eKスペースは三菱のトールワゴン型軽乗用車。「eKスペースカスタム」はそのカスタムモデルである。本稿では初代・B11A型の2014年2月~2016年11月までを前期型とし、これを扱う。
初代・前期型eKスペースカスタムとは?特徴など
2014年2月に登場した三菱・eKスペース。日産と三菱の合弁会社、「MNKV」による第3弾で、名前からも想像かつくように室内を目一杯広くとったモアスペース系のモデルとなった。
三菱自動車がはじめて世に送り出したスライドドア付きスーパーハイトワゴンの軽自動車で、ライバルはスズキでいえばスペーシア、ダイハツはタント、ホンダはN-BOXに相当モデルだ。
三菱では3代目eKワゴンに続くeKシリーズのモアスペース系として。日産ではそれまでスズキからOEM供給を受けていた「ルークス」の後継モデルとして誕生した。
かつて三菱には元祖スペース系の先駆け的なモデル、「トッポBJ」あるいは「トッポ」などがあったが2者はボンネットより後ろのみを変更したのに対し、eKスペースではボディを専用設計した完全新モデルとなっている。
eKスペースは完全新設計により室内高を1400mm、室内長2235mmの広さを実現。これは2017年3月現在でスペーシア、タント、N-BOXのいずれよりも広くまさにモアスペース軽といったところ。
リアシートのスライト長のクラストップレベルとなる260mmのロングスライドとし、軽乗用車としては初となる後部座席専用のリヤサーキュレーターとリアガラスのロールサンシェードを標準装備とすることで後部座席での快適性を向上させている。
便利機能としてはリヤビューモニター付ルームミラー(自動防眩機能付)を全グレードで標準装備。バック駐車場などでリアの安全確認をサポートした。
さらにオプション設定で周囲を確認できるマルチアラウンドモニター(バードアイビュー機能付)もカスタムモデルにオプション設定とした。
安全装備としては横すべり防止装置+トラクションコントロール機能のアクティブスタビリティコントロール(ASC)」をEグレードを除いて標準装備。
また、ABSとEDB(電子制御制動力配分装置)、エマージェンシーストップシグナル、エアバッグも運転席と助手席以外にサイドエアバッグを全グレードで標準装備。
横滑り防止装置+トラクションコントロールのアクティブスタビリティコントロール(ASC)、エマージェンシーストップシグナルも全グレードで標準装備とした。
メカニズムでは3代目eKワゴンで先行していた新開発の3B20型エンジンを採用。
エコ技術には回生発電の「アシストバッテリー」や自動ブレーキ「e-アシスト」をグレード別に搭載。アイドリングストップは全グレードで標準装備とした。
eKスペースでは先行するeKワゴンやライバル他社と同じく、標準モデルの「eKスペース」と、カスタムモデル「eKスペースカスタム」の2本立て。本稿ではこのうちのカスタムモデルを扱う。
初代・前期型eKスペースとeKスペース カスタムとの違い
そのカスタムモデルである「eKスペースカスタム」は、標準モデルに対し外装では縦基調の専用メッキグリルに専用ヘッドライトでカスタムし精悍さをアップさせたモデル。
標準モデルに対し、スズキならスペーシアカスタム。ダイハツはタントカスタム、ホンダはN-BOXカスタムに相当する。
外装では専用大型フロントバンパーにサイドエアダム、大型リアスポイラー、クリアーテールランプなどでダイナミック感やスタイリッシュ感を演出。
内装もブラックインテリアにシルバーの加飾でノーマルモデルよりもスポーティーかつプレミアムな雰囲気を演出したモデルである。
機能装備も両者では若干異なり日産ではマルチアラウンドモニターと自動防眩式ルームミラーが「Sグレード」以外で全グレード標準装備となるのに対し、eKスペースではマルチアラウンドモニターがカスタムモデルのみにオプション設定。UVカットガラスなどの装備も微妙に異なる。
また、前期ではノーマルにはないターボエンジン搭載グレードが設定され、装備も上級装備が与えられるなどカスタムの名に相応しい内外装が与えれている。
日産・デイズルークス ハイウェイスターと三菱・eKスペース カスタムとの違い
日産版のデイズルークス ハイウェイスターと三菱版のeKスペースとではフロントグリル、フロントバンパーがそれぞれ専用品となり、フロントデザイン(顔つき)が異なる。
さらにデイズルークスにはeKカスタムに相当するカスタムモデルの「デイズルークス ハイウェイスター」のほか、オーテックジャパンによる架装車「「デイズルークス ライダー」が設定されるなどモデルバリエーションも豊富となっている。
初代・前期型eKスペースカスタムのグレード カスタムG、カスタムT、e-アシスト、スタイルエディションの違いなど
初代・前期eKスペースカスタムのグレード展開は自然吸気エンジンの「カスタムG」とターボ搭載「カスタムT」の2種類。
