廉価グレードのMとミドルグレードのGでは非搭載)。さらにe-アシスト搭載車ではアクティブスタビリティコントロール(ASC)も標準装備した。
こちらはネット上にあったekカスタムの加速動画。ホンダのN-ONEといい、かなり速く1300CCクラスと同等がそれ以上だろう。NAモデルはトルクが細く不満点があったがこのターボモデルなら問題ない。
インテリア(内装)
インパネ。カスタムではブラックを貴重とするシックでスポーティーな雰囲気。ピアノブラック調のセンターパネルで上級感も演出する。
ノーマル同様にエアコンパネルはタッチパネル式(※廉価グレードを除く)。
ステアリングはターボ仕様のTグレードで本革巻きステアリングホイールとなる。
スピードメーターはタコメーター付きの2眼式タイプ。日産のデイズハイウェイスターと共通タイプで左寄りの中央にはマルチインフォメーションディスプレイを備える。
フロントシートはベンチシートタイプ。長時間でも疲れづらいサイドのホールド感が強めな形状のシートで、表皮もカスタム専用の2パターンシート表皮で質感も高い。座り心地もソファのような座り心地となっている。
リアシート。スライド機構を備え足元の広さを調節できる。
ラゲッジルーム。
リアシートを倒した状態。
まとめ
ekスポーツは、3代目のフルモデルチェンジで先代よりも見た目がガラッと変わったモデルである。
その一方で先代からの速さは継承され、室内空間も広くなりワンランクレベルアップした印象を受ける。ライバルはワゴンR・スティングレー、ムーブカスタムあたり。全体的なシルエットは3台とも似ているため、あとは細かな違いで選ぶことになる。
中古市場では年数経過や次モデルのeKクロスに世代交代しているためこの前期型は年式や走行距離の割には比較的安価で買いやすい。
絶対的な燃費が同年代のライバルに比べて劣る点や、自然吸気エンジンでは回さないとかなり遅いのでクセがあるがターボ仕様であればデキは良いので、eKカスタムを買う場合はターボ仕様がオススメ。
なお、同時期に日産からはオッティのスポーツモデルの後継としてデイズハイウェイスターがデビュー。
日産用のフロントデザインが与えられるなどオッティ時代と同様に差別化がなされているがそこまで明確な違いが無い。この点は後期型のeKカスタムで「ダイナミックシールド」デザインを取り入れることで大きく改善した。
(予算があるのなら)差別化された個性の強いeKカスタムが欲しい人は後期型がオススメである。
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