モデル中盤では自動ブレーキの「低車速域衝突被害軽減ブレーキシステム(FCM‐City)」と「誤発進抑制機能」を標準装備した「e-アシスト」グレードをそれぞれに追加している。
特別仕様車は「カスタムT スタイルエディション」が設定されていた。
カスタムG
初代・前期eKスペースカスタムの自然吸気エンジン・上級グレード。標準eKスペースにはEグレードの設定があったが、カスタムでは上級Gグレードのみ。
エクステリアではカスタム専用メッキグリル、ディスチャージヘッドランプ、フォグランプ、LEDターンランプ付きドアミラー、アルミホイール、クリアーテールランプ、リアスポイラーを標準装備。カスタムらしいスタイリッシュな外観が特徴。
インテリアでは本革巻きステアリング、2眼式スピードメーター、タッチパネル採用のフルオートエアコン、インパネピアノブラック&シルバー加飾、カスタム専用ブラックシート表皮が与えられる。
快適装備は助手席左側にワンタッチ電動スライドドア、ロールサンシェード、リアシーリングファン、キーフリーシステム&プッシュエンジンスタート、マルチアラウンドモニターはオプション設定する。
カスタムG e-アシスト
カスタムGに自動ブレーキを搭載したグレード。
「低車速域衝突被害軽減ブレーキシステム[FCM-City]」と「誤発進抑制機能(前進のみ)」が加わる。
カスタムT
初代・前期eKスペースカスタムの上級ターボ仕様。
ターボエンジンを搭載し、専用切削加工15インチアルミホイールで走りと外観がグレードアップする。
このほか「カスタムT」では両側ワンタッチ電動スライドドアを標準装備し、機能性も向上。
なお、カスタムTにはアシストバッテリー(回生充電)機能は非搭載。
カスタムT e-アシスト
カスタムTに自動ブレーキを標準装備したグレード。
「低車速域衝突被害軽減ブレーキシステム[FCM-City]」と「誤発進抑制機能(前進のみ)」が加わる。
特別仕様車 カスタムT スタイルエディション
2015年12月設定の特別仕様車。予防安全技術の「e-Assist」やIR(赤外線)カットガラスなどの機能装備と専用の2トーンボディカラーを採用した特別モデル。
ターボグレードのTグレードをベースに外装ではフロントドアとフロントクォーターガラスにIR(赤外線)カットガラスを標準装備。
新ボディカラーとして2トーンボディカラーの「ライトニングブルーマイカ/ブラックマイカ」を新設定。これ以外に2トーンカラーを3種類。モノトーンカラーを2種類の計5種類を設定。
2トーンカラー選択時にはダークメッキフロントグリル、ダークメッキヘッドライトアクセント、ダークメッキフォグランプベゼル、ダークメッキテールゲートガーニッシュをセットにした「アーバントーンスタイル」を標準採用。
内装ではメッキモール&ピアノブラック加飾の本革巻ステアリングホイール、ドアアームレストにメッキ調ラインモールを与え洗練された室内に。
機能装備として予防安全技術の「e-Assist」(低車速域衝突被害軽減ブレーキシステム[FCM-City]、及び誤発進抑制機能)を標準装備。
機能装備としてはマルチアラウンドビューモニターと2WD仕様車に寒冷地仕様を標準装備としベースモデルよりもエクステリアや機能性装備、ワンポイントアクセントのインテリアなどで魅力を高めた特別仕様車となっていた。
エクステリア
フロントデザイン。カスタムでは縦基調の大型メッキグリルとカスタム用ヘッドライト、エアロバンパーを装着。グリルのデザインは同社のデリカD:5を彷彿とさせるもので、三菱であることを強調させている。
フォグランプとプロジェクター式のディスチャージヘッドランプを全グレードで標準装備する。ポジションランプもL字型のLEDとなり非常にファッショナブルなデザインとなっている。
サイドから。カスタムではサイドシルスポイラーにインテリジェントキーを標準装備する。
日産と同じくサイドビューのデザインはフロントからリアにかけて抜けるようなシャープなラインとドア下部からリアバンパーに流れるようなキャラクターラインでボディに厚みとサイドビューに勢いを与えている。
快適装備としてフロントウィンドウ、フロントドア、フロントクォーターガラスにUVカットガラスが加わる。
スライドドアは両側標準装備。カスタムではパワースライドドアはGとTは標準で助手席後方。Tでは標準で両側パワースライドドア。
Gではオプション設定で両側がパワースライドドアとなる。イージークローザー両側に標準装備。ドアロックはインテリジェントキーとなる。
自然吸気エンジンでは14インチアルミホイール。
ターボグレードでは15インチアルミホイール。
リア。オーソドックスにコンビランプを左右中央の両脇に配置。カスタムではルーフスポイラーとカスタム用リアバンパー、メッキリアゲートガーニッシュが備わる。
コンビランプはクリアータイプ。ブレーキランプはLED仕様。
エンジン・機能装備・安全装備など
エンジンは3B20型直列3気筒可変バルブタイミング機構(MIVEC)付きDOHC自然吸気エンジンと同インタークーラー付きターボエンジンの2種類。
自然吸気エンジン最高出力は49ps(36kW)/6500rpm、最大トルクは6.0kg・m(59N・m)/5000rpm。
ターボ仕様では最高出力64ps(47kW)/6000rpm、最大トルクは10.0kg・m(98N・m)/3000rpm。
トランスミッションはCVTのみで駆動方式はFFまたは4WD。安全装備としてABS、EDB、ヒルスタートアシスト、エマージェンシーストップシグナルを全グレードで標準装備。
横すべり防止装置+トラクションコントロール機能の「アクティブスタビリティコントロール(ASC)」も全グレードで標準装備。
自動ブレーキはデビュー当初設定が無かったが、2014年12月マイナーチェンジに追加された「e-アシスト」グレードにて低車速域衝突被害軽減ブレーキシステム[FCM-City]と誤発進抑制機能(前進のみ)を初搭載。
マルチアラウンドモニターとルームミラー(自動防眩機能付)はカスタムの全グレードに標準装備(※標準モデルではオプション設定)。
燃費向上技術としてはスズキのエネチャージと同じ仕組みの回生発電(アシストバッテリー)に加え、2015年4月マイナーチェンジではターボグレードも含めてアイドリングストップと(13km/h以下で作動)コーストストップ機能も全グレードで標準装備する。
これによりターボグレードでは燃費がアップし、FFモデルでは前期型の20.6km/l(JC08モード)から22.2km/l(JC08モード)にアップした。
インテリア
インパネ。カスタムではブラックを基調としメッキ加飾とセンタークラスターにはピアノブラック調をプラスすることでスポーツかつ上級なイメージとした。
ステアリングは本革巻ステアリングホイール。
アラウンドビューモニターはオプション設定。
スピードメーターはタコメーター付き。左側がタコメーター、右側がスピードメーターの2眼式で、タコメーター側にはマルチインフォメーションディスプレイが組み合わされる。
エアコンはフルオート式で、3代目ekワゴンにも搭載されていたタッチパネル式の操作パネルとなる。
フロントシートはベンチシートタイプ。カスタムではブラック色の高級感のあるスエード調シート表皮にガンメタリックのアクセントを加えて素材を横方向で組み合わせることで上質感もアップさせている。
ドアトリムクロスも同様にガンメタリックのアクセント入のクロスとなる。このほかカスタムではドアハンドルがメッキタイプとなる。
リアシート。スライド幅はクラストップレベルの260mm。
リアの天井には軽自動車初となる「リヤシーリングファン」を搭載。
軽自動車でありながら後部座席にも前と同じエアコンの吹き出し口を天井に設けたことで、夏場の暑い時でも後部座席を快適に過ごせる。特に小さい子供が居る場合その安心感は高いものだ。
リアにはロールサンシェードも標準装備。
ラゲッジルーム。
リアシートを倒した状態。
まとめ
初代・前期eKスペースカスタムの総評
ekスペース・カスタムの前期型はノーマルのekスペースよりも精悍さと存在感をアップさせた外観が特徴のモデルである。
ライバルはタントカスタム、スペーシアカスタム、N BOXカスタムに当たるがどれも車の形そのものはよく似ていて、あとはメーカーの好き好きやデザインになるのかもしれない。
B11A型eKスペースカスタムのアドバンテージとしてはリアのシーリングファンや広い室内空間、260mmのリアシートスライド幅など利便性の高い部分だろうか。
なお、三菱ではeKシリーズの燃費不正問題を受けてデビュー当初はFFで26.2km/L(JC08モード)だった燃費を22.0km/Lへ訂正。もともと実燃費が悪いとのレビューや報告があり、「e-燃費」などの実燃費報告でもリッター9~16km程度となっている。購入の際はちょっと注意が必要だ。
初代・前期eKスペースカスタムは以前よりも安価な中古価格に 予算があるなら2代目がオススメ
中古市場では兄弟モデルのデイズルークス ハイウェイスターよりも売れなかったため、タマ数は日産版に比べると少なめ。
以前は年式も新しく中古価格が高かったが、近年では年数経過により同年代のN-BOXカスタムなどよりも買いやすい価格帯となった。
もし走行距離や価格的に手頃な個体があれば選んでもいいが、2代目以降ではマイルドハイブリッドや自動ブレーキ、新エンジンに使い勝手のいい室内など改善点がかなり多く価格に対するメリットも十分高くなる。
予算に余裕がある場合はデキの良い2代目eKスペースまたはeKクロス スペースをオススメする。
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